共同富裕から失業率へ 中国共産党の社会契約は破綻している

2023/11/07
更新: 2023/11/07

これまで中国共産党(中共)は庶民にお金を稼ぐ機会を許してきた。そのかわりに中国人は政治的自由に関しては目をつぶっていた。しかし現在、失業が広がる中で、この暗黙の約束は、「安全」や「良好な生活」といったあいまいな約束に変わりつつある。

今年1月にラジオ・フリー・アジアに掲載された記事は、1989年の天安門事件以降、中共政府は概ね安定した生活を提供したが、代わりに人々は自らの政治的自由を放棄するという取引を中国人に強いたと指摘している。この社会契約、または取引の内容は時代によって異なる。

江沢民時代、当局と国民の間の不文律の合意は、中共が国民を金持ちにさせ、国民は中共の統治の正当性を認め、政治的自由を放棄するというものだった。胡錦濤時代の暗黙の取引は、政府は国民を苦しめず、国民は平穏な日常を送る。代わりに、国民は発言権や出版権、結社の自由などの政治的権利を持っているかどうか、あるいはどれだけ持つかは当局が決める。 

しかし習近平氏が政権を握ってから十年間、国内外の要因の影響で、庶民は富を得る機会、穏やかな生活を失った。特に3年間のゼロコロナ政策は、人々の基本的な自由を奪い、一般市民の日常生活は完全にコントロールされていた。

第三期目の任期を迎えた後、習氏は経済に対する締め付けを強化した。これらの措置は産業の発展潜在力や雇用を提供する能力を弱め、結果、企業のリストラが進み、若者の就活がさらに困難になっている。

今年8月の公式データでは、16〜24歳の中国都市部における市民の失業率が記録的な21.3%に達し、その直後、当局は失業率の公表を停止すると発表した。

中国では2億9562万人の出稼ぎ労働者の賃上げが鈍化し、都市の中産階級は不動産崩壊で大きな損失を被っている。富裕層も、当局によるインターネット、金融、医療業界への締め付けで打撃を受けている。

その一方で中共の国家安全法で外国企業の懸念が高まり、多くの会社が中国から撤退している。

中国国家外貨管理局は11月3日、中国の7~9月の外国直接投資(FDI)が−118億ドル(約1兆7749億円)と伝えており、比較可能な統計が1998年に公表されて以来、初めてマイナス成長を記録した。

経済的プレッシャーで中国国内の矛盾が激化している。そうした中、人々は官僚の腐敗に憤りを感じており、中間階級の怒りも高まっている。ゼロコロナに反対する「白紙運動」や習近平政権を真っ向から批判する「四通橋の勇士」などの市民抵抗活動が発生している。

国際投資移民会社によると、今年、中国では投資可能な資産が100万米ドル(約1億5千万円)以上の富裕層1万3500人が移民する予定だ。

アジア協会政策研究所(Asia Society Policy Institute)中国分析センターの研究員ニール・トーマス氏は「ファイナシャル・タイムズ」に対し、「習近平氏の経済政策の悲劇は、中国が解決すべきいくつかの問題を見つけ出したが、その解決策を間違えたことにある」と語った。

林燕