「学校の食堂で、また異物が出た」今度は、厨房にあるはずもないコンドーム=中国 広州

2023/07/25
更新: 2023/07/25

【閲覧注意】本記事には、不快な映像や画像があります。ご注意ください。

今月17日、広東省広州のある職業学校の食堂で出された料理のなかから、またもや衝撃的な異物が出てきたことがわかった。

「また」と書かねばならないのは、最近の中国で、学校や病院の食堂の料理から、とんでもない異物が出てくる事件が続いたからだ。

前回(先月27日)は重慶の病院食堂が出す弁当のなかから、前々回(先月1日)は江西省の職業大学の学食から、いずれも前歯のついた「ネズミの頭」が出てきた。

今回、学食のなかから出てきた異物というのは、ネズミの頭でも尾でもない。ネットに拡散されている現場動画を見る限り、これはどう見ても男性用避妊具の「コンドーム」である。

 

「見え見えのウソ」は毎度のこと

2回続いた「ネズミの頭」の不快な記憶がまだ新しいうちに、またも「異物」が現れたため、この事件はネット上で瞬く間に炎上した。

しかし、当局の「見え見えのウソ」だけは変わらない。世論の注目もあり、なにか言い訳をする必要に迫られた当局と学校側は、どう見てもコンドームである異物について「これはアヒルの眼球膜(瞬膜という半透明の膜)だ」と主張した。

前々回の「ネズミの頭」の時、学校側は出てきた異物を「これは(食べられる)アヒルの首だ」と主張した。もちろん後で訂正され、恥をかくことになる。

では、今回はどうか。動画投稿の翌日(18日)によると、現地の市場監督管理局まで介入して、学校食堂を一時閉鎖し、検査のために問題の異物を第三者機関に送った。

その次の日(19日)広州市当局は学校食堂の食事に混入していた「異物」は、コンドームではなく「アヒルの眼球膜だ」と発表した。

つまりは、第三者機関で検査(?)してまで「食べられないモノが入っていたわけではない」と苦しい言い訳をしたのだ。しかし、その一方で、なぜか調理場のスタッフ全員を減給処分にし、料理を担当した調理師を解雇したと発表している。

はじめに「異物」を発見して動画を撮影した学生は、学校側や当局の主張を「受け入れられない」と不満を示した。もちろん当該の学生ばかりではなく、当局の「こじつけ的な主張」に納得できないネットユーザーは多い。

さらには「アヒルの眼球膜であることが本当ならば、なぜスタッフ全員を減給し、調理師をクビにしたんだ?」と、現場スタッフを処罰したことについて、かえって疑問の声が広がった。

 

(比較図。写真左は広州の職業学校の学食から出てきた「コンドーム」。写真右は本物の「アヒルの眼球膜」。)

まだ続く「鹿を指して馬と為す」の茶番

6月1日、江西省南昌市のある職業大学で、学生食堂の料理から「ネズミの頭によく似た異物」が出てくる事件が起きた。

当初、学校側および現地の市場監督管理局は「これは(食べられる)アヒルの首だ」と主張して責任を認めようとしなかった。しかし、江西省調査団による分析の結果、やはり「ネズミの頭」であることが判明。学校側と管理局も、その事実を認めた。

(江西省の職業大学で、学生食堂の料理から出てきた「ネズミの頭によく似た異物」の動画)

江西省の事件の後、中国のネット上では、「指鹿為馬(鹿を指して馬と為す)」にちなんで「指鼠為鴨(ネズミを指してアヒルと為す)」という新語まで登場した。

世間では「ネズミの頭をしたアヒルのおもちゃ」など、事件にちなんだ関連グッズが驚くほどのスピードで製造され、発売されていた。しかし、ネット上の関連グッズはその後、当局の取り締まりに遭い、あっという間に封殺される。

それにしても、何の政治性もない「ネズミの頭のおもちゃ」を取り締まる当局というのは、一体何なのだろう。それこそ(人間の)頭は正常なのか、と疑わずにはいられない。

いずれにせよ、前回の「指鹿為馬(鹿を指して馬と為す)」にちなんで、今回は「指套為鴨(コンドームを指してアヒルと為す)」の新語がつくられた。

流行語とは、まことに自由闊達なものだが、自国の恥ずべき部分から飛び出てくる新語には、中国人といえども苦笑しているに違いない。

学生を黙らせ、鎮静化はかる当局

関連動画をネットに公開した学生が、学校あるいは当局から何らかの圧力を受けていることも判明した。

この学生は、中国メディアに対し「学校側と第三者機構は、異物がアヒルの眼球膜であることを確認した。関連部門も調査に介入したし、私たち学生は、何もことを大きくしたいのではない」と述べた上で、「この騒ぎが続けば、私たちの日常生活にも支障が出るのです」と苦しい胸の内を語っている。

6月1日の江西省の学生も同様に、「やはりネズミの頭ではなく、アヒルの首だ」と後に撤回し、謝罪した。おそらくその時、学校側から何らかの圧力がかかったのだろう。すさまじい就職難の現在、学生はどうしても弱い立場に置かれやすい。信念を貫くよりも我が身の安全をはかった学生を、非難することはできないだろう。

前回の教訓から学んだのか、今回は当局による公式通告の後、中国のSNS上には公式発表を支持する「世論」が迅速に形成された。一方で、公式発表と一致しない言論はブロックされている。当局は、この件を早く鎮静化させようと躍起になっているようだ。

いずれにしても、学校や地方の管理当局といった「権威機構」による二転三転する主張に、人々は呆れかえり、政府が発する情報の信頼性はますます低下する結果となった。

ただし、はじめにネズミの頭を「アヒルの首」だと主張していた当局者に対する処分は、何もない。ともかく、うやむやに終わらせることだけを考えているらしい。

そもそも「なぜ異物が混入するのか?」

そもそも、なぜ「異物が混入する」のだろうか。その根本的な疑問を、覚えずにはいられないのだ。

もちろん、多数の人に食事を提供する食堂の調理場は(たとえ実態はどうであっても)衛生環境が整った、清潔な場所でなければならない。つまり、その場所で作られた料理から「ネズミの頭」が出てきては、ならないのである。

しかし「ネズミの頭」は出た。あってはならないことが現実にあったのだが、これはただ単に「中国が不衛生な国だから」であろうか。

食堂の調理場といえば、山のように食材があるし、日々の生ゴミも大量に出る。料理に混入するのは論外としても、ネズミが調理場に出没すること自体は可能性として低くはない。つまり、実際あってはならないことだが、「調理場」と「ネズミ」は全く無関係なものだとも言えないのだ。

だが、今回ような「調理場」と「コンドーム」との関係は、どうであろうか。

この二つは、全く無関係なものだと断言してよい。ネズミやゴキブリではなく、そもそもコンドームは「調理場に出没する生き物」ではないのである。

話を簡潔にまとめるならば、それら料理の「異物」は、自然に混入したのではなく(料理人と断定することは避けるが)何者かが「故意に入れた可能性が高い」と見るべきだろう。

「道徳の欠如」が末期ガン化した中国社会

「故意に入れる」という目的が何かは、現段階では分からない。利害がからむような具体的な攻撃対象があるのかも知れないが、その背景についても、今は知ることができないのだ。

ただ、誰もが撮影機能つきのスマホを持ち、ネット上へ瞬時に投稿できる今の時代においては、それがネズミの頭であろうがコンドームであろうが、写真付きの衝撃的な情報として即時に世界中へ伝わるのである。

そうした世間の「騒ぎ」を楽しむ、一種の愉快犯がいるとするならば、あるいは今後も「料理から、こんなモノが出た!」は繰り返されるのかもしれない。

だとすれば、次は何か。蛇かムカデか。想像したくもないが、皿に乗るなら何がでてきてもおかしくないのである。

もう20年ほど前のことだが、中国語に「地沟油(ちこうゆ)」という言葉が現れた。実態としては、もっと以前からあったはずだが、社会問題として知られるようになったのは、およそその頃である。

「地沟油」とは、ドブ川のような汚い排水溝の底から集めた廃油を濾過し、食用油としてヤミ売りする「恐るべきリサイクル油」のことである。この「地沟油」が、現代の中国でも、かなりの量が流通しているらしいのだ。

そのほか、昔から知られていることだが、中国で売られている安価な焼酎には、飲めば失明するような劇物(メチルアルコール)が入っている。見た目のよい果物をうっかりかじれば、ひっくりかえるほど高濃度な農薬がついている。

「だから、十分に注意しなさい」と、親切な中国人が日本人に教えてくれるほどであるから、これも間違いはないだろう。

食品公害ばかりではない。昨今はあまりに多すぎて、こちらの感覚が麻痺しそうになる中国の「おから工事(手抜き工事)」も、究極的な根源は同じであるかもしれないのだ。

鉄筋がほとんど入っておらず、手で握っても崩れる「おから」のようなコンクリートであることから「おから工事(豆腐渣工程)」と呼ぶ。そこに住めば、生命の危険さえ生じるような建築物である。単なる手抜きではなく、ほとんど犯罪にちかい粗悪建築なのだ。

つい最近では、黒竜江省のチチハルで23日、中学校の体育館の屋根が「完全崩落」し、館内でバレーボールの練習をしていた生徒のうち少なくとも11人が亡くなった。その原因が、体育館の「おから工事」のせいなのか、屋根の上に建設資材を置いていた「無知」によるものなのか、あるいはその両方なのかは、現時点では特定できない。

ただ、一つだけ言えることは、今の中国では、人間の道徳や倫理観があまりにも欠落したため、自身の職務に責任をもたず、その成果を社会や他者のために役立てる利他意識を忘れ、ただ自分の目先の利益だけしか関心を持てなくなっていることが、社会全般における絶望的な「歪み」となって出現している。

言わば「道徳の欠如」が、中国社会のあらゆる場面で末期ガン化しているのだ。

中国共産党の統治を1949年から数えれば、すでに74年になる。その中共74年間のなかで肯定的に評価できる時間はほとんどないが、とくに最近の30年間において、中国の人々は、本来もっていた素朴で優しい人間性の根幹まで変形させてしまった。

体育館の屋根の下敷きになって死んだ中学生とそのご遺族には、あまりにもお気の毒で、かける言葉もない。

ただ、今の中国で発生する不条理な事件の全てにおいて、その根底には「道徳の欠如」「モラルの崩壊」「ヒューマニズムの喪失」といった悲しむべき共通項が見出せるのだ。

中国と中国人をここまで狂わせ、不幸にした責任は、ひとえに中国共産党という悪魔的な政党とその思想にある。再生の可能性があるとすれば、中共を完全に捨てるしかない。

李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!
鳥飼聡
二松学舎大院博士課程修了(文学修士)。高校教師などを経て、エポックタイムズ入社。中国の文化、歴史、社会関係の記事を中心に執筆・編集しています。