中国の不動産危機が深刻化 破綻と金融危機への懸念

2024/04/02
更新: 2024/04/02

中国の不動産市場は、恒大集団の破産をはじめとする一連の企業の経済的な苦境により、未曾有の危機に直面している。

中国共産党(中共)が設定した5%の経済成長目標達成は、債務の隠蔽や移転が金融業界に大きな衝撃を与える中で、一層困難な状況にある。

この記事では、中国不動産危機の現状と、これが中国経済に及ぼす潜在的な影響について詳しく探る。

中国共産党の中央銀行である中国人民銀行総裁・潘功勝氏は、不動産市場が回復しつつあり、市場の変動が金融に与える影響は限定的であると述べた。

しかし、専門家たちは、潘功勝総裁の発言を単なる信頼回復の試みと見ている。中国の不動産債務危機はまだ解決されておらず、債務が隠されたり他へ移されたりしており、銀行や金融業界に衝撃を与えている。

中国共産党が今年のGDP成長率目標を5%に設定しているものの、実際には成長に必要な4つの要素が揃っておらず、この目標の達成は困難である。

中国の不動産危機が深刻化

最近、中国の不動産会社が次々と年次報告を発表している。国有企業のトップである万科企業(万科)は3月28日に、前年比で46.39%減少した昨年の純利益を報告した。

以前、国際信用評価機関ムーディーズが万科の格付けを「投資適格」から「投資不適格」に引き下げた。

民間不動産大手の一つである碧桂園は、本来3月28日に昨年の業績を発表する予定だったが、発表せず、取締役会も延期され、香港株式市場での株が4月2日から取引停止となる可能性がある。

恒大や碧桂園に続き、遠洋集団も昨年、210億元(約4410億円)を超える純損失を報告した。昨年8月には、ドル建て債券がデフォルトの危機にあることを公表した。

他の主要不動産企業も損失を報告している。富力地産は201億元(約4200億円)、融創中国は79億元(約1659億円)以上、旭輝控股は89億元(約1869億円)以上、華僑城は64億元(約1344億円)以上、雅居楽集団は138億元(約2898億円)以上、正栄地産集団は84億元(約1764億円)以上、中駿集団は79億元(約1659億円)以上の純損失を記録した。

2020年に中国共産党が制定した「3つのレッドライン」以降、多くの不動産大手が負債超過に陥り、破綻した。特に不動産企業のトップである恒大集団は、2兆元(約42兆円)の負債を抱え、今年1月に香港高等法院から破産手続きを命じられた。

中国共産党指導部は最近、不動産開発業者向け融資のホワイトリスト作成、住宅ローン利率の引き下げ、不動産開発業者への融資制限撤廃などの措置を講じたが、状況の改善には至っていない。

公式データによると、今年の最初の2か月で、新築住宅の販売額は前年同期比32.7%減、販売面積は24.8%減、不動産開発業者の新規着工面積は29.7%減少した。

債務移転と金融危機の恐れ

しかし、中国共産党の官僚たちは依然として強気で話している。中央銀行の潘功勝総裁は最近の中国発展高層フォーラムで、不動産市場にはポジティブな兆候が見られ、長期的な健全で安定した発展のための強固な基盤があると述べた。

しかし、分析によると、中国共産党指導部の多くの取り組みは不動産債務危機を実際には解決しておらず、債務を隠したり移動させたりしているだけだ。

台湾東華大学新経済政策研究センター主任の陳松興氏は、実際には中央銀行の潘総裁が言うほど理想的ではないと分析した。

陳松興氏は、過去の恒大や碧桂園から現在の万科に至るまで、基本的に状況は良くないと考えており、その過程で中小規模の開発業者も次々と倒産していると述べた。

陳松興氏は、問題の主な原因は不動産開発業者の債務が中国のGDPを大きく上回っていることにあると指摘し、「だから、それを救うのは非常に難しい」と述べた。

また中国の銀行は一部の地方政府の債務を引き受けており、実質的に不良資産を銀行に移転している。

これらの債務が不良債権として認識される必要はないかもしれないが、銀行を「注目すべきカテゴリー」に置き、一部の資金を消費して認識の準備をさせることになると述べた。

「これは銀行の貸出能力に影響を及ぼし、銀行の利益にも大きな打撃を与える。中国銀行の純利息差(NIM)が約1.5%で、2%未満は収益性の低下と銀行の健全な運営への影響を意味する」

陳松興氏は「中国共産党の最近の取り組みは、不動産開発業者の債務問題を解決するのではなく、隠蔽や移転にある」と指摘する。

不動産危機、銀行業への衝撃 中国共産党の債務による面子の保持

潘総裁は、不動産市場の変動が金融システムに限定的な影響を与えると述べ、中国の金融システムは安定しており、金融機関は健全でリスク耐性が高いとも言った。

しかし、不動産企業の倒産は金融業に衝撃を与えている。ブルームバーグが3月27日に報じたように、中国の不動産危機が国有銀行の貸借対照表を侵食し、不良貸出率が上昇中である。

中国交通銀行のデータによると、不動産の不良貸出率は前年同期の2.8%から昨年末には4.99%に上昇した。遅延抵当貸出の残高は減少したものの、注目される貸出は23%に増加し、98億8千元(約2051億円)に達した。

中国工商銀行の住宅ローン不良融資は9.6%増加し、278億元(約5820億円)に達した。

最近、中国のいくつかの銀行は損失を報告している。

光大銀行は営業収益が前年比3.92%減、純利益が8.80%減少した。中原銀行の昨年の純利益は16%減少、東莞農商銀行は12%減少、中信銀行は14年ぶりに収益減、広州銀行は4年連続で純利益が減少、浦発銀行は3年連続で業績が下降した。

陳松興氏は、3月初に行われた李強首相の政府業務報告で、2024年の赤字率を3%に設定したことに対し、この数字には外部からの強い疑問があると述べた。

米国のシンクタンク、戦略国際研究センター(CSIS)は、隠れた予算赤字を含めると、中国の赤字率がGDPの8%に達する可能性があると推定している。ニューヨークの研究機関「Rhodium Group」も、中国の赤字率は約7%から8%の間であると推算している。

陳松興氏は、「言い換えると、中国は実質的に借金で面子を保っているが、潘功勝氏は銀行長として(真実を話せないため)、よりポジティブな話をするしかない」と述べた。

経済成長に必要な4つの要素

潘功勝総裁は、中国経済が好転し続け、年間5%の成長目標を達成する能力があると述べている。

台湾の致理科技大学の国際貿易学部副教授、張弘遠氏は、中国共産党政府が発表する経済データに対する外部の疑念は高いと指摘している。これは、データの信頼性が前提とされているが、実際には数字を変更するだけで5%の経済成長が可能だからである。

張弘遠氏は、潘総裁が信頼を呼びかけ、会議に参加する外国企業幹部たちに中国の金融リスクがなくなったと信じさせ、資金を投じさせたいと考えているとし、「これが彼らの目的だ」と述べた。

しかし、所得の面から見れば、中国のGDPが5%成長するには、賃金、土地の賃貸料、資本の投資収益率、そして企業家の投資利益がすべて5%増加する必要があると考えている。

「つまり、これら4つの生産要素が全て5%成長しなければ、GDPが5%成長することはない」

張弘遠氏の話によると、現在の中国では、労働者の給料が下がり、多くの中古住宅価格が半減し、地代はマイナス成長を記録してい る。また、貸し借りの利率も引き続き下げられている。中国企業の経営状況も、生産者出荷価格指数や購買マネージャーの未来信頼指数を見ても、5%成長するほどの楽観はない。

程静
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