米中貿易戦争は新たな局面に突入し、トランプ政権は対中関税を145%へ引き上げ、中国も125%で応じた。関税政策に加えて、地政学的な対立や企業制裁が複雑に絡み、世界経済への影響が一層深刻になった。本稿では、両国間の新動向とその背景について詳述しよう。
中国共産党(中共)は当初、イーロン・マスク氏を利用して、アメリカ企業に圧力をかける策を講じたが、その試みは不発に終わった。むしろ、アメリカ企業界は反発を強め、ナスダックでは「中資企業を排除せよ」との声が強まった。
さらに、トランプ氏の最新の行動も見逃せない。アメリカ軍は、パナマ運河への再展開を開始し、アメリカ国防長官はパナマ政府が、中共の排除を望んでいると公言した。また、中共は、秘密会議において、アメリカのインフラに対するハッキング作戦を指示したと報じられている。
最後に、中共が仕掛けた「反撃の組み合わせ攻撃」がどれほど効果的だったのかを検証しよう。
関税の応酬がエスカレート! 中共は硬い壁に直面
4月10日、トランプ氏は、中国製品に対する関税を145%に引き上げる方針を示し、中共は、11日にただちに報復し、アメリカ製品への関税を125%に設定した。また、それ以上の関税引き上げには、一切応じないと宣言した。これは中米貿易戦争以降、最も緊迫した局面に当ると言う。
他国に対しては、90日間の猶予を与え、交渉の余地を示したトランプ氏だが、中共に対しては妥協の姿勢を一切見せなかった。
「こちらからは連絡しない。招待もしない。交渉の口火は中共が切るべきだ」
と明言した。
関係筋の情報によれば、中共が関税を引き上げる数時間前、トランプ政権は北京側に対し「軽率な行動を取るな」と警告していたが、中共はその忠告を無視し、「長期的な対抗も辞さない」と強硬な姿勢を崩さなかった。
CNNの報道によれば、トランプ陣営は、非公式なルートで、習近平の直接関与を条件にコミュニケーションの可能性を伝えていた。習近平が関与しない限り、交渉は成立しないという立場である。中共はこれに応じず、バイデン政権のような「裏ルート」の構築を試みたが、トランプ陣営はその手法を一蹴した。
トランプ政権は王毅外交部長を交渉相手として認めないと明確に表明した。王毅は習近平の中枢には属しておらず、その提案自体が、対話を停滞させる結果を招いた。王毅自身は懸命に働きかけたが、状況を悪化させたにすぎなかった。
中共の接触は失敗 アメリカ企業に手を出したいが反撃を恐れる
中共も打開策を模索していた。
CNNの報道によれば、習近平は、韓正副主席をトランプ氏の就任式に派遣し、ワシントンでマスク氏と面会させるよう指示した。これはマスク氏を介して、北京とトランプ氏との間に非公式の連絡経路を設ける試みであった。
しかし、この計画は成果を上げなかった。マスク氏は中共の意図を汲まず、トランプ側も特に反応を示さなかった。
同時に、中共内部では、アップルやテスラといったアメリカ企業への対応について、真剣に議論が行われていた。これによって、トランプ氏に一定の圧力をかける狙いがあった。
だが、最終的な計算の結果、これらの企業に対して制裁を加えれば、消費者の反発や外国資本の流出を招き、結果的に中共と企業との間の利益連鎖が断たれるおそれがあると判断した。こうして、上げかけた拳を静かに下ろした。
一方、アメリカの企業界では風向きが変わりつつあるという。
フォックスニュースの番組「シャーク・タンク」で司会を務めるケビン・オレアリー氏は、「中資企業をアメリカ市場から排除すべきだ」と公然と主張した。「彼らは資金を集めながらルールを無視している。このような状態はもはや容認できない」と述べ、さらに「ルールを守らないなら、出ていけ」と断言した。
オレアリー氏は中共系企業の「影の株式」構造を問題視し、見かけは株式の形式を取っていても、実際には投票権や支配権を持たず、ウォール街から資金を吸い上げている現状を指摘した。「自分たちはルールを守っている。彼らは守っていない。これが公平なのか」と語気を強めた。
中共は「口先だけ」と叫ぶが 市場はもはや持ちこたえられない
中共も傍観しているわけではない。ロイター通信によれば、中共は株式市場の安定化を目的として、水面下での介入を開始した。中国の取引所は「ソフト上限」を設け、ヘッジファンドや大口投資家に対して一日最大5千万元までの株式売却を認めているが、それを超える場合にはアカウントの停止という強制措置が待っているのだ。
これは市場原理ではなく、行政主導の統制である。つまり、出口を封じ、穴を塞ぐという対応に他ならなかった。
同時に、中共商務部は、外向けに強硬姿勢を演出し、「アメリカの数字遊びに過ぎない」と主張し、高関税の無意味さを強調した。しかしその直後に、「アメリカが中国の利益を損ねるなら、最後まで対抗する」と発言しており、内心の焦りが透けて見えたのだ。
「気にしていない」と言いつつ「傷つけないでほしい」と訴えるその態度は、恐れを否定しながらも内心では動揺している様子を物語っていた。
資本の流出、株式市場の下落、対外貿易の縮小といった要素が重なり、内外の圧力に晒される北京は、追い詰められた姿を浮き彫りにした。
表面的には中共が強硬に対抗しているように映るが、実態としては「出方を探りつつ、必要に応じて後退する」といった態度を取っているのだ。
たとえば、アップルやテスラに対して強硬措置を試みたが、断行には至らず、イーロン・マスク氏との対話にも失敗した。ヘッジファンドへの規制も、結果的には資本の一部退避にとどまったに過ぎない。
現在、アメリカは、中共を迂回し、日本、韓国、ベトナムといった主要な経済パートナーとの個別交渉を進めており、中共の地域的影響力を希薄化させている。
一連の動きのなかで、中共は、表面的には強気の姿勢を維持しているが、実際には、トランプ氏によって進路を断たれた現実を認識しているのだ。
米軍がパナマに再進出! トランプ氏が中共の裏口を封鎖した後
先述の通り、トランプ政権は、貿易戦争において、強硬な一手を次々と打ち出し、中共の後退を促した。地政学的な観点でも同様であり、特に中共が重視してきたパナマ運河に対するアメリカの戦略は注目に値した。
この運河は、地理的要衝であると同時に、世界貿易の5%、アメリカのコンテナ輸送の40%が通過する極めて重要なルートである。
ここ数年、中共は、港湾投資を通じて運河両端に影響を広げ、「水の主導権」を曲線的に確保しようと目論んできた。しかし、トランプ氏の戦略は、その動きを封じたのだ。
AFPの報道によれば、4月11日、アメリカはパナマと新たな協定を締結し、複数の運河沿い軍事施設において米軍の駐留、訓練、演習、その他の活動を許可する体制を確立したという。
恒久的な基地設置には言及していないが、条項には柔軟性があり、人数や出入りの制限も存在しない。実質的に、米軍は自由に駐留し、自由に撤収できるという事だ。
さらに、これらの軍事施設は、数十年前に米軍自身が建設したものであり、今回の動きは「旧家主の帰還」ともいえた。
配置の意図について多くを語る必要はなく、行動がすべてを物語っている。トランプ政権の狙いは単なる駐留ではなく、地域における主導権の確保にある。
一方で、パナマ国内には反発の声も存在する。
パナマのホセ・ラウル・ムリーノ大統領は、協定に署名したが、アメリカによる恒久基地の提案には応じなかった。彼はピート・ヘグセス米国防長官に対し、「強引な手法は、パナマ国内の反発を招く」と警告を発している。
ヘグセス長官は、この件を内閣会議でトランプ氏に報告し、「大統領、私たちはパナマで歴史的な協定を締結しました。中共の影響力はあまりに強く、この運河を取り戻すには、彼らを排除する必要があります」と述べた。
さらに、米軍はパナマと共同で旧軍事基地を活用し、運河を優先的かつ無償で通過する権利を確保した。「アメリカは中共の排除を本気で望んでいる」とも語った。
もともと、パナマ運河の両端に位置する港は「香港系企業」が長年支配していた。しかし、アメリカの圧力の下、親会社であるCKハチソンは、世界43の港湾資産を一括売却し、その中にはパナマの2大港も含まれていた。これらはアメリカのブラックロックを中心とした財団に売却され、取引額は190億ドルに達した。
中共は、この動きに即座に反応し、独占禁止法の観点から調査を開始すると表明した。
この取引は金銭的側面を超え、「影響力の再構築」を意味する。港の所有権が移転したことで、中共を、実質的にこの地域から排除したといえる。
さらに衝撃的 中共の「暗い手段」が自ら露呈
より機密性の高い安全保障分野において、中共は重大な発表を行った。
「ウォール・ストリート・ジャーナル」の独占報道によれば、昨年12月、アメリカと中共はジュネーブで非公開の会議を実施した。この会議の席上、中共代表はアメリカのインフラに対する一連のサイバー攻撃に関与していることを、間接的な言葉で認める発言を行った。
攻撃対象は、港湾施設、電力網、空港、そして通信ネットワークにまで及び、アメリカの神経中枢を直接的に狙う内容である。
事情に精通する関係者は、中共代表がアメリカの台湾政策に対する「反応」として、こうした攻撃の存在を示唆したと明かした。
明確な表現で「我々の仕業だ」と語ったわけではないが、会議に出席したアメリカ側の官僚たちは、この発言を事実上の認定と受け取り、その意図を「台湾海峡への干渉を思いとどまらせるための威嚇」であると分析した。すなわち、「台湾を支持すれば、インフラを狙う」というメッセージである。
中共の「コンビネーションパンチ」は不発か 先に手を出したが収拾つかず
トランプ氏が、世界規模で強硬な手段を次々と講じるなか、中共は、「反撃のコンビネーションパンチ」によって対抗を試みた。しかし、その結果は芳しくない。
振り下ろした拳は、アメリカには届かず、むしろ中共自身が傷を負う形となり、「石を持ち上げて自らの足を打つ」ような状況を招いた。
まず第一の手段として、中共はアメリカ企業への制裁に動いた。
「ウォール・ストリート・ジャーナル」によると、中共は一挙に18社のアメリカ企業を「ブラックリスト」に追加した。これには航空宇宙、半導体、ドローンなど重要分野の大手企業が含まれる。
アパレルブランドのカルバン・クラインやトミー・ヒルフィガーの親会社であるPVH、そして遺伝子解析大手のイリュミナ(Illumina)などが対象となった。これらの企業は、アメリカの法律を遵守し、新疆ウイグル自治区で生産される綿花を使用せず、制裁規定に従っているため、中共側は制裁対象と位置づけた。
しかし、これら企業の多くは、グローバルなサプライチェーンにおいて、重要な役割を担っていた。一度封鎖すれば、その影響を最も受けるのはアメリカではなく、これら企業の技術や供給網、市場に依存する中国国内の企業である。
さらに中共は、「規制カード」として独占禁止調査に着手した。
今回の標的はデュポン、インテル、ファイザーであり、彼らの中国市場におけるビジネス行動が、独占的かどうかを調査する方針を示した。
しかし、業界内ではこの動きを単なる政治的圧力とみなしており、「独占禁止」という名目は建前に過ぎず、実態は報復措置であるという見方が支配的であり、果たしてこのような戦術に実効性があるのだろうか。
市場のグローバル化が進展する現代において、このアプローチは、むしろ外国資本の撤退を加速させ、中共自身の経済的な立場を脅かす可能性すら孕んでいる。
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