日米両政府の外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)が7日、テレビ会議の形式で開催された。中国共産党の軍事的拡張や北朝鮮の核・ミサイル開発について議論したほか、ゲーム・チェンジャーとなり得る極超音速兵器など新たな脅威への懸念を共有した。協議後に発表された共同文書では、日米同盟の技術的優位性を確保するための研究協力を行うことなどが盛り込まれた。
東京からは林芳正外相と岸信夫防衛相、ワシントンDCからはブリンケン国務長官とオースティン国防長官がそれぞれ参加し、午前7時半から約1時間半かけて行われた。新任のラーム・エマニュエル駐日大使も出席した。前回の日米2プラス2が開催されたのは2021年3月で、じつに10か月ぶりだ。
「核を含む能力」で対日防衛義務にコミットする
林外相は、2022年は日本の安全保障政策にとって非常に重要な一年になるとし、一年のスタートを日米2プラス2で切ることができるのは時宜にかなっていると述べた。法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持し、地域の平和と安定を確保するためにも、戦略的利益と普遍的価値を共有する日米両国は結束してリーダーシップを発揮すべきと強調した。
岸防衛相は、日米2プラス2を開催し日米の強固な連帯を対外的に示すこと、及び今後の日米同盟の方向性について認識を共有することは極めて意義深いことだと述べた。
日本側が防衛力を抜本的に強化するとの発言に米国側は歓迎の意を示した。米国はまた、核を含むあらゆる種類の能力を用いた対日防衛義務への揺るぎないコミットメントを表明した。
中国の威圧的活動に強く反対
日米双方はインド太平洋地域の情勢について意見交換を行い、「インド太平洋地域と世界全体の平和、安定及び繁栄に対して中国が及ぼす影響について突っ込んだ意見交換」を行った。
南シナ海における中国の不法な海洋権益に関する主張や威圧的な活動に強い反対を示し、地域の安定を損なう行動に対しては必要であれば対処することで意見を一致させた。
共同文書には、2プラス2開催前に一部メディアで報じられた台湾有事における南西諸島での米軍の臨時拠点と共同作戦について具体的な言及はない。しかし、同諸島での「自衛隊の態勢強化の取り組みを含め、日米の施設の共同使用を増加させる」との記載がある。加えて「日米双方は台湾海峡の平和と安定の重要性を強調し、両岸問題の平和的解決を促す」と強調した。
話題はアジア地域の人権問題にも及んだ。新疆ウイグル自治区や香港など中国国内の人権問題についても深刻な懸念を表明した。
防衛力を抜本的に強化
会談のなかで岸防衛相は、ミサイル防衛能力を含め、あらゆる選択肢を排除せず、防衛力を抜本的に強化するため、新たな国家安全保障戦略、防衛計画の大綱、中期防衛力整備計画の策定に取り組んでいくと発言した。また、宇宙領域に関する自衛隊と米側との協力の重要性を強調した。
林外相は、サイバーや電磁波、宇宙領域などで増大する脅威に対処すべく、日米間の連携強化を進める考えを示した。
日米双方は、共同研究・開発・生産等に関する枠組み交換公文に基づき、新興技術での協力を進展させることを確認した。また、林外相は経済安全保障の強化にも言及し、日米で緊密に連携していくことを確認した。
基本的価値観を共有する他国との協力についても触れ、日豪円滑化協定の締結や「AUKUS(オーカス)」を支持するとした。欧州諸国などによるインド太平洋での更なる関与についても歓迎の意を示した。
双方は在日米軍の体制についても議論を行った。沖縄など米軍基地がおかれている地域の負担軽減を図りつつ、在日米軍再編を推進することの重要性について一致した。
林外相と岸防衛相は、在日米軍による地元への影響に最大限配慮した安全な運用と不安解消に向けた努力をするよう申し入れた。
双方は、日米同盟の即応性と抗たん性を高める、新たな在日米軍駐留経費負担(「同盟強靱化予算」)に係る特別協定への署名を歓迎した。
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