【新冷戦特別連載】中露の枢軸国陣営 第2回(全3回)

2022/03/19
更新: 2022/03/19

欧米の経済制裁はロシア中国共産党に接近させ、「権威主義枢軸」は中国とロシアの勢力圏にある他の国々に拡大する可能性がある。

ロシアと中国は同盟関係を強化しているが、正式な防衛協定は結んでいない。中国の公式な同盟国は北朝鮮だけである。しかし、中国共産党は、国民監視・統制技術の販売やインターネット検閲技術の提供を通じて、他の権威主義政権と関係を構築してきた。こうした利害関係を通じて中国側につくと予想される国は、一帯一路構想の参加国に加え、イラン、ベネズエラ、パキスタン、アフガニスタン、カンボジアなどである。

アフガニスタンは中国を支援することはあっても、対外戦争をする能力はない。一帯一路参加国の多くは中国に大きな債務を負っており、国連で中国政府の意向に沿った投票をする必要性を感じているかもしれないが、ほとんどの国は戦争で中国を助けることもできないし、助ける気もない。カンボジアは中国の属国になりかけているが、その軍事力は非常に限られている。

中国は国際機関やオリンピックなどイベントへの参加を通じて、ソフトパワーを広めようとしているが、新たな同盟国を獲得できるかは疑問である。先進国や富裕国がアメリカを捨てて中国陣営に入る可能性は低く、中国共産党は困難に直面している。

これまで中国共産党は、世界の工場、世界の金融機関という中国の地位を頼りに支持を集めてきた。しかし、好戦的な外交姿勢、約束の不履行、そして攻撃的な行動を展開してきた中国共産党は再び信頼を得ようとするには、今や工業力だけでは十分でないようだ。

中国とは異なり、ロシアには公式な同盟国がある。ロシア、アルメニア、ベラルーシ、カザフスタン、キルギスタン、タジキスタンの6カ国からなる集団安全保障条約機構 (CSTO)だ。中央アジアの他の国、トルクメニスタンとウズベキスタンはCSTOに加盟していないが、ロシアの勢力圏に入っている。また、中央アジア諸国は中国との貿易に依存しており、中露の枢軸に背を向けることはないだろう。

アメリカ大陸では、キューバはロシアの同盟国である。ロシアのプーチン大統領とキューバのディアスカネル大統領は戦略的パートナー関係に基づく協力強化で合意した。ロシアのセルゲイ・リャブコフ外務副大臣は1月、ロシア語国際放送RTVIで、米国とその同盟国がウクライナ問題で譲歩しない場合、ロシアはキューバに軍事インフラを配置する可能性があると発言した。

中国共産党と対立し、ロシアから武器を購入しているインドは、アメリカとも関係を深めてきた。米ワシントンの政策研究機関「スティムソン・センター」2020年の報告書によると、インドの軍事装備の約70~85%がロシアから調達されている。2021年の米議会調査局(CRS)の報告書によれば、インドは米国製兵器の購入も増やしているが、ロシアの支援がなければ軍事作戦を行えない状態にあるという。

これまでインドは、政治的な曖昧さを保ちながら上手く立ち回ってきた。しかし、ロシアのウクライナ侵攻によって、インドはロシアと米国のどちらの側につくかの選択を迫られている。これまでのところ、インドはこの侵略を非難しておらず、米国政府はインドに対し、他の同盟国とともにロシアに強力なメッセージを送るよう圧力を強めている。インドと同様、ベトナムと中国も激動の外交史を歩んできた。ベトナムは中国と不仲のため、ロシアが最大の武器供給国であるにもかかわらず、米国の勢力圏に深く入り込んでいる。ベトナム政府は、侵略を明確に非難しなかったが、メディアはバイアスをかけずに侵攻を報道している。

そのため、ベトナムがどちらを支持するかを予測する事は難しい。ロシアへの好意よりも、中国共産党への不信感の方が強いかもしれない。あるいは、ベトナムは最大の貿易相手国である米国が主導する連合に参加することを望んでいるかもしれない。

ミャンマー軍政府は、侵攻を支持する声明を発表した。ミャンマー自身も欧米の制裁下にあり、貿易や投資の面で中国に依存している。ミャンマー政権は、中国やロシア、ウクライナ、セルビア、インドから武器を購入している。

ミャンマーへの武器売却に加え、セルビアは欧米の対露制裁への参加も拒否している。セルビアは中国とロシアから武器を購入しており、ロシアはセルビアにとって5番目の貿易相手国である。

ロシアのウクライナ侵攻以来、英国、ドイツ、カナダなどを含む欧州連合(EU)と北大西洋条約機構(NATO)は、米国とより緊密に連携する意向を表明している。アジア太平洋地域では、ニュージーランド、オーストラリア、日本、台湾、シンガポール、インドネシアがロシアを非難している。

このように、ロシアや中国を支持する国の多くは、小国で経済的にも軍事的にも弱い国々である。欧米の対露経済制裁は中露の協力関係を揺るがし、中国共産党は自己保身のためにロシアと距離を置くことを余儀なくされる可能性がある。

 

執筆者プロフィール

アントニオ・グレースフォ博士(Antonio Graceffo, Ph.D.)

20年以上をアジアで過ごした。上海体育大学を卒業し、上海交通大学にて中国MBAを取得。経済学教授、中国経済アナリストとして、さまざまな国際メディアに寄稿している。中国に関する著書に『Beyond the Belt and Road: China’s Global Economic Expansion(仮訳:一帯一路を越えて=中国の世界的な経済拡張)』などがある。

オリジナル記事:英文大紀元「New Cold War Alliances Forming

(翻訳:王君宜)

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。