アメリカの法律事務所が中国本土からの撤退を加速 シンガポールに移転も視野

2024/07/12
更新: 2024/07/12

米国のローファーム(法律事務所)が、中国本土からの撤退を急いでいる。資本市場の悪化、構造的な経済問題、地政学的な緊張など、経営環境の悪化がその要因とされる。

中国法務部の統計によると、外国法律事務所の中国事務所の数は2017年以降減少傾向にある。2022年末までに205件に減少し、現在はさらに減少していると推測される。

「日経アジア」が8日に報じたところによると、法律サービスデータベース「レオパードソリューションズ」によれば、2022年初頭から7月までに中国内の米国ローファームの従業員数は約100人減少し、545人となった。また、2019年には中国に64の米国ローファームが存在したが、今年末までには60以下に減少する見込みだ。

パンデミック前に比べると大きな減少とは見えないが、ここには留意点がある。パンデミック後、中国経済の回復を期待して多国籍企業が中国での事業を拡大していた点である。

大手ローファームの動向

米国ローファームのデチャート(Dechert)は、今年中に中国から完全撤退する計画を発表し、アジア地域の顧客サービス拠点をシンガポールに移す予定だ。また、ニューヨークを本拠地とするウェイル、ゴシャル&マングズ(Weil, Gotshal & Manges)は3月に北京事務所を閉鎖し、上海事務所も閉鎖する計画である。アジア事業は香港に統合される。

他にも、米国ローファームのモリソン&フォースター(Morrison & Foerster)、メイヤー・ブラウン(Mayer Brown)も事務所を閉鎖または中国内の事業を整理する方針を示している。

米国ローファームの撤退は、中国経済の停滞や地政学的緊張に加え、中国の現地法体制におけるクライアント-弁護士間の秘密保持特権の欠如、適法手続きの不足、最近施行された『反スパイ法』やサイバーセキュリティ規定による不便さが要因とされる。

米国ローファーム『ジョウハウザー』の法律コンサルタント、ピーター・ジョウハウザー氏は「ほとんどのローファームは中国でのビジネスチャンスが減少し続けると見ている。状況が改善するのは短期的ではなく長期的な問題だ」と述べている。

米国の大統領選が近づく中、中国で活動する外国企業は、選挙後に米中関係がさらに悪化することを懸念している。しかし、トランプ氏が再選しても米国企業に対する影響が増えるとは限らないとの見方もある。

中国共産党の社会主義強化の動きもリスク要因として挙げられる。メイヤー・ブラウン氏は2021年に香港大学の代理人を務めた際、中国国有企業からの依頼を失った。香港大学は1989年の天安門事件を記念する像を撤去しようとして訴訟を起こしていた。

これらの動きは、米国ローファームが中国から撤退し、シンガポールなど他のアジア拠点に移行する大きな流れを示している。今後も地政学的な緊張が続く中で、法務業界の動向に注目が集まる。

徐天睿
エポックタイムズ記者。日米中関係 、アジア情勢、中国政治に詳しい。大学では国際教養を専攻。中国古典文化と旅行が好き。世界の真実の姿を伝えます!