北京五輪の「舞台裏」 ジェノサイド訴え投獄された女性画家と数百万人の良心の囚人

2022/01/27
更新: 2022/01/27

画家であり詩人でもある女性が、中国共産党の刑務所に入れられた。彼女の顔や名前は、世界中の多くの人にとって馴染みのないものだった。 彼女の名前は許那(シュ・ナ)。

世界は彼女の苦しみについてほとんど沈黙したままだ。中国共産党が彼女を監禁している刑務所やコンクリートの独房では、昨年、彼女のような良心の囚人5千人以上が逮捕・拷問され、100人以上が殺害された。

何百万人ものウイグル人、法輪功学習者、チベット人、人権活動家が中国の刑務所に収容されている。近い将来、何百万人ものキリスト教徒も投獄されるかもしれない。中国では、現在4400万人のキリスト教徒が危険にさらされている。

多くの良心の囚人と同じように、許さんは法輪功(ファルンゴン)学習者で、真、善、忍という価値観を実践している。これらの価値観は、ほとんどのオーソドックスな信仰に共通するものである。

しかし、これは中国では違法行為とされている。チベット仏教と同様に、法輪功も非合法化され、不当に中傷されてきた。世界中の政府や学者が、これをジェノサイド大量虐殺)の一形態として認識するようになった。

許さんは、自らの体験に基づき、自分が受けた迫害を「ジェノサイド」と呼んでいる。2001年に5年の刑を宣告された後、許さんは拷問を受け、強制労働を強いられた。

彼女は、「中国の刑務所ではなく、アウシュヴィッツに収監されていればよかった。ナチスのガス室ではすぐに死ねるが、中国の刑務所では死ぬより生きている方が怖いのだから」と詩で語っている。

許さんは「開脚」という拷問について、「被拷問者の脚を180度引き離し、警察官の指示のもと、3人の囚人が被拷問者の脚と背中に座り、強く何度も押さえつけた」と説明している。警察官は、「耐えられないほどの痛みを味わうが、骨は傷つかないので、これはすごいアイデアだ」と誇らしげに言い放ったという。

彼女に加えられた言語道断の残酷な行為は、彼女の身体だけでなく、拷問の手伝いを強いられた囚人の倫理や道徳をも引き裂いてしまう。今、許さんは刑務所で再びこのような拷問を受けているかもしれない。

「私の祖国は、この土地の山や川、そして数千年にわたる儒教、仏教、道教の伝統文化を表している。しかし、100年前、ヨーロッパの上空を漂っていた共産主義という幽霊が中国の地に侵入し、人々を利益至上主義に走らせたのだ」と彼女は書いている。

彼女の言う「幽霊」は、チベットや新疆から香港まで及び、その脅威は今や台湾にも差し迫っている。

この幽霊は、中国人民が自発的に受け入れたものではなく、毛沢東の銃や習近平の核兵器によって押し付けられたものである。

国中が「上から下まで利益ばかりを追求し、仁義礼智信といった五徳の精神はほとんど消えてしまった」「それ(中国共産党)は天と地と闘い、美しい国を消滅させた。今、青い川と緑の丘でさえ、金や銀を生み出すために搾り取られている」と許さんは書いている。

許さんは、自分の体験を雄弁に語ることのできる詩人である。しかし、1949年以来、中国で同様の迫害を受けてきた無数の人々は、ほとんど声を上げることができなかった。彼らは知られざる沈黙の中で苦しんでいる。世界は彼らの苦しみを無視してきた。

その代わり、北京でオリンピック「大会」を開催することになった。そこでは、通りの向こう側で、許さんが拷問を受けているかもしれない。おそらく、彼女の叫びは、試合を応援するファンの拍手喝采にかき消されるだろう。

「開脚」の拷問がもっと激しくなり、許さんの悲鳴はもっと大きくなるかもしれない。中国の山や川をのんびりと眺める彼女の姿は、もう二度と見られないかもしれない。

警察や一般市民たちも、実は拷問を受けている囚人である。彼らはこの社会システムの囚人であり、社会システムによって、あるいは自分自身のモラルの崩壊によって彼女を苦しめるように駆り立てられているのだ。

世界が許さんの叫びを無視すれば、それは中国共産党に加担することになる。 沈黙を保つ人は、囚人や警察と一緒になって、許さんたち、そして私たち自身や将来の世代に、不正と虐待を押し付けることになる。

執筆者プロフィール

アンダース・コアー(Anders Corr)は、2001年にイェール大学で政治学の修士号を、2008年にハーバード大学で政治学の博士号を取得した。彼は、政策情報分析会社であるCorr Analytics Inc.の代表であり、雑誌Journal of Political Riskの発行人でもある。著書に『The Concentration of Power(仮邦訳:権力の集中)』(2021年刊行予定)、『No Trespassing(立ち入り禁止)』などがある。

オリジナル記事:英文大紀元の「Xu Na and the Million Souls(A poet, imprisoned in China, speaks of genocide)」より

(翻訳編集・王君宜)

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。