キューバ治安部隊、中国武装警察から訓練受け自国民を弾圧か

2021/08/06
更新: 2021/08/06

60年以上続く共産主義体制と生活環境への不満を訴えるため、キューバでは7月11日から数千人の市民が街頭に立ち、抗議活動を行っている。1990年代以来最大規模となる今回の活動に対し、20カ国以上が支持を表明する一方で、キューバ当局は特殊部隊を投入して暴力的に鎮圧した。なかでもひときわ目立つのが、黒いベレー帽をかぶった治安部隊「ブラックベレーBlack Beret)」だ。過去の写真などから、この部隊が中国の武装警察から訓練を受けていたことが明らかになった。同部隊は現在、米国の制裁対象となっている。

中国武装警察と「ブラックベレー」の深い関係

キューバの一般市民を鎮圧した「ブラックベレー」について、中国の準軍事組織である「中国人民武装警察(以下、武装警察)」から訓練を受けていた可能性があると指摘されている。

キューバの「ブラックベレー」が中国の武装警察から訓練を受けていたことは、中国国営メディアの報道から確認できる。さらに、キューバ政府に批判的なメディア「ADNキューバ」が公開した写真にも、キューバ部隊と記念撮影を行う中国人の姿が確認できる。

キューバが具体的にいつから中国武装警察から訓練を受け始めたのかは明らかにされていない。現在確認できる報道では、少なくとも10年以上前からキューバは中国の武装警察から国民を鎮圧する手段を学んでいたことが分かる。中国国営メディアの報道によると、2008年頃には中国人教官がキューバに赴き、「テロ対策」などを名目にキューバ人の訓練を行っていた。

それによると、4人の武装警察教官はキューバ人に総合格闘技や人質救出作戦、「大規模な暴動」への対処方法などを教えたという。訓練期間は2カ月ほどで、警察官や内務省の特殊部隊「ブラックベレー」、軍人など90人以上が参加した。中国人教官は帰国する前、「特別な貢献」を行ったとしてキューバ内務省から表彰された。

2016年4月、中国中北部にある寧夏の武装警察は、キューバ内務省の特殊戦闘訓練学校に6人の教官を派遣し、1カ月間の訓練プログラムを組んだ。中国軍が運営するウェブサイトに掲載された記事によると、訓練ではタクティカルシューティングや中国武術、太極拳、暴動を鎮圧する戦術など、160以上の技術を教授した。

国内外で影響力を拡大する中共の準軍事組織

武装警察は治安維持を主な目的としながら、膨大な人数と軍に劣らない装備を保有しており、国内外で様々な任務を行っている。長年にわたり、新疆ウイグル自治区で鎮圧活動に関わってきたのも武装警察だ。同地域で91人の抗議者を殺害した武装警察部隊は、7月に習近平氏から特別栄誉賞を授与された。

ライフル銃の射撃訓練を行う武装警察 (Photo credit should read -/AFP via Getty Images)

さらに、ロイター通信の報道によると、昨年の香港で大規模な抗議デモが発生した際にも、武装警察は香港警察と共に監視や鎮圧を行ったとの証言がある。

武装警察の活動は中国国内のとどまらない。2016年1月、中国で反テロリズム法が施行され、人民解放軍と武装警察がテロ対策を口実に海外展開できるようになった。それに伴い、武装警察は中国とアフガニスタンに接するタジキスタン国内で前哨基地を設置、中央アジアにも進出する姿勢を見せた。米中経済・安全保障調査委員会(USCC)の2020年の報告書によると、その基地には数百人の人員と約20の見張り塔があると推定されている。

さらに、中国共産党の武装警察が他国の警察官や法執行機関のために訓練を実施していることも明らかになった。

武装警察は2000年、外国人警察官を訓練するための「中国平和維持民警訓練センター(China Peace-keeping Civil Police Training Center)」を北京近郊に設立し、2年後にはアジア最大規模となる別のセンターの建設を開始した。

中国共産党中央宣伝部が管理するメディア「チャイナ・デイリー(China Daily)」によると、2009年の時点で、中国武装警察は「二国間または多国間のテロ対策のための交流」を行うために、30カ国以上に代表団を派遣しているという。

大紀元が2020年に入手した中国の内部文書によると、中国雲南省の省都・昆明市にある警察大学は、2002年から2017年までの間に、62の発展途上国から派遣された2500人以上の法執行官を対象に訓練を実施した。また、中国国営メディアの新華社通信によると、同大学は2016年から2020年にかけて、東南アジア諸国の司法関係者約2000人に短期・中期の訓練を施す契約を交わしていた。その内部文書によると、訓練プログラムの目的は、「一帯一路」構想のための「関係づくり」とされている。

ブラックベレー、制裁対象に

キューバの国防相と「ブラックベレー」が約500人の活動家を逮捕し、暴力を用いて抗議活動を破壊したとして、米国政府は7月22日に制裁を課すことを発表した。

7月30日、若いデモ参加者を守ろうとしたカトリックの神父の逮捕や複数の未成年者への殴打、平和的なデモの破壊のための棍棒の使用などにより、キューバ警察とその指導者2名も制裁リストに加えられた。

米国のアントニー・ブリンケン(Antony Blinken)国務長官は制裁措置に関する声明の中で、キューバの残忍な警察や特殊部隊などは制裁に直面しており、キューバ政府は人権侵害行為に対し説明責任を負っていると述べた。

(翻訳編集・蘇文悦)