中国の半導体大手による英国最大のチップメーカーの買収が、7月6日に発表された。しかし、ボリス・ジョンソン首相は8日、国家安全保障上の観点から買収を調査すると述べた。
中国半導体大手・聞泰科技(ウィングテック)の子会社であるオランダ企業ネクスペリアは、英半導体ニューポート・ウェハ・ファブ(NWF)を買収したと発表した。買収額は6300万ポンド(8700万ドル)とされる。
しかし、議会に出席したジョンソン首相は8日、議員からの質問を受けて、ステファン・ラブグローブ国家安全保障担当補佐官にこの買収案を調査するよう要請したと述べた。
サウスウェールズ州ニューポートにあるNWFは、英国で最大かつ数少ない半導体チップメーカーの1つ。
NWFを買収すると発表したネクスペリアは、オランダに本社を置くが、中国の聞泰科技の完全子会社となっている。NWFは自動車のパワーコンポーネントのための半導体を得意としていることで知られる。
世界的な半導体不足問題が露呈するなか、中国系企業が英半導体の買収に動いたことは、議員や世論の懸念を引き起こした。
議会で質問を受けたジョンソン首相は、NWF買収について、「中国が関心を持つ知的財産であるのか、また、本当にセキュリティリスクがあるのかを調べなければならない」と述べた。いっぽう、中国企業や資本の徹底排除については否定した。
ジョンソン首相は、米国や英国の政界からの「中国とのデカップリング」を求める声と、EU離脱後であり中国との経済・貿易を維持・拡大したいという国内ビジネスマンの要望とのはざまに立っている。
「タカ派」である英国議会の外交委員会トム・トゥーゲンハット委員長は、中国に対して強硬であるよう政権に促している。さらに同氏は、中国による買収を国家安全保障・投資法に基づいて最初に審査しない不作為を問題視した。
トゥーゲンハット氏は、英国で6月に開催されたG7サミットでは、各国首脳の共同宣言の中で、特に半導体などの工業製品を中心としたグローバルなサプライチェーンの安全保障の強化が謳われたと、BBCのインタビューに述べた。このため、中国企業による半導体メーカーの買収を許すことは、「G7サミットの公約に対する明確な違反だ」とした。
(翻訳編集・佐渡道世)
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