中国の国家安全新規則施行 専門家「訪中は慎重に」

2024/07/06
更新: 2024/07/06

7月1日、中国共産党(中共)の新しい国家安全規則が正式に施行された。今回、規則を運用するにあたって、当局にスマートフォン、個人用コンピュータ、その他の電子機器を検査する権限を与えており、外国人や外国企業に対して任意に執行が行われる可能性があることから、懸念が広がっている。

国家安全の拡大 任意の執行

昨年7月に施行された新規則は中共の「反スパイ法」に基づくものであり、それ以前の法律では「国家機密と情報」に限定していたが、この修正により、スパイ活動の定義が拡大され、「国家安全と利益に関わるすべての文書、データ、資料、物品」がスパイ活動の範囲に含まれるようになった。

修正後の「反スパイ法」は、国家安全部とその地方部門に前例のない執行権限を与え、個人の電子機器や商業施設の検査が可能となった。

緊急事態の場合、これらの検査は捜索令状なしで行われる可能性がある。もし現場で電子機器を検査できない場合、警察はこれらの物品を指定された場所に持ち込む権利を有する。しかし、どのような状況が緊急事態と見なされるかは明確ではない。

これらの規定により、外国人の個人や企業は、中共当局による監視強化の可能性について懸念を抱いている。

     (Photo credit should read GREG BAKER/AFP via Getty Images)

元大陸の人権弁護士である呉紹平氏は大紀元に対し、中共は無法の政権であり、立法、執行、法解釈のすべての権限を掌握していると述べた。中共は必要に応じて法律を制定し、利用している。建国以来、立法と法律の修正を繰り返しており、憲法さえも数回改正している。

「反スパイ法」も同様である。スパイやスパイ組織、スパイ活動の定義は中共が決定する。中共がスパイ行為と見なせば、異議を申し立てる場所はない。過去の多くの事例でも、人の私会話が証拠として用いられてきた。

呉紹平氏は、この法律が国家安全部門にさらに多くの権限を与え、権力の乱用を助長すると指摘している。中共が実際に法律を執行するならば、「反スパイ法」は不要であり、刑法、国家安全法、秘密保持法などの既存の法律で十分対応できる。特別に「反スパイ法」を制定することは、自らの権限を強化し、民衆をさらに管理するためであると述べた。

新規制定前からの随意に検査

実際、北京や上海などの都市では、敏感な時期に警察は街頭や地下鉄車両で市民の携帯電話の検査を行なってきた。近年、中共の税関も入国者の電子機器を抜き打ち検査するようになっている。

今年1月、韓国の旅行者が中国に入国した際、税関でノートに台湾を国家と示す地図を発見し、1時間ほど拘留した後に解放した。

台湾のビジネスマン、李孟居氏は、「この法規を制定せずとも人を逮捕できる」と述べた。2019年8月、李孟居氏は香港から深センに入国した際、荷物と携帯電話を検査され、国家安全を理由に1年10か月間拘留され、テレビでの認罪を強要された。

(蔡文昕/大紀元)

李氏は、当時の状況を回想し、検査したカードの内容が香港の反送中運動に関連していると判断され、携帯電話の中の写真が証拠とされたと述べた。李氏はこの経験から、中共の法律が如何にして利用されるかを強調した。

香港デモに参加しただけで拘束され、広東省の刑務所に収監された台湾人ビジネスマンの李孟居さん(大紀元)

外国市民の懸念を引き起こす

中共は関連法規が国家安全を脅かすスパイ行為を取り締まるためのものであり、「一般の入国者」は対象外であると主張しているが、韓国、日本、台湾の政府や企業は最近、渡航リスクに関する警告を発表した。

韓国の国家情報院は6月27日に、中共政府が7月から電子機器の検査権限を強化するため、韓国市民に注意を促した。

日本の共同通信は、日本の旅行会社の関係者が新規則により観光客の中国訪問がさらに妨げられる可能性があると報じた。いくつかの日本企業は、従業員に対し中国出張時にスマートフォンを持ち込まないよう指示している。

東京在住の梁氏は、大紀元に対し、中国は日本市民に対するビザ免除を一時停止していると述べた。梁氏は、政治的な理由でビザの申請が複雑になり、多くの人が渡航を取りやめていると指摘した。この背景の下、新たな入国検査が追加されることで、日本人の訪中意欲はさらに低下するだろうと述べた。

中国は2014年の「反スパイ法」施行以来、少なくとも17名の日本人を拘束しており、そのうち5名は未だに釈放されていない。最新の例では、昨年10月に日本の製薬会社の社員を逮捕した。

中共は最近、台湾の「独立」分子を処罰する新たな意見を発表し、台湾への圧力を強化している。台湾の大陸委員会(陸委会)も中国、香港、マカオへの旅行警告を引き上げ、不要不急の渡航を避けるよう台湾市民に呼びかけている。

バス車内の携帯電話をチェックする北京警察 (ビデオ・スクリーンショット)

訪中には慎重な判断を

新規則は外国人の通常の商業活動にも影響を与える可能性があり、外国企業やビジネス旅行者、学者、記者、研究者に新たなリスクをもたらしている。

中共当局は昨年12月から一部の国に対してビザ免除を実施し、外国人観光客を誘致するための措置を講じているが、一方で「反スパイ法」や「国家保密法」などを利用して監視を強化している。

呉紹平氏は、「中共の法律は、スパイ行為と見なした者に対して厳しい制裁を加えるものであり、外国人も例外ではない」と述べた。また、「中国人と交流することは問題ないが、中共政権とは距離を置くべきだ」と強調した。

中共の法律は、外国人にとってもリスクが高く、訪中に際しては慎重に判断する必要があると述べた。

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