6月初旬、オランダのアドリアンセンス経済大臣は訪米期間中、中国の軍事転用を念頭にした新たな半導体輸出制限措置を発表する予定だと明らかにした。日本の西村経済産業大臣の言葉を引用し、日本も同様の仕組みを導入していると述べた。
「主な懸念事項は(半導体技術の)軍事転用だ」とアドリアンセンス氏は述べた。「オランダは米国や日本、韓国とのサプライチェーンを重視し、保護する責任を担っている」とし、日本の西村康稔経済産業大臣が以前発表した声明を引用した。
日本政府は7月から中国への半導体製造機器23種の輸出を制限する。軍事転用の恐れがあるかどうかの審査を強化するという。「我々は技術国家として、国際的な平和と安定に貢献する責任を果たしている」と西村氏は4月の会見で語った。
日蘭は先端品向け製造装置の輸出管理についても一致させているほか、日本のラピダスとASMLの連携強化する覚書を21日に東京で締結した。
半導体分野の対中政策で足並みをそろえるのには、中国の技術盗用や軍事転用問題が背景にある。蘭半導体技術大手ASMLは、中国の技術窃盗によって辛酸を舐めた。同社が挑んだ中国の技術窃盗をめぐる裁判は、世界の半導体分野が直面する脅威を表している。
「スパイは最大のコスパ」
ASMLは今年2月発表の2022年度の年次報告書で、中国によるASMLの特許技術に関するデータの不正利用について明らかにした。
それによれば、ASMLの技術が米国の新興企業XTALを仲介し、北京拠点の東方晶源微電子科技の手に渡っていた。ASMLの元エンジニア・俞宗強氏が2014年に2社を設立させ、ASMLの技術を中国に移転させたという。
ASMLの「重要なソースコード200万行」が盗まれ、東方晶源微電子科技とXTALに共有されていた。ASMLが10年かけて開発した技術が、たった2年で複製されたという。
中国共産党のスパイ活動は「コストカット」だと、元捜査官の坂東忠信氏はエポックタイムズの取材に答えている。「1から研究開発する場合と、既製品を入手して開発する場合とを比べた場合、後者のほうが8割ほどコストカットできる。研究費用の上乗せがない分、安く製品化できるため、真面目に開発してきた側との価格競争で勝てる」。
オランダの取り組み
国家の安全保障にとって、半導体は軍事から経済に至るまであらゆる機械分野の発展に不可欠だ。このため政治的な要因も絡んでくる。オランダの半導体議論の中心は、おのずと、欧州企業の中でも市場価値の高いASMLに向けられる。
同社の主要な顧客は台湾だが、北京、上海、深センなどの主要な中国都市にも12のオフィスを構え、1000人以上の従業員を抱える。昨年、中国向けの売上は同社の総売上の14%を占める。
3月下旬、ASMLのピーター・ウェニンク最高経営責任者は北京で中国高官と会談した。中国は「高度な開放を続ける」ことを約束したが、ASMLが中国市場でどのような取引を行えるかについては詳細を示さなかった。
こうした不透明感からか、ASMLは新たな工場建設計画は中国を除くアジア圏を検討しているという。3月のロイターの独占報道によれば中国の占有率を減らす、より広範で長期的な戦略の一環であると関係筋が語った。
このほかの対策として、オランダ教育省は6月初旬、技術分野の専攻を予定するEU外からの外国人留学生を対象にセキュリティリスクの審査を行う法案を検討している。ASMLが世界で牽引する極端紫外線(EUV)露光装置も輸出規制している。
米国は昨年10月、対中輸出管理規制を発表した。審査強化や申請制度を導入することで「中国軍の現代化の寄与と人権侵害への加担」の排除を図る。日本とオランダを含む同盟国に対しても同様の措置を導入するよう呼びかけた。
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