米国は分断の危機 ブラック・ライヴズ・マターは米版「文化大革命」序幕=専門家

2021/08/10
更新: 2021/08/10

米国では、「批判的人種理論」をめぐり激しい論争が起きている。ヘリテージ財団のパートナー組織である「ヘリテージ・アクション・フォー・アメリカ(Heritage Action for America)」は7月下旬、批判的人種理論(Critical Race Theory)に関するパネルディスカッションを開催した。パネリストはそれぞれの視点が、批判的人種理論の危険性と、いかにアメリカ社会に浸透しているかを訴え、アメリカ版「文化大革命」が起こっていると警鐘を鳴らした。

パネルディスカッションの冒頭では、ヘリテージ財団のシニア・ポリシー・アナリストであるジョナサン・ブッチャー氏が、批判的人種理論の歴史とその概要について語った。批判的人種理論とは「人種的不平等や人種差別が、アメリカの法律や制度に組み込まれている」と主張するもの。この理論はマルクス主義のフランクフルト学派による「批判理論」にルーツを持つ。今ではアメリカ社会の教育システム、職場、軍隊などに浸透し、深刻な問題となっている。

批判的人種理論の支持者は、アメリカは構造的に人種差別があり、人種的抑圧はあらゆる機関に存在し、肌の色がすべてを決定づけるものと主張する。批判的人種理論は「すべての人間は生まれながらにして平等であり、法の下では平等に扱われるべきである」というアメリカ建国の理念を完全に否定するものだ。

アメリカは共産主義中国のようだ

文化大革命を経験したスピーカーのヴァン・フリート氏は、「アメリカは、文化大革命(毛沢東政権下で1966年から1976年にわたって、中国で起きた政治的・社会的動乱)の頃の共産主義中国のようになりつつある」と語った。

同氏は批判的人種理論の支持者はマルクスと同じ戦術を使い、混乱を作り出していると指摘する。「毛沢東は『最大の混乱のときこそ、最大の支配が可能になる』と言った。彼ら(批判的人種理論の支持者)は既存のシステムを転覆するために、混乱を作り出そうとしている。キャンセルカルチャーも同じだ。なぜなら、ここ(アメリカ)で人々がやろうとしていることは、アメリカ建国の理念を覆すことであり、中国のように伝統的な文化や文明を覆すことだからだ」と大紀元にのインタビューに答えた。

「今、共産主義が(アメリカを)支配しているということを、アメリカ人に知ってもらいたい」

批判的人種理論と文化大革命

フリート氏は、批判的人種理論が推進する「Woke(ウォーク:社会的正義や人種差別に敏感でいる)」革命は、毛沢東の階級闘争論から派生した中国の文化大革命と類似すると指摘する。

同氏は批判的人種理論と階級闘争論のイデオロギーは、文化的マルクス主義に根ざしているとし、「毛沢東の階級闘争理論は、批判的人種理論のように人々を抑圧者と被抑圧者に分断した。唯一の違いは、人種ではなく階級であっただけだ」と述べた。

文化大革命のあいだ、毛沢東は権力を掌握するため、人々に異なるレッテルを貼り、お互いを戦わせた。誰もが「敵」であった。批判的人種理論も同様に人種を分断させ、人種差別の概念と定義を再定義している。そのため「人々を分断し、互いに対立させることはマルクス主義の特徴であり、それが中国共産党と批判的人種理論のビジネスモデルなのだ」とフリート氏は言う。

文化大革命のとき、フリート氏は生徒同士や教師が互いに殴打し合うのを目の当たりにしてきた。同氏よると、毛沢東は紅衛兵を放って混乱を引き起こし、文化大革命を開始したという。紅衛兵は、暴力、略奪、暴動により、主要な執行機関や裁判所のシステムをすべて破壊し、反革命分子を攻撃した。

「昨年、アメリカの路上で見られたのは、まさにこれだ」と、ブラック・ライヴズ・マター(BLM)の活動家たちが組織した暴動に言及した。これらの暴徒と毛沢東の紅衛兵には何の違いもないという。

毛沢東は紅衛兵に「破四旧(思想、文化、風俗、習慣の破壊)」を命じ、仏像や寺院などの文化財が破壊された。さらに名前、学校名、道路名なども政治的意図があるものに改名された。BLMは昨年、白人姿のイエス・キリスト像は「白人至上主義」の表れだとし、取り壊すべきだとツイッター上に投稿したり、「アメリカ建国の父」である初代大統領のジョージ・ワシントンや第3代大統領のトーマス・ジェファーソンなどの銅像も破壊した。

「これこそがキャンセル・カルチャーだ」とフリート氏は語る。「彼らは、西洋文明、キリスト教、アメリカ建国の理念をすべて破壊しようとしている。(紅衛兵とBLMは)同じだ」

米国は今、文化戦争による分断に直面している。フリート氏は「マルクス主義とアメリカの理念には共通点はない」とし、「アメリカを守るために、この戦いに勝たなければならない」と語気を強めた。

聴衆の声

サセックス郡デラウェア共和党委員会の委員長であるマリリン・ブッカー氏は、フリート氏が文化大革命と、現在アメリカで起こっていることの類似性を指摘したことに対して「驚くと共に、恐ろしく感じる」と大紀元のインタビューに答えた。「私たちは実力主義であり、これからもそうあり続ける必要がある」

もう一人のスピーカーである、ポッドキャスターのジョー・モブレー氏は、フリート氏の共産主義に対する考えに共感した。「(共産主義の)教化は少なくとも60年、もしかしたら100年も続いているかもしれない。軍隊から金融機関、学校に至るまで、あらゆる機関が教化されており、大学は完全に侵されている」と述べた。さらに「社会主義の国には住みたくない。社会信用システムなんていらない。政府が土地や富や教育の機会を再分配することも望んでいない」と強調した。

2021年7月、 トム・コットン上院議員(共和党)は批判的人種理論を教える学校への連邦資金提供を禁止する「the Stop CRT Act」を提出した。これはドナルド・トランプ前大統領が制定した、連邦政府機関や請負業者による批判的人種理論トレーニングを禁止する大統領令を施行するものだ。

(翻訳編集・蓮夏)