BRICS諸国の第15回サミットが22日からヨハネスブルグで始まった。今回の会合はやがて金を担保とする「BRICS通貨」創設に向けた第一歩となると、一部のアナリストは分析する。狙いは「米国のグローバル金融支配」だが、専門家はBRICSによる脱ドル経済は「あり得ない」とみている。
BRICSはブラジル、ロシア、インド、中国、および南アフリカからなる。主要な新興市場経済の利益を代表するために2009年に設立された。今回の会合には、アルジェリアやエジプト、エチオピアなどBRICS加盟を検討する60以上のアフリカ諸国も招待された。
BRICSの金融メカニズムを形作る新開発銀行(NDB)は、国際貿易における米ドル使用を避け、国際通貨基金(IMF)および世界銀行の代わりになることを目指している。
さらに、今年のサミットはBRICSが脱ドル化について議論し、「米ドルへの依存を減らし、国際貿易での国内通貨の使用を促進する」ことを掲げている。
BRICS公式ページはタイムズ・オブ・オマーンの記事を18日、掲載した。文面から、脱ドルは西側諸国による制裁回避であることが示唆される。
「最近のロシアとウクライナの紛争を受けた西側の制裁をきっかけに、BRICS加盟国はドル依存を減少させる努力を強化している。これに伴い、多くの国々が、国際的な取引や財務における米ドルへの依存を減少させている」
米CBSは、「BRICS諸国間の共通通貨は、より強い経済的な絆と新たな地政学的な同盟の確立につながる。ひいては脱ドル化連合としてさらに立場を固めることができる」と指摘する。
いっぽう、議長国の南アフリカ政府のサミット担当者は、新通貨創設は議題にならないと説明している。このほか、同国の国際関係相ナレディ・パンドール氏は、世界秩序の多極化への要求が「反西側のアジェンダ」と誤解されるべきでないと述べている。
少しずつ規模を拡大させるBRICSは、世界経済への影響力の増加を図っている。世界第2位の産油国サウジアラビアや、イラン、アルゼンチンを含む20カ国以上が、多国間組織に正式に加盟を申し込んでいる。BRICS加盟国のGDPは全世界のGDPの約31.5%を占める。さらに、加盟国の総人口は31.4億人で、全人口の41%を構成している。
主催側は“脱ドル”への期待を寄せる。今年の議長国である南アフリカ政府のBRICS代表担当アニル・スークラル氏は、新興国が今や国際貿易の主要なプレイヤーであると述べた。「米国の世界貿易のシェアは減少しているにもかかわらず、世界貿易の50%以上がドルで行われている。これは理にかなっていない」とエポックタイムズに語った。
国際通貨基金の元執行役員であり、新開発銀行の元副総裁パウロ・パディスタ氏は、BRICSの加盟国や希望国はドル依存に不満があると主張する。
しかし、こうした新興国にとって通貨の安定は欠くことはできない。反米左派政権のベネズエラは石油価格下落や米国制裁によってハイパーインフレが起こり、人々の暮らしは混迷を極めた。AP通信によれば、現在は国内経済の80%が米ドルが使われているという。
経済専門家は、ランド、ルピー、ルーブルなど不安定なBRICS構成国の通貨の評価から、BRICS加盟国間の取引が米ドルなしに行われることは「現実的ではない」と指摘する。
「米国のように通貨の価値となる国の経済が安定していないのであれば、取引には大きな問題が生じるだろう」と、南アフリカ大学の政治経済学教授エベリスト・ベニェラ氏はエポックタイムズに語った。
「これらの経済はGDPなどの面では大きくなるかもしれない。しかし、安定性の面では米国が個別にも集団的にも最も強力であることに変わりはない」
ベニェラ氏は、ドル支配が揺らぐ最も現実的な考えは、金に裏打ちされたBRICS通貨を創設することだと指摘。インドを除くすべてのBRICS諸国が金の生産者であると指摘する。米国の統計によれば、世界最大の金の生産国は中国で、ロシアは3位、南アフリカは8位である。ブラジルは14位だ。
「発展途上国、特にアフリカの大部分は、世界でも多くの金を生産している」とベニェラ氏は言う。「だから、他の金の生産国がBRICSのメンバーとして参加するようになれば、金は新しい通貨の基盤を形成することができるだろう」
しかし、こうしたアイデアも実現には程遠いという。
「私はドルに取って代わるような通貨が近いうちに登場するとは思わない。このような重要なことを急いで進めると、世界経済の危機や世界的な政治的危機を引き起こすだろう」とベニェラ氏は語る。
「ある人はロシア・ウクライナ戦争が代替通貨登場の可能性をもたらすと吹聴したが、今のところドルに変わる事実上の国際通貨は現れていない。今後もしばらく、この状況は続くだろう」
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