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今月27日、重慶市秀山県の中医院(漢方医学による病院)の食堂が出す弁当のなかから、またしても「ネズミの頭」に酷似する異物が出てきたことがわかった。
関連動画がSNSに投稿されて注目を浴びた後、その日の夜には、地元の監督部門が「異物はネズミの頭だと確認した」とする通報を出している。
関係者によると、問題の食堂は病院の直営ではなく、政府のウェブサイトの入札を通じて入ってきた外部企業だという。
前回と同じく「アヒル料理から出た」
さらに、これははたして偶然なのか。今回の「ネズミの頭」も、前回と同じく「鴨(アヒル)料理」のなかから出てきたのだ。
前回というのは今月1日、江西省南昌市のある職業大学で、学生食堂の料理から「ネズミの頭によく似た異物」が出てきた事件のこと。
当初、学校側および現地の市場監督管理局は「これは(食べられる)アヒルの首だ」と主張し、ネズミの頭であることを完全否定していた。
しかし、後に省調査団による分析の結果、やはり「ネズミの頭」であることが判明し、学校側と管理局もその事実を認めた。関係者はそれぞれ処分されて一件落着。当局による「安っぽい正義」が演出された。
ところが、これだけでは終わらなかった。
中国のSNS上では今も炎上している「ネズミを指してアヒルと呼ぶ事件(指鼠為鴨事件)」の記憶が新しいなか、なんと1カ月も経たないうちに、もう次の「ネズミの頭」が出てきたという。これは一体、どういうことだろうか。
「ネズミの頭」は故意か、偶然か?
その「ネズミの頭」が故意に混入されたのか、本当に偶然(?)まぎれ込んだのかは、現段階では分からない。
ただ、あまりにも似た事件が重なったことに、多くの人は首をかしげるばかりだ。まして病院の食堂の弁当から「ネズミの頭」が出たら、社会への影響も小さくはない。
誰かが意図して入れたのなら、その動機もふくめて、悪質な犯罪である。もしもネズミの頭が「偶然に入った」なら、病院の食堂の厨房はどんな衛生管理をしているのかと、その責任が厳しく問われることになる。
同様の事件が立て続けに起きたことで、この話題の関連ネタは瞬く間に中国SNSウェイボー(微博)のホットリサーチの1位にランクインした。
コメント欄には「さすがに今回は、アヒルの首とは言わないだろうな」といった皮肉たっぷりの声が目立っている。
ネズミ頭の「アヒルの玩具」が販売禁止に
今月1日の事件への世論の注目度に乗じて、商機に敏感な中国の企業は、信じられないほどの速さで「ネズミ頭をつなげた首」のアヒルの玩具を製作し、発売している。
だが、発売開始後まもなくして、なんとこの玩具は販売禁止。中国のネット上では、軒並み「封殺」に遭っている模様だ。
関連商品のなかでも、とくに「ネズミ頭の首をしたアヒル」のキーホルダーが大人気だった。ところがある時から、中国の複数の大手ネットショッピングプラットフォームから関連商品が一斉に削除された。
関連キーワードで検索をしても目的の商品が見つからなかったり、たとえ商品が表示されても、なぜか購入できなくなっているのだ。
何の政治性もない、たかが「アヒルのおもちゃ」に、この過剰反応である。
複数のプラットフォームで、同時に「在庫切れ」の事態が起きることは考えにくい。たとえ本当に大人気の結果として「在庫切れ」になったとしても、そこは金儲けにかけては貪欲な中国人である。すぐに追加発注するなどして、対策を講じるはずだ。
したがって、関連商品自体が削除されているという現状から見て、本当に「在庫切れ」である可能性は低く、そこに何らかの政治的な力が働いたと考えられる。
「当局は、何を恐れているのか?」
そのほか、考えられる原因の1つに「著作権侵害」という指摘もあるが、その可能性は低いだろう。もし本当に「著作権侵害に関係した商品削除」であれば、著作権を持っている本家本元が、この爆売れチャンスを逃すはずがないからだ。
そのため、ネット上から関連商品が「消えた」のではなく、大きな権力によって徹底的に「消された」といったほうが適切であろう。その背後には「当局」の影がちらつく、と分析するのが一番しっくりくる。
なお、中国メディアの報道によると、江西省の学生食堂を運営する企業の親会社は、中国で700以上の学校食堂を運営しているという。
仮に「故意にネズミの頭を混入させた」とすれば、その事件の背後には、どれほどの利権がからんでいるのか。真相解明への道はまだ遠く、闇は相当深い。
さらには、関連商品封殺の事態をうけ、華人圏では「たかが玩具だろう。当局は、何を恐れているのか?」といったコメントが非常に多く、目立っている。
いまネット上には「やはり封殺される運命からは逃れられなかったね」「世論の圧力で、当局にネズミの頭だと認めさせた。ここまでは世論が勝った。だけど最終的には、権力側の勝利だった」といった嘆きが広がっている。
これも「チャイナリスク」の典型例
「アヒルの玩具」に対する販売禁止の命令が、本当に公権力によるものかどうか、その確証はまだ明らかではない。だが、いずれにしても関連商品を製作し、販売するため仕入れた企業にとっては「天から突然降ってきた災難」であることは間違いないだろう。
近年、各国のメディアでもしばしば「チャイナリスク」について議論されてきた。今回の事態もまた、典型的な「チャイナリスク」と言える。
つまり、例えば外国企業が中国で正当なビジネスを行おうとしても、その途中で、公権力による不条理な妨害を受けるのである。
中国側の企業は、往々にして契約を守らず、約束を果たさず、支払いを延ばせるだけ延ばして時間をかせぎ、過大な要求だけを提示してくる。
それは中国側が打つ「定石」であって、彼らにとってはいつもの手の内なのだが、ときにそれは日本人が考える商業倫理とはほど遠いことがある。要は「もっと投資してくれ」が本音なのだ。
その中国的カオスの泥沼に外国企業(日本企業)が足を取られたとき、絶妙のタイミングでからんでくるのが「中国の公権力」である。
例えば、あるプロジェクトの途中で「我が国の法律に抵触するので、このままでは許可できない」と難癖をつける。比喩的に言うなら、ゴールポストを突然動かすのだ。それを克服するには、多額の追加金(賄賂をふくむ)の必要性をにおわせてくる。
いまや中国の地方政府は、どこも深刻な財政難であるという。警察までもが交通違反のペナルティを乱発して、やたらに罰金を稼ごうとする。
公権力とは本来、社会を正常に機能させるため、公正かつ適切に行使されるべきものである。しかし、いま中国は社会そのものが重篤な病的状態であるため、公権力も完全に狂っているのだ。現代の「チャイナリスク」の病根は、そこにある。
「誇りを傷つけられた」も常套手段
はじめに起きた「ネズミの頭」事件では、当局による、誰が見てもウソである「これはアヒルの首だ」が影響して、この食品「アヒルの首(鴨脖)」についての民衆の不信感やマイナスイメージが一気に膨張してしまった。
その結果、中国国内で7千ほどの加盟店を有する「アヒルの首」専門店「絶味鴨脖」の株価が事件の数日後3%以上、下落した。そもそも無関係な「絶味鴨脖」にしてみれば全く迷惑な話であり、その損害額は計り知れない。
中国人が一方的に「中国の誇りを傷つけられた」と憤り、外資系企業を狂ったように糾弾する行為は「辱華(ルゥフア)」と呼ばれている。
「中華(我われ)に恥辱を与えた」という、まことに観念論的で取り付く島もないような言いがかりであるが、これを使って民衆のナショナリズムを煽ると、なかなか厄介なことになる。過去には、トヨタやベンツも「辱華」で難癖をつけられ、その後の対応に苦しんだ経験をもつ。
中国でしばしば炎上する「辱華」について、裏を返せば「中国人のコンプレックスと自信のなさの表れだ」と分析する識者は多い。
ただ、こうした「辱華」や、かつて日本料理店や日本資本の店舗を破壊した「反日デモ」も、必ず火付け役や扇動役がいる。あろうことか、そうした扇動役が私服の警官であったりもするのだ。
このように、チャイナと関わりのあるビジネスでは、いつどこで「地雷」を踏むか、全く予測不可能であると言ってよい。
外国企業から見た「チャイナリスク」について、その性質やニュアンスが近い言葉といえば、どうしても「陰謀」や「罠」が思い浮かぶ。
とくに日本人は、彼らの言う「日中友好」や「ウィンウィンの関係」にはほだされないよう、よくよく注意しなければならない。
さて、三つ目の「ネズミの頭」が出てくるか。今は全く不明だが、否定もできない。
もしも「三つ目」が出てきたら、それはもはや自然混入ではなく、何らかの「陰謀」の存在を想定する必要があるだろう。
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