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「選択的夫婦別姓」に懸念 「旧姓の通称使用拡大を求める意見書」を熊本県議会が可決

2025/03/21
更新: 2025/03/21

2025年3月19日、熊本県議会において「旧姓の通称使用を拡大する法制度の創設を求める意見書」が賛成多数で可決された。この意見書は、自民党と参政党が共同で提出し、維新の会や無所属議員も賛成に加わった。一方、立憲民主党、公明党、新社会党は反対の立場を取った。

意見書の背景と目的

意見書では、選択的夫婦別姓制度が現国会で議論されている現状を踏まえつつ、子どもの姓に関する課題や家族の一体感への影響について懸念を示している。具体的には以下の問題点が指摘されている。

  • 別姓家庭において、子どもが父母いずれとも異なる姓を持つ「親子別姓」となる可能性。
  • 現行戸籍法に基づき出生後14日以内に氏名を届け出なければならないため、夫婦間で協議が整わない場合、無戸籍児となるリスク。
  • 家族の絆や子どもの福祉、家庭の一体感への配慮が不足しているとの指摘。

また、日本独自の夫婦同姓制度については、その歴史や文化的背景から尊重されるべきだとしつつも、現代社会における女性の社会進出や働く女性の多様なニーズに対応する必要性を訴えている。平成24年から令和4年までの10年間で約370万人増加した就業者数を背景に、婚姻後も旧姓を使用したいという声が増加していることが挙げられている。

さらに、第5次男女共同参画基本計画(令和2年閣議決定)では婚姻による改姓で不利益を被らないよう旧姓の通称使用拡大が明記されているものの、法律整備が十分ではなく、民間資格や金融機関手続きにおける不便さが残っている点も問題視されている。

意見書で求められた具体的措置

意見書では以下の具体的な措置を国に要望している。

  1.  旧姓の通称使用拡大に伴う課題解決のため、旧姓使用を拡充する法制度の創設。
  2.  国民の認識や見解を正確に把握するため、専門家委員会による調査・分析を実施し、とりわけ子どもへの影響について慎重な検討を行うこと。

これらは家族の一体感や子どもの福祉を守りつつ、女性の社会進出を支援する現実的な制度整備を目指した内容となっている。

賛否の分かれた議論

賛成派である自民党や参政党は、「選択的夫婦別姓制度」による親子別姓や無戸籍児問題など家族制度への影響を懸念し、現行制度を維持しつつ通称使用拡大による柔軟な対応が必要だと主張した。また、日本独自の夫婦同姓制度も歴史や文化として尊重すべきだとの立場を示している。

また、参政党の髙井千歳議員は賛成討論の中で、「そもそも今、多くの国民が選択的夫婦別姓制度を望んでいるのかは疑問が残るところだ。令和3年12月の内閣府による『選択的夫婦別姓制度を導入することについての意識調査』によると『夫婦同姓維持』が27%、『現在の制度である夫婦同姓制度を維持した上で、旧姓の通称使用についての法制度を設けた方がよい』が42%、合計69%の方が夫婦同姓を支持している。一方で『夫婦別姓導入』は約29%に留まっている」と紹介し、国民の多くが選択的夫婦別姓を望んでいるという言説に疑問を呈した。

さらに、日本の安定した社会の基礎となっている戸籍制度を守る上でも重要であるとして次のように述べた。「選択的夫婦別姓制度の導入は将来的に日本の戸籍制度の変質を招く可能性がある。専門家の指摘によれば、現行の戸籍制度では夫婦別姓に対応ができず、制度が導入されれば将来的に戸籍制度そのものが崩壊するリスクがあるという。我が国の戸籍制度は世界でも稀であり、身分の法的安定性を確保する重要な役割を果たしている。治安や社会全体の安定という面においても慎重に議論すべきだ」。

一方で反対派である立憲民主連合の西聖一議員は反対討論の中で、「通称使用拡大では根本的な問題解決にはならない」として選択的夫婦別姓制度導入を支持する立場から反対した。「通称使用だけでは夫婦別姓を望む人々の声に十分応えられない」と主張し、より抜本的な法改正が必要だと訴えた。

今後の展望

熊本県議会で可決されたこの意見書は、国会への提出を通じて全国的な議論を促すことが期待されている。選択的夫婦別姓制度については依然として活発な議論が続いており、この意見書はその一環として注目されている。地方議会から挙げられた声が国政にどこまで影響を与えるかが今後の焦点となるだろう。

大紀元日本の記者。東京を拠点に活動。主に社会面を担当。その他、政治・経済等幅広く執筆。