被災地から追い出されたチベット人慈善家 中国赤十字会の「お株を奪った」からか?

2023/12/29
更新: 2023/12/29

中国甘粛省で18日深夜、マグニチュード(M)6.2級の地震が発生した後、被災地は廃墟と化し、零下10数度の酷寒のなか、家を失った大勢の被災民が野宿を余儀なくされている。

この甘粛地震を受け、中国の女性歌手で、著名な慈善家でもあるチベット人のハン・ホン韓紅)氏が立ち上げた慈善基金会「韓紅愛心慈善基金会」は、さっそく100万元の現金と100万元分の物資、合計200万元(約4千万円)相当の支援を行うことを発表した。

現地で被災者救済を行うが、当局に排除される

ハン氏本人も、救援隊とともに地震発生の翌日には被災地に到着した。自ら指揮を執りながら、被災者に防寒物資や食事を配り、現地で無料の医療サービスを提供するなどの支援活動を精力的に行っていた。

 

被災地で支援活動を行うハン・ホン(韓紅)氏(画像左)、SNSより

 

しかし4日後の23日、ハン氏の基金会は突然「募金チャンネルの閉鎖」を発表した。

独立系の時事評論家・王歪嘴氏によると、その経緯は以下の通りだという。

「12月23日に『中国赤十字基金会』の甘粛分会の党委書記は、ハン氏を名指しで批判し、彼女の基金会の募金チャンネルの閉鎖と被災地からの即時撤退を命じた。さらには、これまでにハン氏の基金会が集めた寄付金を『中国赤十字基金会』の口座に振り込み、持ち込んだ救援物資もそのまま置いて被災地を去るよう命じた」

つまり甘粛省の赤十字基金会を傘下にもつ同省の党書記は、被災地の最前線で救援にあたっていた慈善活動家を問答無用で排除するとともに、その物資と資金を「置いてゆけ」と言わんばかりに奪おうとしたことになる。

 

(被災地で支援活動を行うハン・ホン(韓紅)氏のチーム)

中国紅十字会から「逆恨み」されたか

ハン氏が排除された件については、複数の中国ポータルサイトも関連報道を行っている。それらの報道に寄せられるコメントには「ハン氏は、当局のニセ慈善機構のチーズを動かした。それで排除されたんだ」「ハン氏は、当局の金儲けを邪魔したから追い出された」とする当局非難の声が殺到している。

それを象徴する言葉が、上記のコメントにもある「ハン氏は、紅十字会のチーズを動かしたのか(韓紅動了紅會奶酪?)」である。

これを日本語の分かりやすい表現に置き替えれば「ハン氏は、中国紅十字会のお株を奪ったのか?」ということになる。

つまりハン氏の率いる救援チームが民衆から信頼されていることで、中国紅十字会から「被災者救援の主役を奪った」。そのために逆恨みされ、被災地から排除されたということだ。

この話題について、華人圏では今、熱い議論が交わされている。

 

 

腐敗しきった「中国の赤十字」

「中国紅十字(赤十字)基金会」は、中共政府の国務院が主導する半官半民の慈善団体である。

この団体は、戦時において、敵味方の区別なく傷病兵を治療する理念を掲げ、中立かつ人道的な活動を行う国際機関「赤十字国際委員会(ICRC)」(1863年設立)とは、名称は似ているが何の関係もない。

実際「中国赤十字基金会」は腐敗しきっている。財務管理や会計に透明性がないうえ、災害が起きるたびにそれに乗じて「ひと儲け」しようとするため、中国国民のなかで信頼性も極めて低い。

「中国赤十字基金会」は、これまで度重なる不祥事や数々の汚職騒動を起こしているため、その信用度は完全に地に落ちていた。今回の地震でも、中国赤十字ではなく、ハン氏の基金会に寄付をする市民の数が圧倒的に多かった。

ハン氏の基金会の公式サイトによると、「甘粛地震の緊急支援」の公共福祉プロジェクトは、今は「募金終了」と表示されているが、これまでに集まった募金額は約6568万元(約13.1億円)だった。
 

ハン氏の基金会の公式サイト

 

わざと「高い物品」を買って、何をする?

いっぽう「中国赤十字会」のほうは、今年も不祥事が露呈している。

明るみに出た甘粛省赤十字の「被災者救済物資の購入リスト」によると、赤十字が購入するどの物資も、市場価格よりはるかに高いことがわかった。

つまり「中国赤十字会」は、会計上「わざわざ高い金額の物品を買っている」ということだ。これは何を意味するのか。

例えば「携帯用の手あぶり(練炭などを燃やして暖をとる器具)」1つあたりの購入価格は500元(約1万円)だ。しかし、ネット上での平均価格は、数十元から100元余り(数百円~2千円)である。

また、赤十字が購入する12平方メートルの綿製テントの価格は2200元(約4.4万円)だが、ネット上で売られている「防風・防雨・三層綿」のテントの価格は529元(約1万円)である。

そこで考えられることは、この甘粛省赤十字は、会計上は「高い物品」を買ったことにして、実際には同じ種類の安価なものを買う。その差額を「赤十字会」の担当者が着服したとしても、表面には出ないことになる。

また、市場価格の数倍は高いこれら調達物資には、代金とは別に162万元(約3237万円)の「管理費」までかかっている。このように、いくらでも「お手盛り」ができる杜撰な会計なのだ。

「赤十字会」のスキャンダルが明るみになると、中共の官製メディアは相次いで「赤十字会」のために悪い噂を払拭しようと躍起になった。

「赤十字会」のほうも24日に、ネットに流れている噂はデマだと否定したうえで「赤十字会に寄付されたお金は、全て被災者救済に使用される」と主張している。

大切なのは「自分で行って、直接わたすこと」

ハン・ホン(韓紅)氏は、かつて中国メディアの取材を受けた際「長年にわたり慈善活動をしてきて、最も大切なことは何か?」と聞かれた。その時、ハン氏はこう答えている。

「最も大切なのは、私が自分でお金を現地に持って行き、それを必要な人に直接渡すこと。つまりお金を、どこぞの怪しげな基金会には渡さないことだ。彼らは、そのなかから、いわゆる管理費をとるだろうから」
 

(被災地で支援活動を行うハン・ホン(韓紅)氏のチーム)

李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!
鳥飼聡
二松学舎大院博士課程修了(文学修士)。高校教師などを経て、エポックタイムズ入社。中国の文化、歴史、社会関係の記事を中心に執筆・編集しています。