英、国家安全保障投資法を施行 外国企業による買収案への審査・介入を強化

2022/01/05
更新: 2022/01/05

英国では4日、国家安全保障上重要な分野において外国企業の投資を規制する「国家安全保障投資法(The National Security and Investment(NSI)Act)」が施行された。同法の下で、英政府は国家安全保障を脅かす可能性のある中国企業などによる英企業の合併や買収などについて、審査・介入を強化する。

同政府は声明の中で、NSI法の成立と施行は、国家安全保障分野で過去20年間の最大の改革であると強調した。今後、外国企業や投資家による企業買収の調査は年間約1800件と大幅に増えるとみられる。

英ビジネス・エネルギー・産業戦略相のクワシ・クワルテング氏は、新たに導入された投資審査プロセスはシンプルかつ迅速であると強調する一方で、英国民に対して国民の安全が政府の最優先事項であると訴えた。

英政府は、人工知能(AI)、民生用原子力、エネルギー、量子テクノロジー、交通輸送など17のセクターを安保上の重要分野であると指定した。外国企業がこれらの分野の企業に25%以上を出資する場合、英政府は審査を行う。また、同政府は買収案に関して特定の条件を課し、必要であれば、買収案を解消または終了させることもできる。

英国の新審査体制は、米国の外国投資委員会(CFIUS)の体制と少し異なり、国家安全保障に関わる取引であれば、外国投資家だけでなく英国内投資家も審査の対象になる。

英紙ガーディアンは、この法案は、中国による戦略的に重要な科学技術企業買収への懸念に対応するものだとの見方を示した。

中国半導体メーカー、聞泰科技(Wingtech)の100%子会社である蘭ネクスペリア(Nexperia)は昨年、英政府の国防関連プロジェクトに関わる英半導体大手ニューポート・ウエハー・ファブ(Newport Wafer Fab)を6300万ポンドで買収しようとした。

当初、クワルテング英ビジネス相は買収案を承認したが、政界では先端技術を持つ英国の半導体開発生産大手が中国企業の傘下に入れば、経済および国家安全保障上に重大な問題が生じるとの懸念が強まった。これを受けて、ジョンソン首相は、国家安全保障当局に買収案を審査するよう指示した。

ロンドンを拠点とするNGO団体、香港ウォッチ(Hong Kong Watch)のサム・グッドマン(Sam Goodman)上級政策アドバイザーは、米ラジオ・フリー・アジア(RFA)の取材に対して、ニューポート・ウエハー・ファブ社を巡る買収案は、英政府の対中政策が混乱していることを反映したと指摘した。同氏は、英政府は主要産業への投資を呼び込む際、英国の長期的な利益を考慮していないと批判した。

グッドマン氏は、NSI法の下で、英政府が迅速に中国側によるニューポート・ウエハー・ファブ買収案を阻止するよう呼びかけた。

(翻訳編集・張哲)