テスラ社「完全自動運転」車による死亡事故ではじめての裁判

2023/09/11
更新: 2023/09/10

テスラは、完全自動運転(FSD)車の自動操縦支援機能が故障し、死亡者を出した事故に対する、はじめての裁判に向け、自己弁護のための準備を行っている。

「テスラは、この技術に関連する2つの訴訟に直面している」とロイターは独占記事で報じた。これらの訴訟はテスラ社の最高経営責任者(CEO)のイーロン・マスク氏にとっての試金石だと見なされている。

マスク氏によれば、テスラの完全な自動運転機能は、同社の将来の計画の中心だという。

2つの訴訟の原告の1人が、事故を引き起こしたFSD技術チームの事実上のリーダーが、マスク氏であることを主張したため、批評家たちは、彼の判断に疑問を投げかけた。

致命的な衝突に関与したとされるテスラのオートパイロット

1つ目の裁判が、9月中旬にカリフォルニア州裁判所で予定されている。

この民事訴訟は、2019年にマイカ・リー氏が、テスラのモデル3を運転してロサンゼルス東の高速道路を時速65マイルで運転中に発生した事故に関する裁判である。

遺族側はオートパイロット・システムが原因で、車が突如道路を外れてしまったと主張している。

彼の車はヤシの木にぶつかり、数秒の間に炎上した。致命的な衝突事故により、リー氏の死亡に加えて、当時8歳だった少年の内臓は飛び出し、もう1人の乗客も重傷を負った。

乗客とリー氏の遺族はテスラに訴訟を起こし「テスラは、車の販売当初からオートパイロットやその他の安全システムに欠陥があることを認識していた」と非難した。

2つ目の裁判は、フロリダ州で10月初旬に予定されており、2019年にマイアミの北で発生した致命的な衝突事故に関するものだ。

この事故について、訴訟を起こしたバナー氏の妻は「テスラのモデル3の所有者である夫(スティーブ・バナー氏)が運転する車が、道路に停車していた18輪大型トラックのトレーラーの下に潜った」と語っていた。

この事故においては、テスラのオートパイロットが、ブレーキやハンドル操作、あるいは衝突を回避するための操作に失敗したとされており、車両の屋根が剥がれ落ち、バナー氏は死亡した。

テスラはどちらの事故についても責任を否定しており、被害者側のドライバーのミスを非難した。

裁判所の文書によれば、テキサス州オースティンに本拠を置くテスラ社は、「ドライバーは道路に注意を払い、その手はハンドルを握って置く必要がある」と述べたというのである。

また同社は「リー氏は、車に乗る前にアルコールを飲んでおり、衝突時にオートパイロットがオンになっていたかどうかさえ、はっきりしていない」と主張している。

自動運転車技術の実現可能性を検証するための2つの裁判では、オートパイロット・システムについて、マスク氏や他の企業幹部が、欠陥の可能性をも含めて何を知っていたのか、新しい証拠が明らかにされる可能性がある。

公判前にバナー氏の遺族の弁護士が、裁判所に書類を提出していた。その中で「社内電子メールから、テスラのCEOがオートパイロット・システムの開発に個人的に関与していたことがわかる」と主張した。

以前、テスラのモデルSが走行方向を変えて縁石にぶつかりドライバーを負傷させた事故が起きていた。その先駆的な裁判が4月にロサンゼルスで行われ、テスラは勝訴している。

評決後、陪審員はロイターに対して、「テスラはドライバーに対して、システムのリスクについて十分な警告を与えていた。この事案の場合、ドライバーの注意散漫が原因であると信じている」と語った。

テスラは「表現上誤解を招くかもしれないが、完全自動運転機能には依然として人間の監視が必要」であることを明らかにした。ただし、今回の2つの事案では死亡者が出たこともあって、自動操縦技術の危険度についての認識がはるかに高くなった。

エポックタイムズはテスラ社にコメントを求めた。

マスク氏は故意にナビゲーションの欠陥を修正しなかったと非難

原告の弁護士の1人、ジョナサン・マイケルズ氏はロイターに対して「この自動操縦システムには既知の欠陥があるけれども、テスラは犠牲者を非難するといった恥ずべき行為を行い、虚偽の主張を行っている」と語った。

バナー氏の遺族の代表者も動議を提出し、懲罰的損害賠償が正当化され、テスラの幹部数人が解任されることを要求した。

先週、テスラ社は、宣誓証言の記録やその他の文書を秘密にしようと法廷に緊急動議を提出した。

バナー氏の弁護士であるレイク・トレイ・ライタル3世は、「この申し立てに反対する」とロイターに語った。

ロイターは、裁判所の記録を入手している。それによると、テスラの元幹部であるクリストファー・ムーア氏が、「同社のオートパイロットがやれることには限界がある」と証言し、「テスラ車は、道路上に存在する可能性のあるすべての危険、障害物や車両などを検知するようには設計されていない」と説明した。

法務チームはまた、テスラ社からいくつかの内部文書を取得することができた。そこには、テスラCEOとエンジニアたちは欠陥に気づいていたが、それを修正できなかったと書かれていた。

弁護士たちは、安全性改善の欠如をテスラCEOの1人だけのせいにし、CEOは自動操縦システムが適切に機能していないことを知っていたと非難した。

たとえば、2016年、テスラ車がセミ・トレーラートラックに衝突して死亡者が出るという事故が起きた。そのわずか数か月後、マスク氏は記者団に、「同様の事故を防ぐために、テスラ車にはオートパイロットが更新されており、改良されたレーダー・センサーが装着されている」と語っていたというのである。

しかし、ライタル氏が提出した裁判所の文書によると、フロリダ州で起きた2つの事故を調査したテスラ・オートパイロットのシステムエンジニア、アダム・グスタフソン氏は、2016年の事故から最近の原告死亡事故までの間に、オートパイロット・システムに変更が加えられていなかったことを明らかにした。

裁判所の文書によると、オートパイロット・エンジニアのリチャード・ベイバーストック氏は、テスラで行ったほとんどすべてが、イーロン氏の要請で行われたことを認めている。

もしテスラがこの2つの訴訟で勝訴することができれば、1台あたり最高1万5千ドルもするオートパイロット・ソフトウェアの信頼性と売上が高まる可能性がある。

一方、テスラ社の株価は8月28日に0.10%上昇し、ダウで238.82ポイントとなった。