ロシアのウクライナ侵攻、最大教訓は「持久戦に耐えられるか」中共が準備=英研究

2024/02/19
更新: 2024/02/19

英国のシンクタンク、国際戦略研究所(IISS)は最新の報告書で、中国共産党は最近、ロシアウクライナの戦争から教訓を得て、未来のインド太平洋地域での戦争が長引く消耗戦になることを予測し、「持久戦」への準備を進めていると指摘した。

ロシアとウクライナの戦争が2年目に突入しようというなか、IISSは13日に年次報告書『ミリタリー・バランス2024』を発表。世界170以上の国の軍事力を評価している。

報告書は、現在の世界の軍事・安全保障の特徴として、ロシアや中国など一部の国が「力こそ正義なり(Might is right)」と主張し、軍事力を積極的に利用して権力を拡大していると指摘。民主主義国家間の防衛協力のさらなる強化が求められていると主張した。

報告書の編集者、ロバート・ウォール研究員は発表会で、専制的な国家による軍事能力の近代化がロシアから中国へと移行していること、新型兵器の開発やミサイルサイロの建設が西側諸国の注目を集めていることを明らかにした。

軍事費は直接的なリスクを示す指標となる。報告書は2023年の中国の国防支出が前年比5.4%増の1.55兆元(約32兆円)に達し、29年連続で増加したと詳述している。2024年の全世界の国防支出は前年を超え、記録的な2.2兆ドル(約330兆円)に達すると予測されている。

IISSの国防経済の専門家であるフェネラ・マクガーティ氏は、中国の軍事予算の増大が、日本、韓国、オーストラリア、台湾などの周辺国に対し、その経済成長率を上回る速度での軍事費増加を強いていると指摘している。

中国は、ロシアがウクライナを短期間で降伏させると予測していたが、その予測が外れ、長期化する紛争を目の当たりにし、将来の「持久戦」への備えを進めている。

実際、中国共産党は昨年3月1日に「中華人民共和国予備役人員法」を正式施行し、動員体制の準備を加速している。台北の国防安全研究院の国家安全研究所所長である沈明室氏は、この措置を台湾への侵攻準備の一環と分析している。

中国共産党は2015年以降、「軍の改革」を進め、各集団軍を6つの戦闘旅団で構成し、総戦闘部隊数を約3万人に増強した。上陸作戦では、攻撃側が防御側の5倍から10倍の兵力を必要とするため、共産党は近年、戦争動員事務所の設立や各省への動員準備命令など、戦備消耗に対する対策を講じている。

さらに、民間資源の統合強化を通じて戦備を固める措置も講じている。

米国防大学中国航空航天研究所の所長、ブレンダン・マルバニー氏は、中国が商業経済を通じて軍を支援するために「軍民融合」戦略を長期にわたって推進していると述べた。

マルバニー氏は、中国の軍事力が現在過渡期にあることから、近代化目標の達成に向けて外交、金融、経済の基盤を強化し、民主主義国からの制裁に耐えるリスクを考慮した上で、軍事行動を選択肢とすると考えられるとした。つまり、ウクライナ侵攻に際してロシアに対して西側が課した制裁こそ、中国にとって重要な教訓だったという。

これは、中華民国(台湾)政府が独立を宣言するといった予期せぬ事態が起こり、習近平が人民解放軍に戦闘を命じるような場合は例外とした。

IISSの専門家たちは、中国軍の台湾侵攻の意図および能力を過小評価すべきではないと警告している。高級研究員の温玫雅氏は、公開情報からは中国の腐敗指数や高層部の人事変更が台湾海峡における衝突に及ぼす影響を評価することは難しいが、人民解放軍は確かに急速に発展していると述べている。

英国ロンドンを拠点とするシンクタンク、IISSは国際情勢分析に基づく政策提言を行う著名な機関である。年次発表の「ミリタリー・バランス」は、世界最大級の軍事データベースとして高く評価されている。

このほど発表された『ミリタリー・バランス2024』は、ハマスとイスラエルの戦争、ロシアによるウクライナに対する継続的な侵略、アゼルバイジャンによるナゴルノ・カラバフ地域の占領、ニジェールとガボンでのクーデター、さらには台湾周辺、南シナ海およびその他の地域での中国のより積極的な操縦など、高まる紛争の数を例に挙げて、悪化する安全保障環境を詳述している。

大紀元日本 STAFF