史上稀に見る惨劇から34年。東京・新宿駅前では4日、犠牲者を弔うキャンドル集会が行われた。例年以上に若者が目立ち、集まった人数の多さに主催者側も驚いた。
「中国共産党による独裁政権が続けば、中国人に限らず全世界に災いをもたらすことに、国際社会はやっと気づき始めた」。こう話すのは天安門事件当時の学生リーダー・周鋒鎖(しゅう・ほうさ)氏(55)だ。
89年の事件以降、中国共産党は市場とカネにものを言わせ、欧米諸国の批判を封じてきた。仲間の無念を背負いと祖国に残された人々への想いがあるだけに、周氏の言葉は重い。
中国共産党の支配が進む香港では、共産主義の本質が如実にあわられている。天安門事件以降、香港中心部のビクトリア・パークでは毎年追悼集会が行われてきたが、香港版国家安全法施行後は開催できていない。在日香港人のウィリアム・リーさんは「香港では街中で一人で花を持って立つことすら許されていない」と厳しい現実を口にした。
中国本土では天安門事件に関する情報が検閲され、学校教育で扱うことが禁じられている。そのため、国外に出て初めて知るという青年も多い。
「独裁政権の中で一番許せないことは、人がいとも簡単に殺されることだ」とウィリアムさん。「天安門事件も文化大革命の時もそうだ。本来避けられる人の死を、避けるどころか故意に殺すようなことは一番許せないと思う」。
在日ウイグル人のサウト・モハメド氏は「天安門事件の後、法輪功の人々や人権弁護士、地下教会、そしてウイグル人が弾圧の対象となった」と強調。自由を守るために、中国の人権問題と共産党の非人道的な弾圧政策に関心を持つべきだと語った。
こうしたなか、真実を知った中国人の若者の意識に変化が現れ始めている。東京大学の阿古智子教授は「去年11月に新宿で白紙運動(の支援)が行われたが、天安門事件の後に生まれたような若い人たちも参加していることに、非常に感銘を受けた」と語った。
モデルの平野雨龍さんは「日本人の心が動いてきている」と述べた。香港のデモや白紙革命、米国によるウイグルジェノサイド認定などの出来事を通して中国問題への関心が高まり、「日本人も中国の民主化を期待している部分はあるのではないか」と指摘した。
5月のG7広島サミットでは、中国共産党の経済的威圧に対処するため、供給網の再構築を進めることで一致した。ウィリアムさんは、中国共産党に強くもの言えるように、日本含む諸外国は経済面のデカップリングを行うべきだと主張した。
周鋒鎖氏は取材に対し「中国人が迫害されているだけではない。中国に言論の自由がないため、コロナのパンデミックは全世界に広まった」と指摘。「歴史的に観ても同じようなケースがある。ヒトラーがユダヤ人を迫害したときも国際社会は見て見ぬふりをした。その結果、全世界が脅威に晒された」と警鐘を鳴らした。
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