グーグルAI、中国共産党のプロパガンダなぞる…天安門や台湾問題「回答できない」

2024/06/17
更新: 2024/06/18

グーグル人工知能AI)アシスタント「Gemini(ジェミニ)」中国語版が、中国の人権問題や市民の抗議デモに関する質問には沈黙を貫く一方で、中国共産党のプロパガンダをなぞるような回答を行なっていると、米政府系メディアが報じた。

グーグルは昨年末、40以上の言語に対応する大規模言語モデル「ジェミニ」を発表したが、中国では使用がブロックされている。同社は2010年、検閲要求をめぐる対立から中国市場から撤退していた。

大紀元記者はジェミニ中国語版で、中国共産党が事実上検閲対象としている「敏感キーワード(習近平、台湾、香港など)」を入力し、回答を求めた。その結果、ジェミニは「私はその課題について学習中だ。そのかわりグーグルで検索することができる」と明確な回答を避けた。

いっぽう質問の主語を中国共産党に変えた場合、例えば「党が説く台湾問題とは何か」「一国二制度とは何か」を尋ねると、中国共産党の公式回答を示した。

さらに主語を変えて「台湾民進党が説く中国共産党の問題とは何か」「香港民主活動家が訴える中国共産党の問題とは何か」を尋ねると、「言語モデルが回答できる範疇ではない」と答えなかった。

このほか「岸田文雄とは誰か」「朝鮮労働党総書記は誰か」など現在の執政者に対しての質問は同様に回答しなかった。

習近平について説いたが「学習中だ」として解答を避けた(大紀元)

党の主張は並べるも、人権は答えず

ボイス・オブ・アメリカ(VOA)によれば、ある時期にジェミニに対して習近平について聞くと「優れた指導者であり、人民を中華民族の偉大な復興へと導き続ける」と高く評価。中国共産党については「中国人民の根本的利益を代表する」と、共産党のプロパガンダをそのまま鸚鵡(おうむ)返ししたという。

いっぽう、新疆ウイグル自治区における人権侵害や、2022年末に中国全土で展開された抗議運動「白紙革命」、六四天安門事件について尋ねても、役にたつ情報を示せない、とした。

人権問題に関連して米国内の問題を問うと、ジェミニは積極的に回答を行なった。中国当局が発表した報告書を引用しつつ、米国の銃犯罪や政府の監視、警察の虐待、経済的不平等など、多岐にわたる問題を列挙した。

ジェミニの親中共的な回答の原因とは何か。識者は、ジェミニの中国語の学習データは、中国本土のSNSや政府公式文書に由来しているため、回答もそれらに依拠している可能性が高いと指摘する。

豪戦略政策研究所(ASPI)のアナリスト、アルバート・チャン氏は、情報元が「中国当局側が大量に発信し、選好した筋書きであり、大規模言語モデルへの影響が表れている」と述べる。

上記の一連の質問をジェミニの日本語版や英語版で試すと、異なった回答が示された。これらの言語の場合は、オンライン百科事典ウィキぺディアや、現地主要メディアを出典元とした回答だった。

グーグルの広報担当者はVOAの取材に対し、「ジェミニは特定の政治的イデオロギーや視点、候補者を支持することなく、中立的な回答を提供するよう設計されている。これは常に改善に取り組んでいる課題だ」とコメントしたという。

いっぽう、中国語圏において、中国共産党の政治的宣伝(プロパガンダ)が世界的企業の情報網や人工知能を通じて発信されていることは事実だ。

上院情報委員会のマーク・ワーナー委員長は、「中国によるAIを利用したディスインフォメーション(偽情報)の可能性を懸念している」とVOAに述べた。下院外交委員会のマイケル・マコール委員長も、「ジェミニの回答に見られる明白な虚偽は、国家安全保障と外交政策に影響を及ぼしかねない」と危機感を示した。

超党派の議員からは、AIの学習プロセスの透明性を高めるよう求める声があがる。下院中国共産党特別委員会のラジャ・クリシュナムーティ議員は、「中国共産党によって操作された可能性のあるデータは排除するよう、テック企業は努力すべきだ」と指摘した。

大紀元日本 STAFF