岸田改造内閣の発足に伴い、自民党の親台湾派として知られる木原稔氏が防衛相に就任した。いっぽう、中国共産党は空軍機による過去最大規模の「嫌がらせ」行い、「台湾融合計画」なるものを発表するなど、緊張感を高めている。このような状況を受け、木原氏はどのように防衛政策を展開するのか。各国の専門家の意見を探る。
日台関係の専門家たちは、木原氏の最優先課題として、台湾有事への日本の対応指針の策定と日台間の安全保障協力の強化を挙げている。オアシス文化教育基金会の謝文生事務局長は、木原氏の就任は中国に対する防衛の新たなステップと評価。米ボイス・オブ・アメリカ(VOA)の取材に対し、「木原氏の防衛大臣としての主要な任務は、『日本有事』への対応策を強化することだ」と述べた。
木原氏は、安倍、菅、岸田の各政権で防衛関連の要職を歴任した。その経験から、中国の軍事的拡大に対応する適任者としての評価を受けている。事実、木原氏は入閣前、「日華議員懇談会」の事務局長として日台関係の増進に尽力。昨年8月の台湾訪問では蔡英文総統と会談し、緊急事態発生時における邦人保護について議論した。
日本のシンクタンクが主催する台湾有事シミュレーションにおいて、木原氏は防衛大臣役を務めた。今夏のシミュレーションでは、2027年に中国が台湾を侵攻し、日本がその影響を受けるシナリオを基にしている。
「防衛予算が大幅に増額され、反撃能力や能動的サイバー防御等を保有し、継戦能力を高めた“強い自衛隊”が、台湾有事から波及した日本の有事にどのように対応できるかがテーマでした(中略)様々な課題があぶり出されたので、立法府として今後の取り組みに活かします」と、木原氏は当時のブログにしたためている。
台湾の日米民間交流協会の葉紘麟氏は、木原氏の政治的背景に注目している。木原氏が岸田首相や上川陽子外相とは異なる派閥、すなわち茂木派に属していることから、来年の衆院選を見据えた人事とも捉えられると指摘する。
しかし、日台の安全保障協力の実現には時間がかかるとの見方もある。葉氏は「日本には、米国の台湾関係法のような日台関係を維持するための仕組みが欠けている。(日台安保協力には)依然として首相、閣僚、さらには政府官僚の援助と支持が必要だ」とした。
いっぽう、元防衛省審査官で平和安全保障研究所の徳地秀士理事長は、現行の日本の外交政策は、外務・防衛大臣の人事に関わらず、大きく変わることはないとの見解を示す。徳地氏によれば、岸田首相は「首脳外交」を積極的に展開しており、外交の主導権は首相にある。
葉紘麟氏は、木原氏の親台湾派としての立場や前外務大臣の林芳正氏の交代を受け、中国が不満を抱いていることは明らかだと指摘。特に、木原氏が沖縄の基地反対運動に対して長らく疑問を持っていることから、中国は沖縄県との官民の連携を強化することで日本国内の世論を分裂させ、木原氏の防衛政策に対抗する可能性があると警鐘を鳴らした。
一方的な「融合計画」
こうしたなか、台湾に対する中国共産党の圧力は強まる一方だ。台湾の邱国正国防部長は「最近の中国軍の行動は異常」と例えるほどだ。
台湾国防部24日の発表によれば、中国軍の地上部隊が福建省の東山大テイ湾に集結。18日には台湾の防空識別圏では103機の中国軍機が確認され、台湾側は警戒を強めている。
中国はまた、福建省と台湾の「融合発展」計画を発表した。この計画は、交通インフラの強化や、台湾の学生の福建での学習・雇用の奨励、産業協力の深化などが含まれており、一方的に台湾統合を目指す中国共産党の野心が窺える。
この融合計画を発表した同日、中国側は海軍と空軍で台湾を取り囲む軍事演習を行った。外交部長の呉釗燮氏は、中国のこのような威圧的な行動を受けて、中国が台湾との和平を真剣に望んでいるとは考えられないと述べた。
木原氏は21日から23日にかけて、就任後初となる地方視察で熊本県と沖縄県を訪れ、南西諸島の防衛重視の姿勢を示した。これは、台湾への圧力を強める中国に対する牽制とも受け取られる。
新防衛相のリーダーシップのもと、日本の安全保障政策と日台関係の今後の展開が注目される。
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