米連邦準備制度理事会(FRB)は3月の会合で、2回連続となる金利据え置きを決定し、政策金利を4.25~4.5%に維持した。市場の予想通りの結果となった。
FRBは、インフレの動向を慎重に見極め、新政権の政策が経済に与える影響を注視するため、当面の間、高金利を維持する方針を示している。
最新の経済指標では、景気の拡大が続き、労働市場も堅調に推移していることが示されている。
FRBの見通しと経済予測
連邦公開市場委員会(FOMC)は18、19日に会合を開き、政策金利を維持する方針を決定した。
声明では、「最大限の雇用と2%のインフレ率を長期的に実現することを目指す」と強調し、「経済の先行きには不確実性があり、金融政策の判断には慎重な対応が求められる」との認識を示した。
最新の経済見通しによると、FRBは年内の利下げを想定しており、年末時点の政策金利の中央値は3.9%と予測されている。ただし、経済成長率の見通しは下方修正され、2024年のGDP成長率を前回予測の2.1%からは1.7%に引き下げた。さらに、2026年と2027年の成長率予測も1.8%へと下方修正された。
また、失業率は4.4%(従来予測の4.3%から上昇)と見込まれている。一方、インフレ率は上方修正され、FRBが重視する個人消費支出(PCE)価格指数は従来の2.5%から2.7%まで上昇見通しだ。
変動の大きいエネルギーと食品価格を除いたコアPCEは2.5%から2.8%に修正された。
Bankrateのチーフアナリスト、グレッグ・マクブライド氏は、「FRBは金利を据え置いたが、経済の先行きが不透明なため、成長率の鈍化、インフレの上昇、慎重な利下げが予想される」と指摘した。また、「12月時点では2回の利下げが見込まれていたが、1回またはゼロの可能性を想定する声も増えている」と述べた。
バランスシート縮小のペースを緩和
FRBは今回の決定にあわせ、量的引き締めのペースを緩める方針を示した。
毎月250億ドルだった米国債の償還額を50億ドルに縮小、つまり今後、毎月50億ドルの米国債を償還する形でバランスシートを縮小する。これは従来の250億ドルから縮小幅を抑えた形となる。ただし、住宅ローン担保証券の償還は月850億ドルの上限を維持する。この方針は4月から実施される。
RBは2022年3月から量的引き締めを進め、パンデミック期に膨らんだバランスシートを約1.8兆ドル削減し、現在は約6.9兆ドルとなっている。
今回の決定に関しては、FRBのクリストファー・ウォラー理事が唯一の反対票を投じた。ウォラー氏は、政策金利の据え置きには賛成したものの、バランスシート縮小のペースを維持すべきとの立場を取った。
パウエル議長、景気後退の可能性を否定
今回の決定を受け、金融市場は上昇。ダウ工業株30種平均は400ポイント以上(1%超)、ナスダック総合指数は300ポイント近く(1.5%)、S&P500指数も1%超の上昇を記録した。
一部の経済予測では景気後退(リセッション)の可能性が高まっているものの、パウエル議長は「景気の大幅な悪化は考えにくい」との見解を示した。
「FRBとしてそのような予測は行っていない」と述べたうえで、「外部の予測を見れば、リセッションの可能性がやや高まっているものの、依然として比較的低い水準にある」と説明した。
関税のインフレへに及ぼす影響
会見では関税の影響が大きな焦点となった。ここ2か月間で消費者のインフレ期待が急上昇しており、パウエル議長は「かなりの部分が関税によるものだ」と指摘した。
また、消費者の景況感について、「物価上昇の影響を受けている」としながらも、「経済そのものは健全に推移している」との見解を示した。
「現在、消費者の景況感が低下しているが、新政権の政策変更が影響している可能性がある」と述べ、政策の大きな転換が不安要因になっているとの見方を示した。
今後の課題として、関税によるインフレとその他の要因によるインフレをどう区別するかが挙げられる。パウエル議長は、「今後数か月にわたり、関税の影響を詳しく分析する必要がある」と述べた。しかし、「現時点では、経済指標に大きな影響が表れるにはまだ早すぎる」との認識を示した。
スタグフレーションの懸念とFRBの対応
3月の金融政策会合を前に、多くのFRB当局者は「金利を高水準で長期間維持する」との方針を繰り返し発信していた。
パウエル議長も、米国の金融政策が直面する課題をたびたび説明している。
FRBが金融引き締めを早急に緩和すれば、インフレが再燃するリスクがある。一方で、高金利を長期間維持すれば、経済成長の鈍化を招く恐れがある。
パウエル氏は今月上旬、米国金融政策フォーラムで講演し、利下げを急ぐ必要はないとの考えを改めて示した。
「経済も金融政策も健全な状態にあるため、FRBは慎重に対応できる」とし、インフレのさらなる鈍化と、トランプ政権の政策変更による影響を見極めることが必要だと強調した。
さらに、質疑応答では「慎重でいることのコストは極めて低い」と発言。「現在の経済は健全だ。FRBが今すぐ何かをする必要はない。我々は待つことができるし、待つべきだ」と述べた。
スタグフレーションの懸念は杞憂か
高インフレ・失業率の上昇・成長の鈍化が同時に進行する「スタグフレーション」への懸念が、ウォール街や米国経済界で広がっている。
1970年代のような経済停滞を警戒する声もあるが、パウエル議長は、その可能性は低いと否定している。
2月の消費者物価指数(CPI)と生産者物価指数(PPI)は改善傾向を示したものの、インフレ率は依然としてFRBの目標である2%を上回っている。
一方、クリーブランド連邦準備銀行の予測では、来月のインフレ指標はさらに改善すると予想されている。
また、労働市場は安定しており、目立った変動はない。
パウエル議長は、「1970年代型のスタグフレーションとは程遠い」と強調した。
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