山梨県富士河口湖町は、SNSで人気を集めていたコンビニエンスストアと富士山を背景にした撮影スポットについて、安全対策工事を行う。急増する外国人観光客による交通ルール違反や私有地への立ち入りなどの問題に対応するため、防護柵と遮光ネットの幕を設置する。工事は5月21日までに完了する見通し。
歩道と車道の間に高さ80センチの防護柵を9か所設置し、違法な道路横断を物理的に防ぐ。また、コンビニ脇には高さ2.5メートル、長さ20メートルの遮光ネットを張り、富士山の景観を遮ることで、撮影スポットとしての魅力を抑える狙いだ。
同スポットでは、限られたスペースに多くの観光客が集中することで、歩道の混雑や車道へのはみ出しが頻発。横断歩道以外での無秩序な横断も後を絶たず、非常に危険な状況が続いていた。また、周辺の私有地への無断立ち入りやゴミの投棄、無断駐車などの迷惑行為も多発していた。
町はこれまでも、英語や中国語、韓国語、タイ語など4か国語の注意看板や路面標示による啓発、警備員の配置など様々な対策を講じてきたが、改善には至らなかった。警備員の指導を無視して車道に出る観光客も後を絶たないという。
富士河口湖町の人口約2万6千人に対し、繁忙期には3倍もの観光客が訪れる。町には「景観より安全を優先すべき」との住民の声が多数寄せられ、景観規制に踏み切った。
町は「安全と平穏な住民生活を確保するため、苦渋の選択の末、本工事を施工するに至りました」と理解を求めた。
「インスタに賠償請求すれば」様々な声
「コンビニ富士」問題は、海外でも大きな反響を呼んでいる。景観遮断や訪日観光客のマナー違反をめぐり、ネットで様々な声が上がった。
ある読者は「インスタグラムの影響で、偶然にも観光名所になってしまった。損害賠償を求めて提訴できないだろうか」とコメント。意図しない集客効果への一例との指摘もあった。
このほか、富士山の見える場所は他にもあるはずだと主張する人も。「あの辺りならどこからでも見えるだろう。別の撮影スポットを探せばいい」「ほんの5分走れば、同じ光景が望めるローソンが見つかる」といった助言も見られた。
「コンビニ富士」をめぐるメディアの過熱ぶりに苦言を呈する者もいた。「現地の混乱に拍車をかけている」「から騒ぎしている」との指摘もある。
国際的な影響力を持つSNSによって想定外の集客が起きてしまった「コンビニ富士」問題。日本政府は2030年に訪日外国人数6千万人を目指す方針を掲げるが、こうした観光公害は一部地域で地域の暮らしに影響を及ぼしており、インバウンドの課題を浮き彫りにした。
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