「奴隷労働商品で米市場が氾濫」TikTokのEC事業に危機感=米議員

2023/08/01
更新: 2023/08/02

中国動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」が新たなショッピング・プラットフォームを立ち上げたことで、中国の電子商取引(EC)が米国市場に氾濫し、米企業にとって不利な競争条件が築かれる可能性があると米議員らは警鐘を鳴らした。

北京を拠点とするハイテク大手バイトダンスが所有するTikTokは、早ければ8月にも米国で新しいプログラムを導入し、EC事業を拡大すると報じられている。

米ウォールストリート・ジャーナルによれば、TikTokは米国の業者と提携するのではなく、デジタルマーケットプレイスを利用して、衣料品や家庭用品など中国で製造された商品を販売する。

このショッピング機能によって、TikTokは中国の激安アパレルサイト「SHEIN(シーイン)」やショッピングアプリ「Temu(ティームー)」と競合することを目指している。これら2社は中国製の低コスト商品を直接販売することで、米国で爆発的な成長を遂げている電子小売業者だ。

「TikTokは、SheinとTemuが切り開いた道をたどるだろう。つまり、出荷を非課税基準額の800ドル以下に抑えることで、ウイグル強制労働防止法を回避し、米国市場を強制労働によって作られた製品で氾濫させることになる」と共和党のマルコ・ルビオ上院議員はエポックタイムズに語った。

「不利な競争条件が築かれることで米企業が損害を被るだけでなく、米国民は中国共産党の新疆でのジェノサイドに加担することになる」

2023年7月11日、連邦議会議事堂で記者会見するマルコ・ルビオ上院議員(共和党)(Madalina Vasiliu/The Epoch Times)

100万人以上のウイグル人やその他の少数民族のイスラム教徒が、中国の新疆ウイグル自治区の収容所に収監され、強制不妊手術、拷問、強制労働を強いられている。米国をはじめとする西側民主主義諸国や独立民衆法廷「ウイグル法廷」は、中国共産党による新疆での人権弾圧を「ジェノサイド」と認定した。

これを受けて、バイデン大統領は2021年に「ウイグル強制労働防止法」に署名し、サプライヤーが強制労働を行なっていないことを企業が証明しない限り、新疆ウイグル自治区の製品を米国に輸入することを禁止した。この法律は2022年6月から施行されている。

しかし「抜け穴」も存在する。個人輸入800ドル以下の商品は非課税対象となり、米税関・国境警備局(CBP)の調査を避け輸入が可能になる。さらに、関税や輸入関税を回避することで、これらのデジタル・マーケットプレイスは製品を低価格で販売することができ、地元の小売業者よりも競争優位性を確立することができる。

強制労働が指摘されるSheinとTemuもこの抜け穴を利用し、何千もの小包を米国の顧客に直接発送していると非難されている。

6月に発表された議会の調査結果によると、この規定に基づく輸入小包の30%以上をSheinとTemuが占めた。その半数近くが中国からのものであったという。

TikTokは昨年11月、既存のアプリ内ショッピング機能「TikTok Shop」をひっそりと導入し、ベンダーが販売手数料を支払って商品を販売できるようにした。しかし、ウォール・ストリート・ジャーナルによると、新しいマーケットプレイスでは、TikTokが商品を保管・発送し、取引、物流、カスタマーサービスを行う。

さらに、TikTokは英国版アプリで「Trendy Beat」と名付けられた新しい小売機能をテストしている。商品は中国から発送され、TikTokの親会社であるバイトダンスの子会社が販売する。TikTokの広報担当者は、米国では新しい機能をテストしていないと主張しているが、5月に提出されたTrendy Beatの商標出願は、ソーシャルメディア企業がその準備を進めている可能性を示唆している。

ルビオ氏は、自身が6月に共同提出した「輸入の安全および公正に関する法律(Import Security and Fairness Act)」を議会で可決するよう求め、今こそTikTokを禁止する時だと述べた。

「中国共産党が所有する携帯電話アプリと、わが国の経済的健全性と道徳的安全性のどちらが重要なのか?」と問いかけた。

エポックタイムズはTikTokにコメントを求めたが、本記事掲載までにコメントは得られなかった。

国家安全保障への懸念

1億5千万人以上の米国人ユーザーを抱えるTikTokに重大なセキュリティ上のリスクがあるとして、複数の州は公的機関が所有する機器での使用を禁止している。

また、中国では国家情報法に基づき、中国企業は要請に応じて当局にデータを提供することを義務付けられていることから、米議員らは警戒を強めている。

3月に行われた上院情報特別委員会の公聴会で、FBIのレイ長官は、TikTokは「国家安全保障上の懸念が叫ばれている」と指摘。中国共産党が米国内の数百万人の思考を操作するツールとして使用する可能性があると述べた。

マーシャ・ブラックバーン上院議員も、ルビオ氏と同様、米国での全面禁止を求めている。

2023年7月19日、連邦議会議事堂での記者会見で発言するマーシャ・ブラックバーン上院議員 (Anna Moneymaker/Getty Images)

「中国共産党はTikTokを使って米国のデータを盗んでいるだけでなく、私たちの製造業に影響を与えるために手を組もうとしている」「彼らは国家安全保障上のリスクであり、中国共産党の管理下にある間は米国に居場所を与えるわけにはいかない」と述べた。

Eva Fu
エポックタイムズのライター。ニューヨークを拠点に、米国政治、米中関係、信教の自由、人権問題について執筆を行う。