【ミルウォーキー発】アメリカ前大統領ドナルド・トランプ氏は15日、ウィスコンシン州ミルウォーキーで開催された共和党全国大会において、オハイオ州選出の共和党上院議員J.D.バンス氏を副大統領候補に指名した。バンス氏は過去にトランプ氏を激しく批判していたが、最終的にはトランプ氏の最も強力な擁護者の一人となった。
J.D.バンスの経歴
J.D.バンス氏は1984年8月2日、オハイオ州ミドルトンで生まれた。彼の幼少期は貧困と暴力に満ちており、祖父母に育てられた。バンス氏は困難な環境の中で自らの道を切り開き、高校卒業後に海軍陸戦隊に入隊。イラクで広報業務に従事した経験は、彼の人生観に大きな影響を与えた。その後、オハイオ州立大学で政治学と哲学の学士号を取得し、イェール大学法科大学院で法務博士号を取得した。
学業を終えた後、バンス氏は会社法専門の法律事務所としては6番目に大手のシドリー・オースティン法律事務所に勤務。その後、保守派投資家ピーター・ティール氏のシリコンバレー投資会社ミスリル・キャピタル(Mithril Capital)で働いた。2019年には、オハイオ州で自身の投資会社Naryaを設立し、ビジネス界での成功を収めた。2016年、バンス氏は、白人労働者層出身の生い立ちなどをつづったベストセラー『ヒルビリー・エレジー』を著し、その中で米国の農村地域の社会経済問題と貧困の連鎖を探った。この本は大きな反響を呼び、映画化もされた。
政治の舞台へ
バンス氏は当初トランプ氏に対して批判的な立場を取っていたが、2021年にオハイオ州の上院議員選挙に出馬することを発表した際、態度を一変し、トランプ氏の政策を称賛するようになった。トランプ氏の支持を受け、2022年の中間選挙で民主党の対立候補ティム・ライアン氏を破り、上院議員に当選した。
バンス氏はすぐに米国の「新保守主義」の代表的な人物となり、国境管理と関税、経済へ国家介入の強化、グローバリゼーションの依存度の低減を主張した。彼は中国が経済、技術、軍事面で米国にとって重大な脅威であるとし、ロシアよりも大きな脅威と見なしているため、中国製品に対する関税引き上げや国内製造業の強化を支持している。
政治的立場
- トランプ支持:2020年の大統領選挙でトランプ氏に投票し、その後もトランプ氏を強力に支持している。
- 新保守主義:共和党をより民族主義、文化保守主義の方向に導こうとしている。
- 2020年大統領選挙結果への疑念:2021年1月6日の議会において、彼が副大統領だったら選挙結果の確認をしなかったと述べている。
- 対中強硬政策:中国を米国にとっての最大の脅威と見なしており、中国製品に対する関税引き上げや国内製造業の強化を支持している。
- 貿易保護主義:関税を引き上げ、グローバリゼーションの負の影響から米国の製造業や労働者を保護することを支持している。
- 移民政策:移民を大幅に削減し、米国の労働者階級の雇用率と賃金を向上させることを主張している。
- ウクライナ支援への反対:ウクライナ情勢に関心がないと公言し、米国が国内問題にもっと焦点を当てるべきだとしている。
政治的影響
バンス氏を副大統領候補に選んだことで、トランプ氏が労働階級の有権者からの支持をさらに強化し、オハイオ州の重要な票を確保できる可能性が高いと見ている。これは共和党の勝利にとって重要な要素である。
また、多くの有権者が今年の両党の候補者の年齢が高すぎると不満を抱いている中、39歳のバンス氏は共和党の選挙運動に若いエネルギーを注入している。彼の若さはトランプ氏の高齢を補い、両党に失望している一部の若い有権者を引き付ける可能性がある。共和党の副大統領候補として、彼は「新保守主義」の理念を推進し、2024年の米国大統領選挙で勝利を目指す。
専門家たちによると、バンス氏のこの指名により、共和党は一層団結し、来たる選挙に向けて勢いを増す。その先には、アメリカの未来を賭けた壮大な戦いが待っている。
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