2022年6月に学校を出た後に失踪した陝西省西安の少年、謝昌楊さん(当時15歳)の父親による「真相究明を求める」自撮り動画が今月3日、ネットに拡散されて注目を集めている。
発見された少年の遺体の状況は、頭部や手足がない「胴体だけ」であった。とくに左右の「腎臓」がなくなっていたことから、ネット上では「臓器狩りに遭ったのではないか」と疑う世論が根強い。多くの人が胡鑫宇(こきんう)事件を連想して「第二の胡鑫宇」と呼ばれている。
「頭も手足もない。腎臓が2つとも消えた」
「真相究明を求める」。少年の父親による自撮り動画のなかには、その決意を込めて、息子の遺影を手にして語る男性の姿があった。
別の動画には、この父親が掲げたであろう、側面に大きな紙を張り付けた車があった。そこには少年の名前である「謝昌楊」や「真相」と書かれた血色の大きな文字のほか、「頭も手足もない。腎臓が2つとも消えた(頭沒了,四肢沒了,雙腎消失!)」の文字がある。
謝昌楊さんは子供のころから武術を習い、明るい性格で元気いっぱいの、両親にとっては自慢の息子であった。
2022年6月、通っていた西安の職業学校から下校した後、全く理由もなく失踪する。4か月後に、ある川の近くで発見されるが、その遺体は先述の通り「頭も手足もなく、腎臓が2つとも消えた」胴体だけの姿であった。
(謝昌楊さんの父親が、突然失踪し、変死体で見つかった息子の真相究明を求めて動画で訴えている)
しかし、少年の父親による動画が世論の注目を集めた後、当局の検閲に遭ったのか、この動画は今は削除されている。
また、事件について声を上げた中国SNSウェイボー(微博)大Vのアカウント(大Vとは、多くのフォロワーやファンを抱える公式アカウント、もしくは実名登録アカウント)による関連投稿も、同じく削除された。
中国メディアによると、監視カメラに映る少年の最後の姿は、2022年6月2日、彼が当時通っていた学校から1、2キロ離れた場所だったという。
その後、少年は人里離れた場所で「消えた」。その父親は「息子は失踪前、特に変わった様子はなかった。学校の先生も、学校で異常はなかった、と言っている」と話している。
しかし、この中国メディアの一報がなされた後、まるで当局によって口を封じられたかのように、中国メディアによる事件の追跡報道は全くなくなった。
また「第二の胡鑫宇」か?
昨年12月、広東省のある大学で、校内で突然倒れた男子学生がいたが、病院に運んで救命措置を施すのではなく、家族の同意なしに直接火葬場へ送り、その日のうちに遺体を火葬する事件が起きた。
多くの不可解な点が存在するこの事件も、「第二の胡鑫宇ではないか」といった「臓器狩り」を疑う声が広がっている。
時事評論家の李沐陽氏は、この事件について「学生が倒れてから、わずか1日以内に火葬され、両親は息子の顔さえ見られなかった。(その間に)臓器がいくつ抜かれていても、もう分からないではないか」とコメントしている。
「胡鑫宇(こきんう)事件」とは、江西省鉛山県で2022年10月に学校から失踪した15歳の高校生・胡鑫宇さんが2023年1月28日、学校近くの森の中で変死体となって発見された事件である。
地元警察は、本人の意思による「首吊り自殺」と断定し、強引に幕引きをはかる記者会見まで行った。
しかし、遺体発見時の状況証拠などに矛盾点が多いことから、真実を隠蔽しようとする地元警察ぐるみの、臓器収奪目的をふくむ「他殺」の疑いが濃厚であるとみられている。
この事件をきっかけに、多くの中国市民は、中共による「臓器狩り」の闇について一層リアルに信じるようになった。
それ以来、学生の不可解な失踪や死亡事件が起きるたびに「第二の胡鑫宇か?」という疑いの声が、必ずといっていいほど上がっている。
ただし中国において、これまでに「第二の」という修飾語が何回使われているかは、もはや数知れない。
広がった「臓器狩り」の対象
中共体制下で行われてきた「臓器狩り」とは、中国全土に不当監禁した法輪功学習者を巨大な「臓器バンク」とし、最短1週間で適合する移植用臓器が得られることを「売り」にして、日本をふくむ海外からの臓器移植希望者などを対象に、国家ぐるみで進められてきた悪魔のビジネスである。
なにしろ元手をかけずに、巨額の利益が得られるのである。そうした錬金術の悪魔性から「臓器の供給源」は法輪功学習者だけでなく、同じく不当監禁したチベット人やウイグル人にまで広がった。
さらに近年では、自国民である中国人までも「臓器狩り」の対象とされている可能性が濃厚になっている。
学校で、血液検査をふくむ健康診査をうけている学生や生徒が、なぜこれほど多く失踪し、変死体となって発見されるのか。なぜ警察は、それを「自殺」と決めつけるのか。
「彼らは臓器狩りに遭ったのではないか?」。民間から湧き上がるその疑念は、警察による強引な記者会見では、もはや否定できないレベルに達している。
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