ドイツのキール世界経済研究所が10日に発表した調査によると、中国共産党政権はグリーン・テクノロジー産業において、主導的な地位を占める企て、グリーンテクノロジー分野に多額の補助金を出している。電気自動車(EV)メーカーのBYD(比亜迪)は中国共産党から34億ユーロ(約5586億円)の直接補助金をもらった。
時事評論家・唐靖遠氏はエポックタイムズに対し、莫大な補助金を使って海外でのダンピングを支援するのは、中共(中国共産党)の長年にわたる戦略だと語った。
BYDの電気バスは2015年から日本市場に参入している。2023年10月までに27都道府県にEVバス計153台を納入した。主に企業の送迎用や路線バスに使われている。日本自動車工業会(自工会)が1月31日に発表したデータによると、2023年、中国の自動車輸出台数は前年比58%増の491万台だった。日本を抜いて世界一になった。
著者らは、BYDに対する国からの直接補助金は、2020年までに約2億2000万ユーロ(約344億1263万円)に達しており、2022年には21億ユーロ(約3450億円)にまで増加したと指摘している。BYDの年次報告によると、2018~22年にかけて、政府から同社への直接補助金は34億ユーロに上った。これはBYDの技術成長、生産能力と競合力の向上につながると指摘されている。
膨大な補助金で市場シェア拡大
中国共産党政府は国内産業、特に電動モビリティや風力発電などグリーンテクノロジー分野に多額の補助金を出している。報告書では、中国の産業補助金はEUや経済協力開発機構(OECD)諸国の3倍から9倍に及んでいる。
報告書の共著者の一人、ダーク・ドーセ氏は、2022年には上場企業の99%以上が政府から直接補助金を受けていると指摘している。補助金は、主要技術の市場競争を促進するために戦略的に使われることが多い。
重要原材料への優遇アクセス、強制的な技術移転、公共調達や行政手続きにおける優遇措置など中国共産党による国家支援策と相まって、中国企業は様々なグリーン技術分野で急速に拡大し、中国市場を支配し、海外に進出している。
中国の風力発電機大手、明陽智慧能源集団(ミンヤン)やゴールドウィングも政府の補助金から大きな恩恵を受けている。ミンヤンの場合、補助金は2020年の2千万ユーロ(約32億8839万円)から2022年には5200万ユーロ(約85億4487万円)に増加している。
規制強化を求める声
昨年10月4日、欧州委員会は安い中国製EVに対し、反補助金調査を開始した。
時事評論家・唐靖遠氏はエポックタイムズに対し、莫大な補助金を使って海外でのダンピングを支援するのは、中共の長年にわたる戦略だと語った。大規模なダンピングによって市場を独占し、依存関係を作り出すことで、中共は政治的な影響力を強め、より大きな経済的利益を得ることができる。
フランスをはじめとする国々が中国製製品の流入が経済を脅かしているとして、中国との貿易バランスを見直すよう求めている。BYD、NIOやジーリー汽車など中国製自動車がヨーロッパで事業を拡大している一方で、テスラやフォルクスワーゲンといった欧米のメーカーは、熾烈な価格競争の中で市場シェアを失いつつある。
EUは中国共産党に対抗するため、400億ユーロ(約6兆5359億円)のイノベーション基金を設立した。 昨年10月、欧州委員会は、BYD、上海汽車集団、ジーリーといった企業に対する中国共産党の援助が、中国産業に不当な優位性を与えていないかどうかの調査を開始した。 最初の関税措置は、早ければ今年7月にも実施される見込みだ。
一方、中共の王文濤商務相は7日、米欧で高まる補助金批判に反論し、中国EV産業の成長は、技術革新やサプライチェーンの整備に伴うものと主張した。
報告書の著者らは、中国からのEV輸入に対して最近始まった反補助金措置の中で、EUに特に悪影響を及ぼしている補助金の撤廃を促すよう、中国(共産党)政府と交渉に乗り出すべきだと提言している。
中国が現在経済的に弱い立場にあり、グリーンテクノロジー分野での強みと米国との緊張関係を踏まえると、交渉が成功する現実的な可能性があると著者は見ている。
ドーセ氏は「来週の首相の訪中は、そのような交渉への道を開く絶好の機会となる」と述べた。
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