フィリピン ウクライナのドローン戦術導入を検討 南シナ海で抑止力強化へ

2026/08/04
更新: 2026/08/04

ロシア・ウクライナ戦争で、ウクライナは安価で機動性の高いドローンを活用し、ロシア軍の激しい攻撃を食い止めてきた。こうした戦い方は、軍の近代化を進める国々の参考となっており、フィリピンもウクライナのドローン作戦から学ぼうとしている。

専門家の間では、ウクライナとドローン分野で協力関係を築けば、フィリピンの安全保障戦略に大きな変化をもたらす可能性があるとの見方が出ている。特に南シナ海の緊張が続く中、迅速かつ柔軟な非対称作戦能力を獲得する近道になるとみられている。

一方、ウクライナのドローンは実戦で有効性が確認されているが、その戦術が南シナ海の複雑な情勢に適しているかどうかを、フィリピンは慎重に検討すべきだとの指摘もある。

香港紙「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」によると、ウクライナとフィリピンは7月24日、「ドローン協定」の枠組みづくりに向けた外交上の調整を始めた。ウクライナ大統領府は声明で、両国が協定の策定に着手することで合意し、防衛協力のさらなる強化も進めていると明らかにした。

マニラに拠点を置くシンクタンク「国際開発・安全保障協力」の創設者、チェスター・カバルザ氏は、ウクライナとの対ドローン技術分野での協力を強化すれば、フィリピンの抑止力を大幅に高められると指摘した。

カバルザ氏は、フィリピンが領海の安全を確保するには、ウクライナのドローン監視技術を積極的に取り入れる必要があるとの考えを示した。

一方、英セントラル・ランカシャー大学で国際関係を研究する分析家、シルヴィア・モニカ・ゴルスカ氏は、フィリピンがウクライナの技術を無制限に入手できると考えるべきではないと警告した。

輸出規制や知的財産権、軍事上機密性の高い技術データなどが、今後の協力を進める上で障害になる可能性がある。ゴルスカ氏は、ウクライナとの協力によって問題の解決を図る前に、フィリピン自身が何を解決したいのかを明確にする必要があると述べた。

ドローンより重要な軍事組織の能力

専門家によると、ウクライナがドローン戦で成果を上げている理由は、特定の兵器にあるのではなく、戦況に応じて技術や運用方法を迅速に改良する能力にある。

作戦上の問題を速やかに見つけ、戦場から得た情報を開発に反映させ、生産規模を迅速に拡大する仕組みが重要だという。

仏パリ・ドーフィン大学の地政学教授、アルノー・ルヴォー氏は、こうした軍事組織の能力は、個々のドローンよりも価値が高いと指摘した。

ウクライナは、ドローン操縦者や技術者、ソフトウエア開発者、情報担当者、民間メーカーを一体的に連携させる体制を築いているという。

ルヴォー氏は、フィリピンもこうした急速な発展モデルを参考にし、低コストの偵察用ドローンや、一人称視点で操縦するFPVドローン、対ドローン探知システム、妨害や途絶に強い通信網を中核とする、より柔軟な防衛体制を構築できると述べた。

ただし、ウクライナは現在も国家の存続を懸けた戦いを続けており、他国に大規模な兵器供給を行う可能性は低いとも指摘した。

現段階でウクライナが提供できるのは、専門知識や設計、訓練、産業協力が中心であり、大量の完成品を引き渡すことではないとしている。

フィリピン軍は現在、軍用ドローンの配備を拡大している。海軍は海上監視用の「スキャンイーグル」を、空軍は「ヘルメス450」と「ヘルメス900」を運用している。国産無人システムの研究開発も進めている。

ルヴォー氏は、フィリピンがウクライナから学べる最も重要な教訓は、迅速に技術革新を進める力にあると指摘した。

一般的なドローンであっても、情報収集や安全性の高い通信、電子戦技術と組み合わせることで、相手の作戦判断を複雑にし、大きな戦略的効果をもたらすことができるという。

フィリピンにとっては、海上の状況を把握する能力の向上や、遠隔地にある島々の監視強化、係争海域で危険にさらされる人員の削減などにつながる可能性がある。

ルヴォー氏はまた、ウクライナが独自に開発した海上無人システムは、従来型の外洋艦隊を保有していなくても、ドローンによって海軍の作戦や配備に影響を及ぼせることを示したと述べた。

ただし、南シナ海で続くグレーゾーン事態は、黒海の戦場とは性質が異なる。南シナ海では、ドローンは戦闘よりも、証拠収集や継続的な監視で大きな役割を果たすとみられている。

ゴルスカ氏も、南シナ海で求められているのは戦場での消耗戦ではなく、継続的な抑止と、事態のエスカレートを避ける慎重な対応だと指摘した。

中国共産党政権が無人システムを海上活動に組み込み、西沙諸島の永興島に長時間飛行が可能な監視ドローン「BZK-005」などを配備する中、対応の必要性は一段と高まっているという。

こうした状況で最大の課題となるのは、ドローンの保有数で中共と競うことではない。

中共が持つ情報面での優位性を弱め、フィリピン側の通信を守り、状況把握能力を維持し、監視能力の優位性が軍事的または政治的な優位性に転化されることを防ぐことが重要だとしている。

ゴルスカ氏によると、中共は、目標を探知してから意思決定を行い、対応に移るまでの時間を短縮しようとしている。

このためフィリピン軍は、単に生のデータを収集するだけではなく、情報をより迅速かつ効果的に処理し、作戦上の判断を下す能力を高めなければならないと指摘した。

ゴルスカ氏は、今回の協力関係を通じて、フィリピンが自国の部隊整備計画における実際の課題を見極められるか、さらに、その課題を解決する相手としてウクライナが最適かどうかが問われると述べた。

ルヴォー氏は、協定がどのような形でまとまるにせよ、一定の成果は期待できるとした。その上で、協力を単なる兵器購入にとどめず、産業基盤の強化や人材育成につなげられるかどうかが、今後の成否を左右すると指摘した。

李平