中国のゼロコロナ政策に対する抗議運動「白紙革命」の広がりを受けて、北京や広州などの大都市では規制が緩和され始めている。当局が民衆に譲歩したとの見方があるものの、複数の中国問題専門家は大紀元の取材に対し、中国共産党は監視技術を利用してデモ参加者を絞り込み、目立つ者を「精密攻撃」する恐れがあると分析する。
北京市や深セン市では12月初旬、公共交通機関を利用する際の陰性証明書の提示を不要とすることが発表され、広州市では風邪薬を購入する際の陰性証明書の提示が不要となった。中国紙・第一財経によると、5つの大都市の外出制限の緩和により、少なくとも1億人以上の人々が自由に移動できるようになった。
目立つ者を見せしめに
中国問題専門家で大紀元コメンテーターを務める王赫氏は4日の取材で、中国共産党は新型コロナウイルスの厳しい感染対策について一定の譲歩を見せる「懐柔策」を取りつつも、白紙革命を強く取り締まる「強硬策」に出ると見ている。
「中国共産党は弾圧の手を緩めず、警察力を動員して抗議者を逮捕している」と王氏は語った。「白紙革命を中国共産党は不安視しており、各行政機関で包括的な取り組みを進めている。11月28日に開かれた党政治法務委員会では各省や各市のトップが個人的な立場と方針を表明した。中国当局が白紙革命を最重要課題と考えていることを垣間見ることができる。大きな譲歩とは言い難い」。
王氏はまた、中国共産党がいつもの「お家芸」で白紙運動を弾圧すると分析。「抗議デモ参加者のうち、目立って活動する者を見せしめに逮捕することで、他の抗議者らを強くけん制するだろう」「今や中国共産党の監視能力は昔よりはるかに強力だ。抗議デモ参加者が何をしているのかほとんど筒抜けの状態だ」と指摘した。
ビッグデータを利用した「精密攻撃」
在米中国問題専門家の章天亮氏は3日、YouTube上に投稿した動画の中で、ゼロコロナ政策の緩和は一時的に事態を鎮静化させる当局の「懐柔策」であり、事後に抗議参加者を「報復する」との見方を示した。
章氏によると、中国共産党が再び戦車を街頭に繰り出すことは考えにくいが、抗議デモ参加者を個人レベルで識別・特定し、弾圧を加える「精密攻撃」を行う可能性はあるという。そして12月3日付のボイス・オブ・アメリカ(VOA)の報道を引用し、中国警察は顔認証や携帯電話情報、内通者からの報告という3つの手段から抗議参加者を特定していると指摘した。
時事評論家の唐靖遠氏は先月30日の取材で、中国共産党は警察や武装警察、特殊警察を動員していわゆる「維穏活動(社会の安定を維持する名目で行われる弾圧行為)」を行い、ビッグデータを使用して参加者を順次逮捕するだろうと述べた。
「ビッグデータや顔認識システムなどの監視システムを利用すれば、技術的には現場にいたほとんどの人を把握し特定することはそれほど難しくはない」とした。そして、抗議者らを逮捕し、裁判で有罪判決を出せば、社会的な抑止力を生み出せると述べた。
米上院議員42人が警告
超党派の米上院議員42人は1日、中国の秦剛駐米大使に書簡を送り、中国で広がっている抗議活動に対して暴力的な弾圧を行わないよう警告した。
書簡は共和党のダン・サリバン議員と民主党のジェフ・マークリー両議員が主導したもの。議員らは書簡のなかで、「中国での抗議活動を非常に注意深く観察しており、中国当局の抗議活動に対する反応も注視している」と強調し、武力弾圧に乗り出す可能性がある中国政府を強くけん制した。
また書簡では、1989年に北京の天安門広場を中心に起こった学生主導の民主化運動に対して中国共産党が暴力的に弾圧したことに言及し、「我々は、中国当局に対し、自由を求める平和的なデモ参加者に対して、再び暴力的な弾圧を行わないよう、最も強い言葉で警告する。そのようなことがあれば、米中関係にとって重大な結果を招くことになる」とした。
新疆ウイグル自治区ウルムチの高層マンションで24日夜、火災が発生し、10人が煙を吸って死亡、9人がけがをした事件があった。26日より中国各地で火災犠牲者の追悼集会が行われ、後にゼロコロナ政策への抗議運動へと発展。抗議者らは白い紙を手に、中国共産党の言論統制を非難したため、「白紙革命」「白紙運動」などと呼ばれるようになった。中国国内では、1989年の六四天安門事件以来最大の抗議運動となる。
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