欧州議会は8日、中国が香港とイスラム系少数民族ウイグル人に対する人権状況を改善しない限り、2022年北京冬季オリンピックをボイコットするようEU加盟国に求める決議案を成立させた。
今回の採択は、ブリュッセルと北京の関係悪化を示す新たな兆候でもある。今年5月、中国の人権問題をめぐり、一連の制裁措置が発動され、二国間の投資協定の批准が凍結された。
決議は賛成578、反対29、棄権73の賛成多数で可決した。ドイツのアンゲラ・メルケル首相が所属する中道右派の欧州人民党(EPP)グループや、フランスのエマニュエル・マクロン大統領が支持する中道派など、欧州議会の主要会派すべてが賛成票を投じた。
欧州議会は、EU機関や加盟国に対し、香港、新疆ウイグル自治区、チベット、内モンゴル自治区などの人権状況について、中国政府が検証可能な改善を示さない限り、2022年北京冬季オリンピックへの政府代表団や外交官の招待を拒否するよう求めた。
これまでに各国政府が選手、関係者、観客の派遣を拒否したオリンピックは数回ある。旧ソ連のアフガニスタン侵攻に抗議し、米国が1980年モスクワ五輪のボイコットを呼びかけ、日本もこれに追随した。
しかし、専門家は、ボイコットが成功したかを判断するのは難しいと指摘する。2022年北京オリンピックの場合、ボイコットは中国との譲歩をさらに困難にする可能性があるため、参加国は中国の人権侵害への関心を高めるためにオリンピックを利用すべきだという声もある。
中国外務省は、いかなるボイコットに対しても「断固たる対応」をとると警告している。これには、国際フォーラムに関する二国間協議の中断や、スポーツイベントのスポンサー企業に対する経済的圧力などが含まれる可能性がある。
中国外務省の汪文斌報道官は声明で、「中国はスポーツの政治化や、人権問題を口実とした他国への内政干渉に断固として反対する」と強調した。
さらに「政治的な動機から、北京冬季オリンピックの準備と開催を妨害し、阻止し、破壊しようとする試みは、極めて無責任だ。各国のアスリートの利益と国際的なオリンピックの大義を害するだけである」と付け加えた。
人権と制裁
決議案には、香港の民主派新聞「蘋果日報(アップル・デイリー)」が中国当局によって廃刊に追い込まれ、スタッフが逮捕されたことを強く批判する内容も盛り込まれた。
さらに、これらの行為は、「香港の自由社会を解体し、報道の自由と表現の自由を抹消する中国政府のもう一つの措置だ」と非難した。
また、中国が施行した香港国家安全維持法の下で自由が奪われている状況は、「人権の緊急事態」に相当すると指摘した。
香港国家安全維持法は、欧州と中国の信頼関係を破壊し、「国際舞台における北京の信頼性のさらなる低下につながる」としている。
欧州議会は、「EUが緊急かつ断固たる行動を取る必要性」を強調し、ブリュッセルに対し、中国当局に対する新たな制裁措置を策定するよう求めた。
欧州議会で対中関係代表団の団長を務めるラインハルト・ビュティコファー議員(ドイツ緑の党)は、「多くのEU加盟国と欧州委員会が、香港における中国の抑圧的な措置に反対の声を上げたがらないのは明らかだ」と述べた。
同氏はさらに、欧州議会はこれらの問題に対するコンセンサスは非常に強固であるとし、「欧州の加盟国政府にも確固たる姿勢を取ってもらうために戦っていく」と付け加えた。
さらに今回の決議では、欧州議員や学者に対する中国の報復制裁が解除されるまで、投資協定の審議には応じない姿勢を再度明確にした。
この協定は、欧州企業が中国市場に参入しやすくするため、ドイツやフランスの強い後押しで合意していた。
EU欧州委員会のバルディス・ドムブロフスキス委員(通商担当)は5月、中国との投資協定の承認手続きは、双方が相互に報復制裁を発動したため、事実上「凍結」されたと発表した。
中国は、EUが人権侵害の疑いで中国当局者に制裁を科したことを受け、中国の報復措置は正当な対応だと主張している。
(翻訳・蓮夏)
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