FRB、「インフレリスク」持続で金利据え置き
金融政策当局者らが、中銀の2%のインフレ目標に向けて「さらなる進展が見られない」との見方を示したため、連邦準備制度理事会(FRB)は金利を23年ぶりの高水準に据え置いた。
FRB関係者らは、最大雇用と物価安定という二重の責務を達成することに対するリスクが、過去1年間で、より良いバランスに移行していると指摘した。しかし、経済の見通しには不確実性が残り、政策を決定する連邦公開市場委員会(FOMC)はインフレのリスクに対して非常に警戒している。
今のところ、FOMCのメンバーは、インフレ率が持続的に2%に向かっているという確信が得られるまで、「目標レンジを引き下げることは、適切ではない」と考えている。
声明文では、「委員会は、経済見通しに関する情報がもたらす影響を監視し続ける。目標達成を妨げるようなリスクが出現した場合、委員会は金融政策のスタンスを適宜調整する用意がある」と述べている。
FRBはまた、国債の月間削減上限額を600億ドル(約9兆2721億円)から250億ドル(約3兆8633億円)に引き下げることで、保有証券の削減ペースを減速し始めると発表した。エージェンシー債(政府系機関により発行される債券)とエージェンシー住宅ローン担保証券(住宅ローンの元本や利子の返済資金を裏付けとして発行された証券)については、毎月350億ドル(約5兆3616億 円)のテーパリング(量的緩和策による金融資産の買い入れ額を順次減らしていくことを指す)を維持する。
6月から実行する。
「政策は依然として制限的」
市場アナリストにとってこの結果は予想通りだった。投資家たちは、連邦準備制度がこれから数か月で金融政策を引き締めるのか、緩和するのかに主眼を置いている。
バンクレート・ドット・コムの首席金融アナリスト、グレッグ・マクブライド氏は、FRB(米国の中央銀行)が利下げするタイミングは「無期限の保有パターンにある」と語った。
同氏は「FRBの声明で、2%のインフレ目標に向けた近月の進展の欠如が明確に指摘されました。この点を声明の冒頭で強調することは、利上げはすぐには行われないというメッセージと同じだ」と述べた
FRBのパウエル議長は記者団に、現在の政策金利は「依然として抑制的」であり、労働市場を含む経済の需要に影響を与えていると述べた。
「われわれは1、2か月のデータに基づいて反応することは望ましくないが、四半期という期間を通じてのデータであれば、それに基づいて判断するのは妥当だと考えている」。
パウエル議長は、次の政策変更が金利引き上げになるとは考えていないが、金利をより長期間高く維持する必要があるかもしれないという経済の見通しを検討している。
「次に金利が上がるとは思えない。上がる可能性は低いと言える」と述べた。
この発言は米国株の急騰に火をつけた。
FRB議長の発言中、主要株価指数は1.1%も上昇した。
米国債利回りはほぼ全面的に低下し、指標となる10年債利回りは4.64%を割り込んだ。年債利回りは5%を割り込み、30年債利回りは4.74%を下回った。
通貨バスケット(自国の通貨を複数の外貨に連動したレートにする固定相場制)に対するドルの強さを示す米ドル指数は、このニュースを受けて106.00の大台を割り込んだ。
パウエル議長は、インフレ率の継続的な低下を予想しているが、その自信は以前ほど強くない。
「私の予想では、今年中にインフレ率は再び低下すると見ている(が、)その自信は、これまで見てきたデータのため、以前より低下している」と述べた。
パウエル議長は、成長率は堅調で、インフレ率は鈍化し、失業率は低いとして、スタグフレーション(景気が停滞しているにもかかわらず、物価が持続的に上昇すること)懸念を否定した。
スタグフレーションとは、成長率の停滞、インフレ率の上昇、失業率の上昇の組み合わせである。
Sit Investment Associatesのシニア・ポートフォリオ・マネージャー兼シニア・バイス・プレジデントであるブライス・ドティ氏は、2日間の会合でより注目すべきニュースは、バランスシート縮小キャンペーン(バランスシート縮小とは、各国中央銀行が金融緩和フェーズで購入した国債や社債などの資産を売却し、市場に流通するお金を減らすこと)の緩和決定だと述べた。
同氏は、「より大きなニュースは、国債のバランスシート削減ペースが月600億ドルから月250億ドルへと減速したことだろう。問題は、この変化がFRBが懸念している流動性ストレスによるものかどうかだ」と指摘した。
FRBのバランスシート縮小は、市場予想より50億ドル(約7610億 円)ほど大きい。
インフレを注意深く監視
過去1か月間、金融政策担当者たちは利下げを急ぐ必要はほとんどないことを国民に伝えてきた。米国経済は依然として成長し、雇用を生み出しているため、FRBの金利設定を担当するFOMCのメンバーらが、方向転換するのに十分な信頼を得るまで待つ余裕がある。
パウエル氏は先月「FOMCでは、インフレが持続的に2%に向かっていると、より確信できるようになるまで、政策緩和は適切ではないと述べた。最近のデータは明らかに我々にその自信を与えず、むしろその自信を持つには予想よりも時間がかかることを示してる」と述べた。
この政策の方向性は一転した。
2023年12月には、連邦準備制度理事会の議長が、大学での発言から数日後に利下げの可能性を示唆し、市場の予想を覆した。
2023年12月と翌年3月に発表された経済見通しの概要によると、金融機関は、利率を3回引き下げる可能性が示唆されていた。
しかし、CME Fed Watch Toolによると、今年後半には四半期ごとに1回または2回の金利引き下げが見込まれているが、これは主要なインフレ指標が再び加速しているためだ。
Thornburg Investment Managementのポートフォリオマネージャーであるジェフ・クリンゲルホーファー氏は、金利引き下げを強調することは、間違いだったと主張している。今年FRBが金利を1回しか引き下げないと考えている。
同氏は「FRBが積極的に利下げを行うことはないだろうというのが、私の長年の考えだった」と述べた。
「FRBが、インフレ率2%を突破する前に、利下げに踏み切ると言ったとき、私は適応せざるを得なかった。今日の課題は、インフレ率が持続的に高く、しかも加速していることだ。
クリーブランド連銀のインフレ・ナウキャスティング・モデルによれば、次回の消費者物価指数報告で、年間インフレ率は3.5%で据え置かれる。これはFRBの目標インフレ率2%を大きく上回る。
同地域の中央銀行は、FRBが推奨するインフレ指標の個人消費支出価格指数も、2.7%で横ばいになると予測している。
投資家は利上げに大きな重きを置いていないが、金利は長期化し、金融政策決定者は、引き締め政策が機能するのを待つだろうと予想されている。
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