中国の過剰生産、重要産業のサプライチェーンへの脅威

2024/04/08
更新: 2024/04/08

中国系企業による電気自動車(EV)などの格安販売が、世界のサプライチェーンの安定に脅威をもたらしている。3月28日、中国のスマートフォン大手の小米(シャオミ)は同社初のEV「SU7」の発売を発表した。

4日に中国を訪問しているジャネット・イエレン米財務長官は、中国当局に対し過剰生産とEVなどの格安販売によるサプライチェーンへの脅威について協議し、中国当局に対して必要な措置を取るよう促すと表明。欧州の環境団体である欧州運輸・環境連盟(T&E)も、中国製EVが世界中で安価で販売されていると指摘する報告書を発表した。米通商代表部のキャサリン・タイ代表は、中共が非市場的手段で世界の重要産業チェーンを支配しようとしていると最新の年次報告書で述べた。

米財務長官、中国の過剰生産問題を再提起

先月27日、ジャネット・イエレン氏は中共に対し過剰生産問題を再度提起すると述べた。ジョージア州所在の太陽光電池メーカー、サニーバの工場での講演で、中共の輸出戦略が太陽光発電、EV、リチウムイオンバッテリー業界のサプライチェーンの安定に脅威をもたらしていると警告した。

イエレン氏は、中国の過剰生産能力が世界の市場に歪みをもたらし、アメリカや世界中の企業と労働者に損害を与えており、サプライチェーンの集中化が経済の適応力に悪影響を及ぼしていると述べた。

そのほか、中共のグリーンエネルギーへの投資と、過去の鋼鉄やアルミニウム産業への過剰投資を比較し、過剰投資が世界に影響を与えていると指摘。イエレン氏は、「過去に中国側に生産能力過剰の問題を提起したが、次回訪中時にはこの問題を重点的に議論する」と表明していた。

イエレン氏は、「中国当局の官僚に圧力をかけ、問題解決に向けた措置を取るよう促す」と強調した。

イエレン氏は5日間の訪中日程で北京と広州を訪れる予定で、今回で訪中は2回目だ。

中国経済は、新型コロナウイルス流行後に急激に減速。現在、中共は「経済の高品質発展」を目指し、経済成長を促進しようとしているが、中国の輸出における新たな三つの代表的製品である電気自動車、太陽電池、リチウム電池の「新三様」は国際市場に問題を引き起こしている。

中国海関総署が発表した昨年の対外貿易の状況によると、電動自動車、太陽光パネル、リチウム電池の総輸出額が1.06兆元(約22.26兆円)に達し、前年比29.9%の増加を記録。

このうち、リチウム電池の輸出額は650.07億ドル(約9.8兆円)で、前年比27.8%増の歴史的な高水準を更新した。アメリカが最大の市場である。太陽光パネルの輸出は前年比38.5%増加し、卸売価格はほぼ半減した。

米在住の経済学者・李恒青氏は最近大紀元に対し、中国経済は市場非依存の中共の統制であるため、政府が介入し、「重大な過剰生産能力と製品の大量在庫」が発生したとの見方を示した。中国当局が提唱する「一帯一路」戦略の目的の一つは、「国内の過剰な生産能力と在庫製品を海外に輸出し、市場を転換すること」である。

李氏は、中国が市場メカニズムに従う必要があると指摘し、「そうすれば、中国製品の価格も上昇し、国際市場で需供の新たなバランスを見つけることができる」と述べたものの、現在の中国の産業政策を見る限り、「それは難しい」と断じた。

小米(シャオミ)がEV市場参入、テスラに挑戦

イエレン氏が講演した翌日、3月28日、中国のスマホ企業シャオミがEV「SU7」の発売を発表。「SU7」の販売価格は21.59万元(約453.4万円)で、市場予想を下回った。

発表会では、シャオミCEO雷軍氏がSU7がテスラModel3を性能で上回ると主張。ただし、提示されたデータの真実性や車の実際の性能、信頼性については今後の検証を要する。

この発表会は大きな注目を集め、中国のSNSで話題となった。しかし、シャオミとテスラのEVを比較して発表したことはテスラへの公的挑戦と見なされている。

また、このような低価格での販売は市場のルールを破る行為とも捉えられている。

今年初め、テスラのCEOイーロン・マスク氏は、中国の自動車企業が他のほとんどの自動車企業を「破壊」すると指摘したうえで、各国が貿易障壁を強化すべきだと警告した。

EU、中国製EV販売の国際的な拡大に警鐘

欧州の環境団体、欧州運輸・環境連盟(T&E)が先月27日に発表した報告書によると、今年には中国製EVが欧州市場の25%以上を占め、前年比で5%増加する見込みだ。

BYDなど中国EVブランドの世界市場への拡大と価格競争の影響で、今年の欧州における中国製EVのシェアは25%を超えると予測されている。昨年、欧州で販売されたEVのうち、中国製は19.5%を占め、フランスとスペインでは約3分の1に達している。

調査によると、関税増加などのコストを消費者に転嫁すると、中国製中型セダンやSUVは欧州製より高くなり、中国自動車メーカーは現地生産を増やす可能性がある。

欧州運輸・環境連盟の車両・eモビリティ担当シニアディレクターを務めるジュリア・ポリスカノバ氏は、関税による生産の現地化は雇用創出などのメリットがあるとしつつ、長期的には欧州の伝統的自動車メーカーを保護できないため、業界は変化に備える必要があると指摘した。

米、中共の貿易戦略に焦点

先月29日、米通商代表部(USTR)のキャサリン・タイ代表は「2024年外国貿易障壁報告書」を公表した。報告書では、中国共産党が重要産業で市場を超えた目標を設定し、世界の主要産業チェーンにおいて主導的な立場に立つことを目指していることを強調している。

今年の報告書では、59の市場の貿易障壁が挙げられ、中国企業の貿易障壁に関する記述は44ページに及んでいる。2020年1月に第一段階の「米中経済・貿易協定」が署名されたが、協定では「中国当局により国有化された非市場的な貿易体系は変えられず、またアメリカ経済やアメリカの農民、牧場主、労働者、企業への悪影響を軽減させなかった」と書かれている。

中国の先進製造業やハイテク産業において当居の介入によってのみ達成可能な生産量と市場シェアを追求しているとともに、中共は非市場的手法と産業計画によって世界の重要産業を主導しようとする狙いがある。

報告書では、「中国当局は中国企業に対し大きく介入し、規制などを行っており、輸入品や外国製品、外国のサービス提供者の市場参入を制限している」と指摘している。

報告書では、製造業の振興戦略「中国製造2025」について言及し、この戦略が外国企業を犠牲にして10の戦略的分野の国際的な市場で中国企業のシェア拡大を目指していると指摘されている。

中共が用いる非市場的手法は、外国企業やその技術、製品、サービスを制限または利用することが多い。

しかし、このような行為は市場の歪みを引き起こし、目標とする産業での過剰生産を悪化させ、アメリカやその同盟国、パートナーの利益に長期的な損害を与える可能性がある。

米通商代表事務所は、鋼鉄やアルミニウム、太陽光産業の現状がこれを明確に示していると述べている。