2022年2月に始まったロシア・ウクライナ戦争(ロシアのウクライナ侵攻)は、まもなく1年となる現在も戦火が止むことはない。こうした戦争や紛争などで祖国を追われ、やむなく難民となる人の数は増え続けている。
その一方、中国では、さまざまな理由により海外への「政治亡命」を求める中国人が増加している。
UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)の統計によると、近年、外国に「政治的庇護」を求める中国人の数は年々増加している。その申請数から見ても、2021年は11万8476人と過去最高を記録。10年前と比べると、約10倍に増えている。
今の中国は、対外的な戦争もなく「小康社会(ややゆとりのある生活)の完成」が宣言されたはずだが、それでも「海外への脱出熱」が沸き起こっているのは、なぜか。
その理由を端的に言えば、特に若い世代にとって、中国共産党統治下の中国は腐敗や不条理があまりにも多く、自身の明るい未来を築くことができないだけでなく、生命の安全や精神の健康を維持することさえ難しい、全く「希望の持てない国」になっているからだ。
したがって、実際のところ、個別的な迫害などによって他国に政治的庇護を求める「政治亡命」というよりも、中国そのものが極めて不安定化していることに海外脱出希望者の本音があると言えるだろう。
中国語でいう「用脚投票(足による投票)」の現象が今起きている。
「用脚投票」とは、彼らは自由主義国の市民のような投票権をもたないため、共産主義の中国を離れ、別の国へ行くことによって自らの意思を表明しようとすることを指す。自分が住みたい政治体制を、足(移動すること)で選択するのである。
そのような彼らが国外脱出にかける「情熱」は、中国の新型コロナウイルスによるパンデミックの影響で各国が入国・渡航制限をしても、少しも冷めていない。
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