9月中旬、カンボジア政府の指導者と法執行機関は、世界的な懸念を受けて、シアヌークビルと首都プノンペンのギャンブル中心地で違法なオンライン賭博や人身売買を行う、大部分が中国人で構成される犯罪シンジケートに対する取り締まりを開始した。 さまざまな詐欺を通じてカンボジアへと誘い込まれた輸入労働者を対象とした搾取は、カンボジアの評判を汚し、かつて繁栄していた観光産業を傷つけたとの声が上がっている。
当局は数千人を逮捕し、1,000か所以上の場所を強制捜査した。 「バンコク・ニュース」によると、カンボジアのフン・セン首相が取締りを命じる1か月前に、違法なオンラインカジノの経営で国際逮捕状が出されている、中国人の賭博王シー・ジジョン(She Zhijiang)を拘束した。 同紙が8月中旬に報じたところによると、シー・ジジョンは約32億円(2,220万米ドル)を貯め込み、33万人の賭博師を抱えて、シハヌークヴィルで主要人物となっていた。彼は中国で刑事告発に直面している。
カナダのテレビネットワーク「グローバル・ニュース」によると、この逮捕は香港、マレーシア、中国、台湾、ベトナム、その他のインド太平洋地域でも報道された。こうした国々でも、人身売買業者がアプリを使用して犠牲者を違法企業に誘い込んでいる。 多くのメディアが報じているように、抵抗する被害者はしばしば拷問されたり、他の犯罪シンジケートに売られたりする。
グローバル・ニュースが報じたところによると、シハヌークヴィルで繁栄する賭博やセックス産業は、中国の一帯一路インフラ計画の副産物だとするアナリストもいる。 一帯一路のパートナーらが中国の投資家に土地や税金の免除を提供したことで、犯罪者を含む金融業者が高リスクのベンチャーに吸い寄せらることになった。 オンライン賭博と地下銀行が中国本土から膨大な資金を引き出していることを受けて、中国は2019年に取締りに乗り出した。 カンボジアもこれに続き、2020年には法執行が強化された。 アジア・ゲーミング・ブリーフによると、オンライン賭博と詐欺ビジネスはその後カンボジアに戻り、地下に潜っていった。
ラジオ・フリー・アジアが2022年4月に報じたところによると、当初の取締りはプノン・ペン政府が新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)の対応に追われたためわずかな効果しかなく、「イニシアチブを遂行する意志がない」との批判が上がった。 同国の人身売買対策委員会は、2020年から2021年にかけて人身売買事件がほぼ倍増したと報告している。
人身売買対策の最低基準を満たしていない国々の監視リストにカンボジアを掲載する2022年の米国国務省の評価では、「当局は確かな共謀の報告の大部分に関与していた職員や、特に、国中の何千人もの男性、女性、および子供を娯楽施設、レンガ窯工場、およびオンライン詐欺活動に人身売買させた不正な企業経営者を調査したり、刑事責任を問うことはなかった」と述べている。
カンボジアの人権団体「リカード」のアム・サム・アス(Am Sam Ath)副局長は、2022年9月中旬に「ボイス・オブ・アメリカ(VOA)」に対し、「カンボジアに(詐欺師を取り締まる)コミットメントと高い意欲がなければ、セキュリティと安全性を理由にカンボジア、投資、観光のイメージに悪影響が出るだろう」と述べた。
米国平和研究所のミャンマー担当ディレクターであるジェイソン・タワー氏は、近年カンボジアを含む東南アジアで中国の犯罪ネットワークが拡大しているとボイス・オブ・アメリカに語っている。
地政学的な情報と分析を提供するオンライン出版物「ストラトフォー・ワールドビュー」によると、カンボジアの最近の取締りでは、フン・セン首相は賭博や人身売買の対策で成果を出せない政府関係者や警察官を排除することも辞さないと述べている。 「カンボジアが進めている人身売買の取締まりは、衰退しつつある観光部門を強化し、政治的混乱を先制することを意図していると同時に、ASEANが共通の関心を持つ問題についてより緊密に協力するべきだという先例を示すものだ」と、2022年9月下旬にストラトフォー・ワールドビューは報告している。
プノンペンに拠点を置くオンラインメディア企業「フレッシュ・ニュース」によると、フン・セン首相は9月下旬に開催された第6回全国人身売買対策宗教間フォーラムで講演し、取締りの命令により人身売買が減り、安全、社会秩序、安全なコミュニティが確保され、調和と富が促進されると述べた。
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