人員を取り戻せるか? 企業がAIを見直す理由

2026/06/29
更新: 2026/06/29

人工知能(AI)革命は、一部で懸念されていたほど急速に人間の雇用を奪ってはいないかもしれない。計算コストの上昇、運用上のトラブル、そして期待外れの結果を背景に、方針を転換し、人員を呼び戻す企業が出始めている。

これは、AIブームの初期、大幅なコスト削減という大胆な触れ込みに乗り、多くの企業が人員削減を断行した結果として得た厳しい教訓である。

現在、多くの業界専門家が、的確な判断、創造性、顧客対応、品質管理を必要とする役割には、引き続き人間が主導権を握る必要があると指摘している。

再就職支援企業キャリアマインド(Careerminds)が過去12ヶ月以内にレイオフ(一時解雇)を行った人事担当者600名を対象に行った調査によると、10社中9社がAI関連の人員削減について「再考の余地がある」と回答した。

調査に回答した人事担当者の4人に3人が、AIなどの技術導入によって役割や業務が不要になったことを理由に、社員を解雇したと認めている。

しかし、AIが約束通りの成果をもたらしたと回答したのは、調査対象のわずか8.4%に過ぎなかった。

「過去12ヶ月間、AIツールの導入を一時停止、あるいは縮小した後に我々のもとを訪れる企業が著しく増加している」と、ステルス・エージェンツ(Stealth Agents)のCOO、ジェームズ・キャロウェイ氏はエポック・タイムズに語った。

同社は経営層向けの秘書サービスを手がけているが、この分野では人間とAIエージェントとのコストパフォーマンスの差が特に明確に現れる。

「あるEコマースのクライアントは、AIによるカスタマーサービス導入を予算化していたが、ライセンス費用、システム統合、そして継続的なプロンプトエンジニアリングのコストが、当初の見積もりの2〜3倍に達した」と彼は述べた。

「彼らは結局、我々の人間によるバーチャルアシスタントを2名雇い、問い合わせ1件あたりの解決コストを40%近く削減した」

「共感や判断力を要する顧客対応、顧客の真のニーズを読み取る必要がある業務、サードパーティのAIシステムに安全に投入できない独自の情報を扱う業務、そして間違いが深刻な評判リスクや法的責任を招くような業務においては、人間の従業員の方が依然として費用対効果が高い」

大手テック企業も同様の結論に至っている。4月、エヌビディア(Nvidia)の応用ディープラーニング担当バイスプレジデントであるブライアン・カタンザーロ氏は、「私のチームにとって、計算コストは従業員のコストをはるかに上回っている」とアクシオス(Axios)に語った。

また、IBMのシニアバイスプレジデント兼最高人事責任者であるニックル・ラモロー氏は、3月に開催されたウォール・ストリート・ジャーナル・リーダーシップ・インスティテュートのサミットで、「企業の成長において重要なのは、人間をAIで完全に置き換えることではなく、AIを活用して人間の能力を補強・拡張することだ」と論じた。

この発言は、IBMがエントリーレベルの採用を3倍にする計画を発表してからわずか数週間後のことであった。なぜ多くの企業が同様のアプローチを取らないのかと問われ、ラモロー氏は「彼らが『成長マインドセット』ではなく『生産性マインドセット』に陥っているからだ」と答えた。

世界的な経営コンサルティングファームであるBCG(ボストン・コンサルティング・グループ)の分析では、今後数年以内に米国の全職種の50〜55%がAIによって「再形成」されると予測されている。

予期せぬ出費

人材ソリューション企業であるザ・エナジスツ(The Energists)のCEO、ジョン・ヒル氏は、生成AIは単なる「サブスクリプション料金のかかるソフトウェア」であるという誤解があると指摘する。彼は、AIに対する後悔が、どのようにして人員の再雇用につながるのかを目の当たりにしてきた。

「我々のクライアントの多くは、人件費を削減できると考えて生成AIイニシアチブを積極的に推進したが、AIシステムの現実的なコストを認識し、人間による雇用へ回帰するケースが増えている」とヒル氏は語る。

彼は、コンプライアンス報告と技術サポートの一部を自動化しようとしたある企業の例を挙げた。当初の試算ではコスト削減が期待されたが、サイバーセキュリティ、人間による監視、API使用料などを考慮に入れると、その利益は消滅してしまったという。

そのクライアントは、「人間のスタッフの方が低コストで長期的に予測可能な成果を出せる」という理由で、AIの導入を停止することを選択した。

ヒル氏は、組織が見落としがちなコストが複数存在すると指摘する。クラウドの計算コストだけで、利用状況によっては「年間で6〜7桁(数十万ドル〜数百万ドル)の出費」になる可能性があるという。

メディアコンテンツ制作を手がけるMKBメディア・ソリューションズのCEO、マット・バハラヴ氏は、チームで導入したAIコンテンツアシスタントが、コストがかさむ上に効果も低かったと語った。

「営業や広報などのアウトリーチ活動で、外部への提案文(ピッチ)を作成するためにAI自動コンテンツアシスタントを利用していたが、それを停止することにした。このソフトウェアが期待通りに機能していないと気づいたからだ」とバハラヴ氏は述べる。

「そのツールには毎月数千ドルもの利用料を支払っていたが、AIが生成する内容はありきたりな文章ばかりで、使い物にならなかった。結局、チームはAIが作成した文章を実用的なものに修正するために、膨大な時間を費やす羽目になった」

バハラヴ氏は、複雑なコミュニケーションにおいては、「優れたライターの方が、高額な自動コンテンツアシスタントよりも安上がりである」と学んだ。

「我々はそのソフトウェアを完全に排除し、その資金を優秀で鋭いライターの採用に充てることにした」

技術支出追跡プラットフォームのMavvrikは、2025年の「AIコスト管理レポート」において、80〜85%の企業がAIインフラの予測予算を25%以上超過しており、84%がAIコストの誤算による「重大な粗利益の低下」を報告していると指摘した。

高級品としてのAI

労働力インテリジェンスプラットフォームLYTIQSの最高市場戦略責任者であるマーカス・モスバーガー氏は、AIが人間の判断に委ねるべきではない領域以外であれば、労働力の中で独自の役割を担える可能性はあると考えている。

「人事部門はAI活用の好例だ。健康保険プランの免責金額(自己負担額)などのマニュアル的な定型質問にはAIが対応できるが、『同僚との人間関係で不快な思いをしている』といった、感情的なケアや繊細な配慮が必要な相談には全く適していない」と彼は言う。

同氏によれば、多くの企業がAIに『過度に傾倒』した結果、厳しい教訓を学ぶことになるだろう。しかし、彼が懸念するのは単に『減らした人員を再雇用しなければならない』という手間やコストの問題ではない。それ以上に、組織の根幹を揺るがすような、より深刻な代償を払う可能性があると指摘している。

「私は、生成AI導入に伴う最大の隠れたコストは、従業員と雇用主間の信頼関係の崩壊だと考えている。正直なところ、この信頼関係はもともと盤石なものではなかったのだが」とモスバーガー氏は語った。

彼は、勤勉な米国人労働者たちが、雇用主がAIインフラに何十億ドルも投資する一方で、同僚を解雇し、さらに自分たち自身の代替となるAIのトレーニングを命じられている状況を注視していると指摘する。

「もし経営者が、自分の会社が社員の雇用を奪うような決定をした後でも、その社員たちがなお自発的に組織に貢献し、改善のためにリスクを取って挑戦してくれるなどと考えているなら、それは大きな勘違いだ」と彼は断言する。と彼は断言する。

同氏は、こうした状況が続くことで、企業には困難な採用活動と並行して、ブランドとしての信頼をゼロから再構築するという重い課題が突きつけられるだろうと予測している。モスバーガー氏は、AIゴールドラッシュの初期に解雇された人々の多くは、同じ企業に戻ることを拒否するだろうと考えている。

「かつて解雇した社員が再び同じ企業に戻ることを、最近では親しみを込めて(あるいは揶揄を込めて)『ブーメラン社員』と呼ぶようになっている。

バハラヴ氏にとって、AIに頼らず人間の才能を信じるという決断は、最終的に間違いなく報われた。「(AI導入という遠回りを経て)結果的に、コスト削減という当初の目的を人間中心の体制で達成することができたのだ」と彼は手応えを語る。

南アメリカを拠点とする記者です。主にラテンアメリカに関する問題をカバーしています。