中国で続出する「忽然と消える人」 年間100万人の失踪者が、監視大国でなぜ見つからない?

2023/05/01
更新: 2023/05/26

ある日突然、理由もなく人が消える。近年、中国のSNS上には失踪した人に関する情報の提供を呼びかける通知があふれている。失踪者は、子供に限らず、中高生や大学生。さらには働き盛りの青年から壮年期の世代までと、非常に幅がある。

「中国は防犯カメラで埋め尽くされた監視大国。それなのに、なぜ我が子は見つからないのか?」。いぶかしがる声が、家族の悲痛な叫びとともに広がっている。

外食中「トイレに行く」と言ったきり行方不明に

常運さんは19歳の大学生。4月1日夜、河南省商丘市の夜市でクラスメートと食事をしていた時、「トイレへ行く」といったまま行方がわからなくなった。

今、常さんの「尋ね人広告」がネット上で拡散されている。そのコメント欄には「拉致されて、臓器収奪の犠牲になったのではないか?」と書き込む人もいる。

常運さんの「尋ね人広告」(NTD新唐人テレビの報道番組より)

 

河のほとりで見つかった携帯電話

広東省の朱丹燕(30歳)さんも、3月29日午後2時30分に勤務先の会社から姿を消したまま行方不明になり、未だに帰宅していない。

家族は、明るい性格の女性である朱さんが失踪した原因が全く分からず「今のところ、河のほとりで彼女の携帯電話が見つかっただけで、ほかには何の手がかりもない」と訴える。

中国では、携帯電話は日常生活に必須のアイテムである。それを置いたまま、自分の意思でどこかへ行った可能性は極めて低い。

 

(朱丹燕(30歳)さんの「尋ね人広告」、NTD新唐人テレビの報道番組より)

 

中国の公式データによると、国内における毎年の失踪者は百万人を超えるという。通常の場合、反体制派の人物や民主活動家、あるいは地方政府の不正を中央に訴える陳情者であれば、どこにいようと中国の警察は即時に居場所を特定できる。

つまり、捜査当局が本気であれば、監視カメラが無数に設置され、市民の通信を完全に傍受している監視大国の中国で、1人の失踪者を探し出すのは決して難しいことではない。しかし、失踪者が(遺体になってからではなく)無事に発見されるケースは極めて少ないのが現状だ。

「(中国共産党の)政権維持に影響を与えない失踪者に、当局は関心がない。当局は国民の命を虫けらのようにしか思っていないのだ」。新唐人テレビ(NTD)は市民の蘭さんの話を引用して、このように伝えた。

「臓器移植」との関連性はあるか

米政府系放送局のラジオ・フリー・アジア(RFA)は昨年11月22日付の報道のなかで、在米の人権弁護士・呉紹平氏の話を引用して「中国の失踪者と臓器移植との関連」について報じている。

呉氏は「中国では、失踪者が毎年百万人を超えている。そのなかで、臓器狩り(強制臓器収奪)に関連するケースは少なくないだろう。しかし、当局がそれを公にすることはない。なぜならば、その背後には巨大な利益が絡んでいるからだ」と指摘した。
 

 

巧妙で悪質、新たな「誘拐の手法」が明らかに

近頃では、中国の人身売買業者がつかう「10の新たな誘拐手法」について暴露したセルフメディアもある。

その手口のなかには、例えば女性を車で拉致する方法として「(誘拐するターゲットに近づき)周囲の目をごまかすため『(おまえは俺の)愛人だ』と罵り、暴力を振るった後で、用意した車に無理やり押し込んで拉致する」ケースのほか、ターゲットを「家出した妻だ(or娘だ)」と主張して、偽のパトカーを使って連れ去るパターンもあるという。

また、インフルエンサーやテレビ局の人物になりすまし、「取材」と偽って乗車させる手口や、高額な報酬が書かれた偽の求人情報を見せて「ぜひ面接に来るように」と指示するなど、巧妙かつ悪質な誘拐の手口も明らかになっている。

いずれにしても、それらの失踪者は、自分の意思で家族のもとを離れたのではなく、他者からの理不尽な暴力によって拉致された、あるいは騙されて連れ去られたものと見てよい。拉致する側の目的は、臓器狩りをふくむ人身売買など、組織的な凶悪犯罪との関連性が濃厚である。

(荷物を運ぶトラックの側面を埋め尽くす『尋ね人広告』は、多くが子供の写真。中国人調査記者・趙蘭健氏のツイッターより)

 

(失踪した我が子の写真を印刷したシャツを着て、捜索への協力を呼びかける父親たち。ネット投稿動画)

 

(子供が失踪した親をサポートするため、心優しい露店の経営者が「この情報をSNSへシェアしてくれた人に、食料品をプレゼントするよ!」と呼び掛けている)

李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!
鳥飼聡
二松学舎大院博士課程修了(文学修士)。高校教師などを経て、エポックタイムズ入社。中国の文化、歴史、社会関係の記事を中心に執筆・編集しています。