罪なき陳情者を「市中引き回し」に 時代錯誤な仕打ちに、沿道の市民から怒りの声=中国 重慶

2024/03/23
更新: 2024/03/23

中国共産党当局による長年にわたる強制的な土地徴用や家屋取り壊しなどで、国民の不満が沸騰している。

例えば、当局による不当な立ち退きに遭った市民のなかには陳情の道へ進む人も少なくないが、実際に陳情民となれば現地当局から目を付けられて弾圧され、辱められることになる。

ただし、陳情そのものは中国公民の正当な権利であり、いかなる違法性もない。

さて、中国における「市中引き回し(遊街示衆)」は、かつて清朝のころまで行われていた前近代的な蛮風である。

当時は、斬首によって処刑される罪人を車に乗せて市中を引き回し、群衆に「見せ物」として提供したあと、広場で公開処刑した。犯罪の抑止効果を狙うというより、民衆に見せるための娯楽に近い。清朝末期の辛亥革命前には、多くの革命家が同じように公開処刑された。

ところが、この「市中引き回し」は、近代以前の中国史のなかで終焉しなかった。

中国共産党による赤色革命のなかでは、むしろ刑事事件の罪人を対象とするのではなく、無辜の人民や粛清される党員を「反革命分子」と決めつけて大量に殺す手段として、しばしば用いられてきた。

最も残虐であったのは文化大革命期に、まだ10代の紅衛兵によって行われた、狂気のような「批闘(批判闘争)大会」である。以来、今日に至るまで、中国人の胸の奥底には、消えることのない烙印のような「市中引き回し」の残影が存在することになる。

このほど、重慶市で撮影されたある「市中引き回し」動画が、ネット上で物議を醸している。

動画の中で、車の中から下ろされたのは、囚人服(拘置所の服)を着せられ、後ろ手に手錠をかけられた複数の女性たちである。彼女たちは、当局者に引きつれられ、街中を歩かされる「見せ物」にされていた。

中国の現代版「市中引き回し」は、こうして21世紀にも存続していたのである。

(重慶市で実際にあった、陳情民の「市中引き回し」に関して伝えるNTD新唐人テレビの報道番組)

NTD新唐人テレビの記者が取材を行った結果、囚人服の女性たちは、刑事事件の犯人では全くなく、地元当局の不正を直訴した「陳情民」であることがわかった。

この「陳情者が市中引き回しにされる」様子を目撃した重慶市民は、清朝の頃のような物見高い人々ではなかった。罪なき民衆にこのような非道を行う警察に対して、激しい批判を浴びせたのである。

「陳情は罪ではない。それは公民としての合法的権益を守るためのものだ」「(警察らに対し)人権侵害だ」「(警察は)汚職する者を撲滅しろ」などと叫んでいる。

つまり、重慶市で「市中引き回し」を目にした一般市民は、囚人服を着せられ、街を歩かされる女性たちを擁護するとともに、その批判の矛先を、権力の手先になった警察と、それを命じた中共当局へ向けたのである。

NTDの取材に応じた複数の重慶の陳情民によると、街頭を練り歩かされた女性たちは政府による強制的な土地徴用と家屋の取り壊しに遭い、農地と家を失った重慶市の農民である。

彼女たちは陳情をしたために、当局によって拘束され「市中引き回し」という屈辱を受けた。同じく重慶の陳情者である孫さんは、次のように述べた。

「彼女たちは、何の罪も犯していない普通の農民だ。合法的な権利である陳情をしただけなのに、捕まえられて市中引き回しにされる。土地も家も奪われた。このような扱いを受けるなど、あんまりだ。我われは、本当に当局からいわれのない不当な扱いを受けているんだ」

統計によれば、中国では毎日平均500件の権利擁護のための抗議事件が起きている。このうち、強制的な取り壊しに関係する事例が6割を占める。

NTDの取材に応じた重慶の陳情民の孫さんと張さんも、いずれも土地や自宅の強制取り壊しに遭っている。政府から約束されていた補償金は、全くもらえていない。

ところで、それとは別件であるが、市民の家屋の「強制取り壊し」に関連して、以下のような動画が残されている。

場所の詳細は不明だが、ここは重機をつかった強制取り壊しの現場である。地元警察が出動して、取り壊しに反対する住民を遠ざけていた。

すると、建物を破壊する重機によって飛んだ「巨大な破片」が、1人の警官を直撃する事故が起きた。警官は死亡。飛んだ破片の大きさからして、おそらく即死であっただろう。

現場には一瞬、女性の悲鳴が響いた。しかし、その後で群衆から上がったのは「いいぞ!よくぞ当たった!(好!砸得好!)」という歓声と拍手であった。

中共の警官とはいえ、このような痛ましい事故で亡くなるのは気の毒としか言いようがない。喜ぶべき場面ではないのだが、民衆から上がったのが「歓声と拍手」であったところに、今の中国が抱える「重病のような実態」が見え隠れする。

中共の警官は今、民衆にそれほど憎まれているのだ。

時事評論家の李沐陽氏をはじめ、この関連動画をシェアしたユーザーはみな「これは現世報だ」と書いている。

「現世報(現世の報い)」とは、通常、前世において犯した悪行の多寡にしたがって、その人が現世で償うための報い、という意味だ。

ただし、この動画に関しては、少しニュアンスが異なっている。つまり現世において、中国共産党に従属して悪事をし過ぎたため、その罪はとても来世まで持ち越すことができずに「現世にあるうちに、返ってきた報いだ」と言うのだ。

悪魔が世界を統治している』の「おわりに」のなかに、次のような一節がある。

「共産党の解体は神の按排である。もし中国政府の指導者たちが共産党を自ら解体するのなら、平和でスムーズな移行期が与えられるだろう。将来、彼らは神から授けられた真の権威を得ることができる。しかし、もし彼らが頑固に解体を拒むなら、彼らは共産党と運命を共にし、最終的には堕ちていくだろう」

つまり、滅ぶことが神によって定められている共産党から、一刻も早く、完全に離脱できない者は、自身も必ず共産党とともに滅ぶことになる。

罪なき陳情民を捕まえて「市中引き回し」させた重慶の警官に、巨岩のような「現世報」が飛んでこない保証は、全くない。

李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!
鳥飼聡
二松学舎大院博士課程修了(文学修士)。高校教師などを経て、エポックタイムズ入社。中国の文化、歴史、社会関係の記事を中心に執筆・編集しています。