中国の不動産大手の恒大集団(以下、恒大)の債務危機と、それに伴う世界的な不安は続いている。その主な原因は、中国共産党(以下、中共)の失策と欺瞞にあると考えられる。彼らは、複雑な市場原理を考慮せずに政策を進めてきた。
専門家によると、事業再編や債務救済によって現在の苦境から抜け出そうとしても、中共の腐敗などの根本的要因によって阻まれる可能性が高い。習近平総書記が大々的に打ち出した反腐敗キャンペーンは、中共の複雑な裏取引を隠すためのものである。
恒大の許家印会長は10月22日、10年以内で主力事業を不動産開発から新エネルギー車に移行する計画を発表した。危機から逃れるために必死の戦略を取り続けるこの中国不動産大手が、なぜ史上最大級のデフォルトの瀬戸際に立たされているのか、世界中の多くの人々が疑問に思っている。
ここでは、一党支配という政治体制の下で広範かつ恣意的な権力を行使する中国共産党の役割を見落としてはならない。
サンフランシスコ大学経営大学院の国際経営学教授であり、同大の中国ビジネス研究所所長である楊小華氏は、「中国の不動産セクターの現在の危機は、中国政府の政策転換によって始まり、それに伴って終わるだろう」と述べている。
同氏によると、このような巨額の負債を抱え始めた背景には、中共の指導者たちが、中国人が不動産などの有形固定資産を好むという伝統的な嗜好を都合よく利用したことがある。
「長年にわたり、特に2008年から2009年にかけての世界同時不況の後、中国の規制当局は、不動産開発業者への融資条件の緩和など、一連の政策転換により不動産セクターを経済成長の原動力として活用し、不動産ブームを巻き起こした」と楊氏は語る。「恒大のような不動産市場のプレーヤーは、借り入れと投資の能力を活用し、流れに乗った」と付け加えた。
中国政府が融資条件を緩和したため、恒大は過剰な借入を行い、電気自動車などの非専門分野にも進出した。その結果、恒大は多くの市場や分野で活動しており、どのような企業なのかを語るのは難しい。
英ダラム大学ビジネススクールのディラン・サザーランド教授は、「恒大は、電気自動車をはじめ、一時はミネラルウォーターや美容整形など、さまざまな分野に手を出していた。これは、資金調達能力の高さもさることながら、電気自動車、バッテリー、人工知能、バイオテクノロジー、5G、半導体などの戦略的新興産業に対する政府の手厚い補助金があるからである」と述べた。産業引導基金の増加は、多くの新規参入者を市場に呼び込んでいると付け加えた。
「中国共産党は、経済発展を促進しようとしていたが、市場原理の相互作用によって何が起こるかを予見する経済的センスを欠いていたか、あるいは分裂と征服の欲望から無謀な行動をとった。動機が何であれ、結果的には恒大が過度に拡張してしまった」とサザーランド氏は説明する。
「大規模な負債を抱え、管理を誤り、日和見的な企業の分散化は、国の政策立案者が本当に望んでいることではなく、政策や経済環境の副産物である」とサザーランド氏は指摘した。
同氏によると、恒大は苦難の道を歩んでいる。多くの中国人は、政府が正しいことをして自分たちの利益を守ってくれると信じているが、風向きを察知することができなかった。状況を好転させるのに十分な時間があるにもかかわらず、中国政府は有効な政策転換を行わなかったという。
前述の楊教授は、中国当局の動きについて、「不動産開発業者が住宅価格を押し上げ、多くの人を住宅市場から追い出したため、富裕層への恨みと嫌悪感が高まっている。中国政府はこれを大きな問題として捉え、対応策(共同富裕)を検討しているようだ」という見解を述べた。
中国共産党の腐敗
パンデミックが始まる前から、中共の腐敗は深刻な問題だった。腐敗の問題は、中共政権の経済的失政をさらに悪化させていると言われる。
サザーランド氏は、「中共のエリート政治家らは、安邦保険や海航集団(HNAグループ)など、最大級の(今は倒産した)複合企業とつながりを持っている」と指摘する。
サザーランド氏は、中国政府は理論的には、HNAグループや安邦保険のような負債を抱えた大規模な複合企業の行き過ぎを抑制しようとしているが、これらの企業はエリート政治家らと密接な関係にあるため、その作業は困難を極めると指摘する。また、共産党幹部と企業との関係には、(中央政府だけでなく)地方政府の腐敗も一役買っていると強調した。
「不動産販売を収入源とする地方自治体の大きな既得権を考えると、不動産から経済を切り離すのは容易なことではない。その結果、負債を抱えた企業が国内外の金融安定性に与えるリスクを許容しない中央の指導者と、不動産開発による利益を失いたくない地方の官僚との間で、権力闘争が続くことになるだろう」とサザーランド氏は語った。
「この問題に対処するには、複数の課題がある。今回のパンデミックで、政策課題への取り組みも困難になっている」と付け加えた。
楊氏も同じ考えを示している。「恒大は危機を脱することができるかもしれない。以前のような輝きはないにしても、スリム化し、事業再編のチャンスを得られるかもしれない」と語った。
いずれにしても、中国共産党は、この危機を雪だるま式に拡大させたことで、大きな代償を払うことになるだろうと楊氏は言う。
執筆者プロフィール
マイケル・ウォッシュバーン(Michael Washburn)は、ニューヨーク在住のフリーランス・ジャーナリストで、中国関連の話題を扱っている。法律や金融のジャーナリズムを背景に、芸術や文化についても執筆活動を行っている。また、毎週ポッドキャスト「Reading the Globe(世界を読む)」を配信している。著書に「The Uprooted and Other Stories(根こそぎにされた人々とその物語)」、「When We’re Grownups(大人になったら)」などがある。
オリジナル記事:英文大紀元「CCP Mismanagement to Blame for Evergrande Crisis, Business Experts Say」より
(翻訳編集・王君宜)
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