チチハル崩落事故 学校前の「追悼品」を当局が撤去、ネット上では非難殺到 

2023/08/02
更新: 2023/08/02

2023年7月23日、黒竜江省チチハル市の中学校(チチハル第34中学)で体育館の屋根崩落事故が起き、これまでに生徒と教員ら11人の死亡が確認された。

その犠牲者を追悼するため、地元チチハルだけでなく、悲しみを同じくする全国の市民から花束や飲み物、桃の缶詰などの追悼品が大量に送られてきた。ところが同校の門前に広がっていた「追悼品の海」が、7月30日に当局によって全て片付けられ、一掃されていたことがわかった。

事件で犠牲になった生徒らを追悼する花束やミルクティーなどの品は、地元チチハルだけでなく、中国各地の民衆がネットで注文して事故のあった学校へ配達するよう手配したものだ。一掃される前の学校周辺の空き地や歩道は、花束やロウソク、桃の缶詰、中学生が好きなお菓子やミルクティーで埋め尽くされていた。

だが、この「追悼品の海」は犠牲になった生徒らの初七日(7月29日)の翌日には、重機も使ってあっという間に一掃された。追悼品が置かれていた地面はすっかり洗い流され、現在、数日前まで「追悼品の海」だった場所には、何の痕跡も残されていない。

SNSに投稿された動画を見ると、追悼品を撤去した後の校門前に、市民や配達員がこれ以上追悼品を置かないよう監視する「要員」が付けられているのが分かる。

この事故をめぐり、ただでさえ民間では「おから工事手抜き工事)」の疑惑や「当局への責任追及」の声が広がっていた。しかし当局は、事故の原因究明や被害者救済を講じるのではなく、世論誘導や事故に関する情報封鎖を行い、遺族を抑え込むことで「安定維持」に躍起になってきた。

事故のあった学校の門前にひろがる「花海(花の海)」には、中国国民の深い悲しみとともに、当局に対する民衆の怒りが渦巻いている。だが、当局はこれを隠蔽するため、全国から寄せられた追悼品を完全に撤去した。そのことをめぐり、ネット上ではさらなる怒りが噴出している。

「瓦礫(崩落した体育館)すら片付けられていないのに、なぜ追悼品を慌てて片付けるのか!」
「現場を片付けて、人々にこのことを忘れさせようとしているのだろう」
「国中が答えを待っている。しかし、当局からは何の答えもない」

(撤去される前の学校周辺の空き地や歩道には、花やロウソク、桃の缶詰、中学生が好きなお菓子やミルクティーで埋め尽くされていた)

 

(「追悼品」を撤去した後の現場の様子。新たに花束を持ってきた市民が、制止されている。市民は、こっそり学校のフェンスに花束を置いた)

学校の校門前の通りは全て封鎖され、大勢の警官や私服警官が警戒に当たっている。現在、市民は校門前に近づくこともできない。

ネット上に流出した動画のなかには、学校前の通りがきれいに片付けられる様子が映された映像もある。「供え物は、全てブルドーザーなどによって片付けろ」と指示する声も、動画に収められている。

この動画の撮影者は、通りかかったついでに撮ろうとしただけだが、黒服の集団に取り囲まれ尋問されたと明かしている。

こうした当局の隠蔽体質について、「無数の不正や汚職事件と同じように、当局は、問題の解決に100万(元)を費やすより、事件の抑え込みに1000万を費やしている」と嘆く人もいる。

落ちるはずのない体育館の屋根が、一気に崩落した。バレーボールの練習をしていた元気な中学生が、その犠牲となった。この隠しようもない事実は、たとえ当局がブルドーザーを使っても消すことはできない。「花の海」は撤去されたが、それによって火種は確実に残った。

李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!
鳥飼聡
二松学舎大院博士課程修了(文学修士)。高校教師などを経て、エポックタイムズ入社。中国の文化、歴史、社会関係の記事を中心に執筆・編集しています。