米シンクタンク「米空軍中国航空宇宙研究所(CASI)」は7月31日、中共海軍が保有する航空部隊の大部分を空軍に移管したとする報告書を発表した。航空部隊を統合させることで、指揮系統の簡略化を狙ったものとみられている。米国の専門家は、この度の組織改編は第一列島線での中国海軍の作戦行動に悪影響を与えると指摘した。
「米空軍中国航空宇宙研究所(CASI)」は、昨年10月に中共ロケット軍の内部組織に関する詳細な報告書を発表したことで知られている。最新の「海軍航空部隊再編」と題する報告書によると、移管の対象となったは、少なくとも3つの戦闘機旅団、2つの爆撃機連隊、3つのレーダー旅団、3つの防空旅団及び複数の航空施設だ。移管作業は今年の初め頃から開始され、中頃には各航空部隊への移管が完了した。
いっぽう、ヘリコプターや無人機、艦載機などを含む一部の部隊は海軍の管轄下にとどまり、いくつかの航空基地についても海軍が保有を続ける。また、陸上基地に配備された海軍戦闘機部隊もわずかながら海軍に残存させており、これは南シナ海における作戦行動の支援が目的だという。
米インド太平洋司令部ハワイ総合情報センターの元作戦本部長カール・シュスター氏は2日、エポックタイムズの取材に対し、中共軍が海軍航空部隊を空軍に統合させたことは、作戦区域における航空戦力の指揮統制を簡略化させるのが狙いだと分析する。
シュスター氏は「中国軍は航空戦力を一つの指揮系統に統合することで、海上戦闘において早期に主導権を獲得しようとしている」と指摘。中国軍は作戦区域に対し、より迅速に、かつ集中的に航空部隊を投入できるようになり、これを受けて「米国は戦争シミュレーションにおけるシナリオ設定および戦術を練り直す必要がある」と語った。
海上作戦への悪影響
同報告書では、航空部隊の移管による中共海軍の作戦行動への悪影響も指摘されている。今まで、中共海軍は自身の航空機を保有していたため、空軍に頼らなくとも比較的複雑な作戦を遂行することができた。ところが、今後は空軍の支援を必要とするようになり、作戦区域における統合指揮システムを通じた海上での打撃作戦は難しくなるという。
シュスター氏も同様の考えを示した。彼は組織再編の欠点として、海軍の航空作戦に空軍の指揮が一枚かむことになると指摘、「迅速な対応が求められる状況で、特に、空母が支援できる範囲にいないとき、海軍に対する航空支援に遅れが生じる可能性がある」と述べた。
1940年代以降、ソ連及び中国共産党を封じ込める海上防衛線として、米国の軍事戦略家たちは三本の列島線を引いた。そのうち第一列島線は、日本の千島列島から沖縄諸島を経て、台湾を通り、フィリピン及びインドネシアに至るラインを指す。シュスター氏は今回の組織改変により、「中国海軍が第一列島線以東で作戦を遂行するとき、以前ほど簡単に航空支援を得ることができなくなるだろう」と分析する。
バイデン政権成立後、米国は日本、台湾、韓国、フィリピンといったパートナーと軍事協力を深めており、第一列島線の途切れない接続を試みている。2021年3月には、米インド太平洋軍司令部が連邦議会に対し「太平洋抑止イニシアティブ」を提案、第一列島線に沿って数百億ドル規模のミサイル攻撃ネットワークを構築するよう求めた。
中国共産党はこのような封じ込め体制の打破を試みている。今年4月、中国は「連合利剣」と名付けられた軍事演習で初めて空母「山東」を出動させた。さらに、第一列島線を越えるかたちで、台湾東部海域において戦闘機の発着訓練を行った。
こうした中、日本も南西諸島の守りを固めている。石垣島などに自衛隊駐屯地を設け、弾薬の貯蔵を進めている。また、地対艦ミサイルや地対空ミサイルの配備を進めることで、中共軍に対する抑止力を高めている。
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