「ケネディ家の異端児」米大統領選で無所属出馬 揺れる票…利するのはバイデン氏か、トランプ氏か

2023/11/17
更新: 2023/11/16

米国のロバート・ケネディ・ジュニア氏は先月、民主党の指名候補争いから撤退し、無所属で2024年の米大統領選に立候補することを表明した。「ケネディ家の異端児」の異名を持つロバート・ケネディ・ジュニア氏は、バイデントランプ両氏の支持層をどの程度引きつけるのかーー。専門家たちは有権者の心理に注目している。

最近の複数の世論調査によると、ケネディ氏は勢いを増しており、バイデン大統領とトランプ前大統領にほぼ同等の影響を与えていることが示された。

シエナ・カレッジとニューヨーク・タイムズが11月初旬に行った世論調査では民主党のバイデン大統領と共和党のトランプ氏との争いになった場合、6つの激戦州(アリゾナ州、ジョージア州、ミシガン州、ネバダ州、ペンシルベニア州、ウィスコンシン州)でケネディ氏は24%の支持を獲得した。トランプ大統領は35%、バイデン大統領は33%、残りは「未定」または「投票しない」と答えた。

シエナ・カレッジ研究所所長のドン・レヴィ博士は「トランプ氏が大きくリードを保っているのはネバダ州とジョージア州のみだ。一方で、アリゾナ州とペンシルベニア州はトランプ氏優勢から互角になった。ウィスコンシン州とミシガン州は依然として拮抗している」と述べた。

同世論調査では、これら6州の45歳以下の有権者において、ケネディ氏がバイデン氏とトランプ氏をリードしていることも明らかになった。

18~29歳の有権者では、ケネディ氏が34%の支持を得たのに対し、バイデン氏は30%、トランプ氏は29%だった。30~44歳の有権者においても、バイデン氏とトランプ氏(各30%)を差し置いて、ケネディ氏(31%)が僅差でリードを保っている。

2023年4月19日、米マサチューセッツ州ボストンで行われた2024年大統領選出馬に向けたキャンペーンで演説するロバート・F・ケネディ・ジュニア氏 (Photo by JOSEPH PREZIOSO/AFP via Getty Images)

ケネディ氏は無党派層で大きくリードしている。

「民主党支持者の18%と共和党支持者の16%がケネディ氏を支持すると答えたのに対し、無党派層の支持は39%に上る。一方、無党派層のバイデン氏の支持は28%、トランプ氏の支持は25%だ」

キニピアック大学の11月1日付の世論調査でも同様の結果が示されている。この調査では、無党派層の36%がケネディ氏を支持すると回答した。トランプ氏の支持は31%、バイデン氏は30%にとどまった。

また、18~36歳までの回答者の間では、バイデン氏とトランプ氏(各々32%)を抑えて、ケネディ氏(38%)が最も支持を集めた。全体的にはバイデン氏(39%)がリードし、次いでトランプ氏(36%)、ケネディ氏(22%)となった。

キニピアック大学の世論調査アナリスト、ティム・マロイ氏は、ケネディ氏が若い有権者の支持を集めている理由は、非課税債券を資金源とする3%住宅ローンの導入計画にあると考える。

ケネディ氏はノース・カロライナ州での会合で「他のすべての世代は、一生懸命働き、規則に従って生活すれば、住宅資金を調達できると言われた。老後の蓄えもできるし、仕事ひとつで家庭を築くこともできる。私の子供たちの世代には、それが自分たちに当てはまると思っている人はいない」と述べた。

「私を支持する多くはこれまで投票に行かなかった人たちだ。今、人々が得ている他の選択肢は、魅力的なものではない」

一方で、民主党の選挙戦略家で元ニューヨーク州上院議員のデビッド・カルーチ氏は、ケネディ氏が現在の勢いを維持できるかどうか懐疑的だ。

「世論調査やケネディ氏を支持している人々を見ると、それは他の誰よりも反ワクチン派のトランプ支持者だ。彼のことを本当に知れば、その陰謀論的なスタンスから離れる人も少なくないだろう」とカルーチ氏はエポックタイムズに語った。

「結局のところ、人々が投票する際には、バイデン氏かトランプの2択になるだろう」

2023年9月11日、ベトナムとインド訪問を終え、アラスカ州のエルメンドルフ・リチャードソン統合基地に到着した米国のバイデン大統領 (Photo by SAUL LOEB/AFP via Getty Images)

共和党のストラテジスト(戦略や方針を立案する立案者)、ブライアン・セイチク氏は、ケネディ氏はスイング・ステート(激戦州)において、バイデン氏よりもトランプ氏に不利な影響を与えると考えている。

「ケネディ氏は、より保守的な立場を推進するために多くの時間を費やしてきた。結局のところ、ケネディ氏に投票する人はトランプ支持者でもある可能性が高いので、トランプ氏はより不利になるだろう」

10月に発表されたハーバード大学のCAPS/ハリス調査によると、ケネディ氏の好感度は高かった。

同調査によると、ケネディ氏に対して好意的な見方をする回答者は49%、「好ましくない」とした回答者は30%だった。トランプ大統領の好感度は49パーセントで、46パーセントが「好ましくない」と回答した。バイデン大統領の好感度は45%であったのに対し、「好ましくない」との意見は49%だった。

ケネディ氏は同月、フィラデルフィアで行われた会合で次のように語っている。

「メディアの評論家たちは、私に(当選)チャンスはないと言っている。なかには私が他の候補者の票を引き離すだけだという人もいる。民主党は私がバイデン大統領の選挙をダメにすると怯え、共和党は私がトランプ大統領の選挙を台無しにすると怯えている。実際のところ、どちらも正しい」

トランプ大統領陣営のスポークスマン、スティーブン・チャン氏は、有権者はケネディ氏に警戒すべきだと発言している。

「有権者は、保守的な価値観をふりかざす人にだまされるべきではない。実際、ケネディ氏は過激でリベラルな立場に染まった不穏な経歴の持ち主だ」

「彼が中国寄りであるか、銃所有者を貶めているか、ビジネスを損なう環境政策を推進しているとか、または中絶を支持しているかどうかは別として、ケネディ陣営は、一族の名声を利用しようとするリベラルなプロジェクトに過ぎない」

2021年8月21日、アラバマ州カルマンにあるヨーク・ファミリー・ファームでの集会で、ドナルド・トランプ前大統領に声援を送る支持者たち (Photo by Chip Somodevilla/Getty Images)

ジョン・F・ケネディ元大統領の甥であるケネディ氏は4月、民主党の候補指名獲得を目指して立候補を表明した。選挙戦を通じて保守派、穏健派、無党派層、リバタリアン(自由意志論者)から幅広い支持を得た。しかし、多くの民主党議員からは同様の支持を得られず、10月に無所属の候補者として立候補する意向を表明した。

ケネディ氏が無所属での出馬を表明する前に、ケネディ氏の当選を目指す政治活動委員会「American Values 2024」は、ゾグビー・ストラテジーズ社に世論調査を依頼し、10月2日に発表した。

その調査によると、バイデン氏とトランプ氏を相手にケネディ氏が無所属もしくは第3党候補として出馬した場合、バイデン氏とトランプ氏の両候補の38%に対し、ケネディ氏は19%からのスタートとなる。

「無所属や第三党の候補者の批評家たちはいつも票が割れて混乱を招くと主張するが、実際、人々は二大政党に幻滅し、党派的な政治にうんざりしている」とAmerican Values 2024のトニー・ライオンズ共同代表はエポックタイムズに語った。

「人々は、民主党と共和党から何をすべきか、何を考えるべきか、誰に投票すべきかを指図されることに疲れ、代わりとなる候補に期待を寄せている」