令和3年版防衛白書、中国による現状変更の執拗な試みは「国際法違反」

2021/07/29
更新: 2021/07/29

中国共産党が台湾周辺での軍事活動を激化し、米国が自治国家である台湾の支援を強化している状況を踏まえ日本は台湾を巡る緊張の高まりを「一層の緊張感を持って」注視していく必要があるとの考えを示した。

菅義偉政権が2021年7月上旬の閣議で了承した「令和3年版防衛白書」には、台湾情勢に対する懸念、米中関係の悪化、同地域における中国共産党の攻撃的な軍事活動の激化に言及する項目が初めて設けられた。

防衛白書には、「台湾をめぐる情勢の安定は、わが国の安全保障にとってはもとより、国際社会の安定にとっても重要であり、わが国としても一層緊張感を持って注視していく必要がある」と記されている。

台湾海峡やインド太平洋地域における中国の勢力拡大に起因して、たとえ強制手段に訴えてでも本土と統一する必要があると中国が主張する台湾が紛争の火種と化したのに伴い日本や米国などの民主主義諸国が台湾との間の関係を緊密化させてきた。

防衛白書には、「(前略)中国が経済成長などを背景に急速に軍事力を強化する中、米中の軍事的なパワーバランスの変化がインド太平洋地域の平和と安定に影響を与え得ることから、南シナ海や台湾をはじめとする同地域の米中の軍事的な動向について一層注視していく必要がある」と記されている。

中国外務省(外交部)の趙立堅(Zhao Lijian)報道官は、日本の防衛白書に記載された内容は「極めて間違っており、無責任」と強く反論している。

1945年までの50年間にわたり日本が台湾島(清朝が新設した福建台湾省に属する台湾本島と付属島嶼)を統治していたこともあり、現在も両国の繋がりはある意味深い。

防衛白書によると、過去20年間にわたり高い水準で国防費を増加させてきた中国の軍事費は台湾の少なくとも16倍に及んでおり、中台国防費の差は毎年拡大している。中国の軍事予算181兆6,000億円相当(1,816億米ドル)は日本国防費の4倍に相当する。

中国が台湾の外交的孤立の強化を根回ししていることもあり、現在台湾と正式な国交を結んでいる国は十数ヵ国のみだが、台湾は日本や米国などの主要諸国に実質的に大使館として機能する在外代表部「台北経済文化代表処」を設置している。

米中関係が悪化する中、日本はこれにより台湾安保にもたらされる影響に対する懸念を高めている。日本の最も重要な同盟国である米国は、兵器販売や台湾海峡への軍艦派遣などを通じて、台湾への軍事的支援を強化している。 

中国の軍事動向などは、国防政策や軍事に関する不透明性と相まって「わが国を含む地域と国際社会の安全保障上の強い懸念となっている」と、防衛白書には記されている。

また、日本が実行支配する東シナ海の尖閣諸島に関して、「現状を一方的に変えようとする中国の執拗な試み」についても批判し「国際法違反」と表現している。

7月上旬、中国船舶が尖閣諸島周辺の接続水域に150日連続で侵入したことを明らかにした加藤勝信官房長官は、「極めて深刻な事態と考えている」と懸念を示している。  

(Indo-Pacific Defence Forum)