今月11日に予定されている日米比首脳会談で、南シナ海における3か国による共同海上パトロールが発表される見通しだ。フィリピンと米国は既に定期的な共同パトロールを実施しているが、海上自衛隊が参加するのは初めて。中国共産党の南シナ海での存在感が高まる中、日米比の連携を強化し、地域の安全保障体制を構築する狙いがある。
共同パトロールの詳細は明らかになっていないが、中国共産党の強圧的な行動を容認しないことを示す「力の誇示」になるとみられている。最近では、中国海警局の船舶が南シナ海の一部の係争礁付近でフィリピン船に放水を行うなど、挑発的な行動を強めている。今回の首脳会談では、こうした中国の戦術への対応が主要議題の一つとなる。
ホワイトハウスのカリーヌ・ジャン=ピエール報道官は、今回の日米比首脳会談について、「包括的な経済成長と新興技術の促進、クリーンエネルギー供給網と気候協力の推進、インド太平洋地域と世界の平和と安全の促進について議論する」と述べた。一部メディアによると、3か国は全般的な安全保障協力を深化させ、昨年8月に行われた米国、日本、韓国の首脳会談と同レベルにまで引き上げるという。
フィリピン国家安全保障会議の次長を務めるジョナサン・マラヤ氏は先月、「多くの国が係争水域でフィリピンとの共同パトロールに関心を示している」と述べた。オーストラリアもフィリピンとの共同パトロールを実施している。
対中安保政策強化のため、日本は東南アジアへの支援も強化している。今年2月、インドネシア、マレーシア、フィリピン、ベトナムの東南アジア4か国に対し、向こう10年間の海上安全保障支援計画を準備している。この計画では、ドローンやレーダーシステム、巡視船などの提供を予定しており、各国の能力構築を支援する方針だ。
日本は昨年12月の東南アジア諸国連合(ASEAN)との首脳会談でも海上安全保障協力を重要課題として取り上げており、マレーシアとの間で海上機材や救助艇の提供に関する協定を結んだ。またインドネシアに対しても、最大90億5千万円規模の大型巡視船の供与を決定している。ベトナムとは2020年に、6隻の海上巡視船建造のための3億4800万ドル(約516億8572万円)の借款契約に合意するなど、日本のASEAN支援は多岐にわたる。
日本は南シナ海での中国の動きを東シナ海の離島周辺情勢と関連づけてとらえており、東南アジア諸国が南シナ海で中国に対抗できるよう支援することで、地域全体の安定を図ろうとしている。
今回の日米比による共同パトロールについて、中国共産党は「同盟国を使って中国を弱体化させようとする米国の意図の最新の事例だ」と反発している。中国人民解放軍の南部戦区は最近、南シナ海で実戦訓練を実施。訓練の目標は「中国の(領域と主張する)海域で中国を脅かす武装漁船」やフィリピン沿岸警備隊の船舶だったと伝えられている。
地域の緊張がさらに高まることが懸念される中、日米を中心とした連携の行方が注目される。スタンフォード大学のゴルディアンノットセンターの海上安全保障アナリスト、レイ・パウエル氏は中国共産党の戦略について、「相手が諦めるまでエスカレートさせること。戦争のドラムを叩くことで相手を退かせることを意図している」と米ラジオ・フリー・アジアの取材に答えた。いっぽう、脅威に直面するフィリピンは、同じ考えを持つ国々とのパートナーシップを求めて外交を展開していると分析した。
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。