新任台湾総統、頼清德氏が展開する対中政策が、中国共産党の台湾統一計画にどのような影響を与えるかを解析する。頼総統氏はどのようにして台湾の自立を固め、中国の圧力に対抗していくのか、その具体的な戦略と政策の詳細に迫る。
中華民国の第16代総統として、頼清德氏は正式にその職に就いた。彼の就任演説で明らかにされた対中政策とは何か。頼清德氏は中国共産党に対してどのような秘策を用意しているのか。中国共産党が台湾を掌握する「中国の夢」がなぜ実現不可能な幻想にすぎないのか。頼政権の対中政策には何が欠けており、それがどのようにして中国共産党を凌駕し、台湾の安定と長期的な安全を確保する鍵となるのか。このエピソードでは、それらを詳細に分析する。
今日は、過去2日間の華人コミュニティで最も注目された話題、すなわち中華民国の第16代総統として頼清德氏が正式に宣誓し、就任したニュースについて伝える。
頼清德氏を話題にする理由は、彼が台湾海峡を挟んで中国共産党の新たな挑戦者となったからだけではない。もっと重要なのは、頼政権がスタートして以来、中国共産党が台湾に対して取る態度に受け身であるだけでなく、台湾への侵攻計画を阻止すると考えられることだ。さらに、頼政権が執り得る他の施策によっては、中国共産党の政権衰退や崩壊のペースの加速があり得る。これが意味するところは。
頼清德が中国共産党に向けて五つの策を打ち出す
総統に就任した頼清德氏は、演説で自らの対中政策は「自尊心を保ちつつ現状維持を目指す」と明言した。しかし、その演説は単に自尊心を保つ以上の深い意味を含んでいると私には感じられる。彼は攻守のバランスを保ちつつ、中国共産党に対して鋭い打撃を加えた。
第一の戦略として、頼清德氏は台湾と中国共産党との関係を「不卑不亢、現状維持」と述べる。「不卑不亢(ふひふこう、卑屈でもなく傲慢でもない)」とは、台湾が中国共産党の圧力や脅威に屈することなく、自尊心を保つ姿勢を意味し、「現状維持」は、中国共産党が提案する「一国二制度」を受け入れず、かつ台湾が独立を宣言しない現状を保つことを指す。この政策により、台湾はアメリカや他の同盟国からの信頼を得ており、中国共産党が台湾海峡での軍事的な行動や問題を起こす正当な理由を持たないようにさせる。
第二の戦略は、中国共産党に中華民国の存在を認めさせ、中華人民共和国と中華民国がそれぞれ独立した国家であることを明確にすることだ。これは中国共産党にとって難しい問題であり、両岸がそれぞれ主権を持つということは、実質的に二つの国が存在していることを意味する。台湾が正式に独立を宣言していない状況であっても、これは台湾が歴史的に独自の主権を保持していることを示しているのだ。
中華民国は113年前に設立され、100年以上の歴史を誇る国家のシンボルである宝玉璽(王が公式に用いる 印章 『 璽 』を指す語)を有している。一方、中国共産党は1949年に政権を樹立してから75年が経過した。このような歴史的な背景が、中国共産党にとって、どちらが真の「中華」の後継者であるかという議論を複雑にしている。
第三の戦略として、頼清德総統は中国共産党に対し、「台湾の人々の意志を尊重し、台湾で民主的に選出された正当な政府と誠実な協力を求める」と述べている。これは、中国共産党政府が民主的な選挙によって選ばれたわけではないため、その政権の正統性に疑念を投げかけていると解釈できる。
第四の戦略では、これまで中国共産党は、台湾政府が両岸の交流や対話を拒否していると批判してきたが、頼清德氏は「平等と尊厳を重んじる原則に立ち、対立ではなく対話を、包囲ではなく交流を通じて協力を深めたい」と明言している。
ご承知のとおり、中国共産党が「平等と尊厳」という価値を受け入れるとは想像しにくい。台湾は国際社会に対し、平和的な対話を通じて両岸関係の改善を訴えているが、問題は中国共産党にはその対話を始める意思や勇気がないことである。このため、両岸対話を促進する提案は、名目上は中国共産党に対話の主導権を与えているが、実際、彼らはそれを受け入れる勇気はない。結果として、中国共産党は受け身の立場に置かれている。
第五の戦略において、頼清德氏は民主主義国家との連携を強化し、「民主共同体」を維持することで、民主主義の柔軟性を高め、様々な挑戦に対応する姿勢を明確にする。これは、中国共産党の外交的圧力に屈せず、台湾が台湾海峡の問題を国際的な議論の場に持ち込んだことを示しており、台湾は単なる小さな島ではなく、アメリカ、日本、ヨーロッパなど多くの国々と連携する民主主義の一翼を担っていることを意味している。
つまり、頼政府は台湾と他の民主主義国家との関係を深めることで、中国共産党が台湾に対して攻撃を行う際の障害となるコストを増加させ、彼らの成功確率を下げる戦略を採用している。頼清德総統によるこれらの施策は、台湾が中国共産党の脅威に屈することなく、圧力に抗しながら生き残る道を探求していることを物語っている。
中国共産党の台湾獲得の野望は終焉を迎えたのか?
実際、頼清德総統の就任以降、中国共産党が台湾を統一する道はより困難になり、その野望が砕ける可能性が増している。その理由とは何であろうか。
中国共産党にとって、台湾への軍事攻撃を実際に行う場合、敗北のリスクが高まるばかりでなく、戦争の代償とリスクも莫大であり、結果として習近平政権の存続が危ぶまれるであろう。さらに、最近中国共産党は西側諸国からハイテク分野で制裁を受けており、これが軍事準備にも悪影響を及ぼしている。その結果、短期間で台湾を制圧するための十分な軍事力や装備が中国には欠けている。
この状況を踏まえると、「軍事力による統一」という選択肢は非現実的であると言える。しかし、中国共産党が考えるもう1つの方法として、「強制的な平和統一」という戦略が存在する。これは、軍事封鎖などを駆使して台湾を孤立させ、包囲することで、台湾が自ら降伏するよう追い込む戦略である。
しかし、「強制的な平和統一」も簡単な道ではない。中国問題の専門家であり、東京大学の教授である松田康博氏は、この戦略が成功するためには、三つの条件を同時に満たさなければならないと指摘する。第一に、中国共産党が非常に強力であること、第二に、アメリカが孤立主義を取り、外交介入を望まないこと、そして第三に、台湾の指導者が圧力に屈しやすいことが必要である。
これらの条件を考慮してみると、中国は今、経済の後退と失業率の上昇に直面し、政府は財政難に苦しんでおり、軍内部にも習近平への不信が広がっている。このような状況では、中国共産党が強力であるとは言えず、むしろ弱まっていると考えられる。
第二に、アメリカが孤立主義を取っているかという疑問に対しては、明らかに否定される。アメリカはウクライナの防衛支援に留まらず、インド太平洋地域での軍事的存在感を積極的に増しており、台湾を中心に新たな戦略計画を立案している。
4月には、アメリカ海軍と台湾海軍が共同で海上演習を実施し、さらにアメリカの駐日大使が最近、台湾に最も近い日本の領土である与那国島を訪問した。これらの動きは、中国共産党への明確な警告メッセージとして行われている。台湾への武力行使を断念するよう警告し、挑戦した場合は、米国と日本の連携した軍事力で対応することを示唆している。
台湾の指導者である頼清德氏の抵抗力も、重要な要素である。彼は中国共産党に対してはっきりとした姿勢を示し、「不卑不亢」というバランスの取れた態度を保っている。頼氏は、台湾の人々が平和を求めていることを認めつつ、中国共産党に対する幻想を抱かないよう呼びかけ、国防への強い意志を強調している。つまり、彼は中国共産党に屈することなく、国の安全を守るために全力を尽くすという決意を示したのだ。
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