米軍が沖縄の嘉手納基地に配備しているF15戦闘機を順次退役させる計画をめぐって、米共和党の4議員は1日、懸念を表明する書簡を公開した。中国共産党による台湾侵略のハードルが下がり、「インド太平洋における前方戦力の低下を招く」と訴えた。
米軍は嘉手納基地に常駐しているF15を米国に約2年かけて帰還させ、今月上旬から暫定的により新型のF22戦闘機をアラスカからローテーションで派遣する。「嘉手納での安定したプレゼンスを維持する」としたが、長期的な計画は未定だとした。
マルコ・ルビオ上院議員とマイク・ギャラガー下院議員はオースティン米国防長官宛の書簡のなかで、米軍が中国軍の脅威に対処する時期に、前線戦力となる沖縄にF15の常駐計画がないことに懸念を表明した。また計画が、日本全体に配備された約100機の米空軍戦闘機の半数余りにあたる2個飛行隊の約50機に及ぶことから、影響の大きさを指摘した。
また議員たちは、この計画が2022年国防戦略にも一致しないと批判した。10月27日に公表された米国国家防衛戦略には、中国対応を優先課題とし、侵略抑止を明確にした。同盟国については「一貫した継続的な関与や協力が、共通の利益を前進させる」と記している。
10月に北京で開かれた中国共産党の第20回全国代表大会では、習近平国家主席が政治報告で台湾統一は「必ず実現しなければならない」とし、必要なら武力行使も辞さないと宣言した。これについて議員は「中国共産党はインド太平洋覇権を確立しようとしていることは明らか。そうなれば米国の戦略的、地政学的、軍事的、経済的に破滅的な結果を招く」と危機感をあらわにした。
議員の書簡は、ローテーションへの移行は「インド太平洋における米国の前方戦力の目に見える削減につながり、侵略のハードルを下げるもの」と強調。ルビオ氏は自身のブログで、中国軍による台湾侵攻を抑止する米国の指揮力を損ない、中国に弱腰とみなされかねないとも指摘した。
浜田靖一防衛相は1日の記者会見で、米側からF15戦闘機の老朽化に伴うものと体制変更の説明を受けたことを明らかにした。
戦略的にも非常に重要な機能を持つ嘉手納基地は、防空や偵察・機体整備などの総合的な役割を担っており、東アジアにおける米空軍の重要拠点と言える。ペロシ米下院議長が訪台した8月に、中国が台湾付近で弾道ミサイルを発射した際には、同基地から電子偵察機RC135S(通称コブラボール)が離陸した。
こうした沖縄県・尖閣諸島を巡る不測の事態が危ぶまれるなか、議員らは「インド太平洋地域から撤去された部隊の抑止力と戦闘能力を代替するための具体的な手順」を示すよう求めた。また、中国による台湾侵攻を抑止できるインド太平洋地域の戦力体制を確立する政権の計画について、議会で説明するよう要求した。
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