福島原発の処理水放出 中国では「塩買いパニック」と、扇動される愛国民族主義

2023/08/26
更新: 2023/08/30

東京電力福島第1原発の処理水放出が24日から開始された。そのことを受け中国では、一部の消費者が日本産の海産物を避けたり、海水を原料に作られる食塩を不安視して、処理水放出前の「まだ汚染されていない海水の塩」の買い占めに走る現象も各地で起こっている。

日本をやり玉に挙げ「作られたパニック」

中国メディアなどによると、この「食塩買い占め現象」は中国各地で起きているという。スーパーなどで売り切れが相次いでおり、ネット通販でも一部の都市で売り切れが続出している。SNSにはスーパーの食塩の棚が空になった映像が数多く投稿されている。なかには、売り場の食塩をめぐって、客同士が奪い合う様子も見られる。

中国のスーパーで、パック詰めの食塩をまとめ買いする市民たち。(中国のSNSより)

 

このパニック買いの結果、多くの塩関連企業の株価が急上昇している。

江蘇省に住む陸さんは、そのような買占めに走ることはない。陸さんは「人々が塩の買い占めに走っているのは中国官製メディアの洗脳や扇動を受けたからだ。しかし私は(大紀元コメンテーターでもある)李沐陽さんの番組をよく見ているから、冷静でいられるんだ」と話した。

「経済状態も悪いし、洪水災害などで人々の不満が限界に達している。そこで、民衆の不満のはけ口が必要だ。だから中国当局は日本をやり玉に挙げ、国外に民衆の注意を向けさせるため、わざとパニックを作り出そうとしている」。そのような冷静な分析ができる中国人も増えており、ネット上ではこの点を指摘する声も少なくない。

いっぽう、海産物の安全性をめぐり、上海の水産物市場では、管理者が市場を回って日本産の海産物を撤去するよう要請していたとする報道(ロイター)もある。

売り場の人は、処理水放出開始前は毎日多くの客が来ていたが「今はとてもヒマになった。誰も買わない」と肩を落としていたという。

中共の反日は「政治的な茶番劇」

オーストラリアに亡命した著名な法学者で時事評論家の袁紅氷氏は25日、エポックタイムズの取材に対し、「中国当局が日本の処理水放出問題を煽るその政治目的は、非常に明確だ」と指摘する。

袁氏は「中国当局は、日本と台湾の政治的、経済的、文化的に良好な交流関係に対抗するため、日本の処理水放出問題を利用した。中国人の民族主義的感情に火をつけて、日本に対する憎悪を高めようとしている」と分析した。

中国国内で起きている反日抗議について、袁氏は「それらは、実際には全て中国当局が仕組んだ政治的な茶番劇である。日本の評判を落として、外交的にも孤立させることが目的だ」と一蹴する。

カナダ在住の著名な中国民主活動家の盛雪氏も25日に、エポックタイムズの取材を受け、「中国共産党は長年日本を敵視してきた。日本への憎悪をかきたてるため、少しでも利用できる事があれば、それを見逃すはずはない」と指摘する。

「中国には言論の自由や報道の自由がないので、人々が真実の情報を得ることが難しい。そのため、中国当局の洗脳や世論誘導に国民は騙されるがままに、塩の買い占めに走っている」。盛雪氏はそう述べて、中国国内の現状を嘆いた。

盛雪氏は、さらに次のように分析する。

「中国共産党は、自らの統治が危機に陥ると『外に敵を作る』ことが十八番だった。今回は、その敵が日本になっただけである。中国当局は、国民の不満を日本に向けるように仕向けているが、この処理水問題は継続的に騒ぐことはできない。少し経てば、この騒ぎは収まる。そうなれば、中国共産党は依然として、目下の執政の苦境に直面しなければならないだろう」

中国の原発のほうが「トリチウム含有量は高い」

実際のところ、中国にある原子力発電所が毎年海へ放出する処理水に含まれるトリチウムの量は、日本の福島第一原発が放出する処理水より、はるかに多いのだ。

盛雪氏は「日本の処理水は規則を遵守している。中国国民がその真実を知れば、自分たちを害してきたのは日本の処理水ではなく、中国共産党の制度がつくりあげた環境だと知るはずだ。最終的に、人々の不満は中国政府に向けられるだろう」と述べた。

先ほども名前があがった李沐陽さんは、自身のセルフメディア「新聞看点」のMCであり、大紀元のコメンテーターでもある。その李沐陽さんが、あきれ果ててツイッター投稿したのが、下の動画だ。

ある中国人愛国主義者の自撮り動画である。まだ若い女性のようだが、精神がおかしくなったかのように、大声でワーワー泣きながら「日本はなんて悪い奴らなんだ。昔は中国を侵略した。今は、また汚い水を海に捨てやがった。私は本当に、あいつらを殺してやりたい。汚染水を捨てた日本人を海に捨てて、魚のエサにしてやりたい」などと訴えながら、日本人を侮蔑する下品な言葉を連発している。
 

 

中国共産党の官製メディアに毒された「小粉紅(中国の若い世代の愛国主義者)」は、実際このように全く理知を失っている。とりわけ、日本を憎悪の対象とした時、彼らは大声で泣きながら「下品な言葉」を連発するのだ。

李沐陽さんは、このツイッター投稿に「まったく何と言えばいいのか分からない。悪いけど、我慢できずに笑ってしまったよ」というコメントを添えている。

李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!
鳥飼聡
二松学舎大院博士課程修了(文学修士)。高校教師などを経て、エポックタイムズ入社。中国の文化、歴史、社会関係の記事を中心に執筆・編集しています。