ユバルディ市は米墨国境から約100キロ離れた場所にある小さな都市だ。しかし今年に入ってからは、密入国者をのせた自動車と警察車両のカーチェイスがもはや日常茶飯事となっている。
ピックアップトラックが木に衝突して炎上したり、逃走する乗用車が対向車に衝突し、乗っていた8人の不法入国者が死亡する事故も発生している。そして犯罪グループが逃走する際、警察車両に向けてAK-47アサルトライフルを乱射するという、映画さながらの事件も起きている。人的、物的資源が不足しがちな地元警察はこのような事態に手を焼いており、疲弊している。
アメリカ内陸部の大都市への玄関口であり、交通の要衝でもあるユバルディ市は、密入国者も好んで通る場所だ。米国の南部国境地帯では、内陸部の大都市を目指して密入国者する者が後を絶たない。国境警備隊によるパトロールをかいくぐり、密入国する人数は平均して1日あたり約1000人に上る。
そして、「小遣い稼ぎ」の誘惑のもと、多くの米国市民が不法入国者に交通手段を提供しているのも事実だ。
未曽有の事態に疲弊する警察
「密入国者とのカーチェイスは全く経験したことがないことだ」。このように語るのはユバルディ郡のルーベン・ノラスコ保安官。「そしてきりがない。毎日、朝から晩まで同じことの繰り返しだ。私の部下たちや州の警察はみな不満をため込んでおり、疲れ切っている」。
そして近頃の密入国者はいままでにないほど暴力的であり、警察などの法執行機関と戦うこともあるとノラスコ保安官は語った。そして彼の部下たちは密輸に使われる車両の中から、ほぼ毎回武器を発見する。「密入国仲介業者の中には、銃弾を百発込めることができるドラムマガジンを持っている者もいた」。
「不法移民の問題は最近始まったものではない。しかし、これほど状況が悪化することはいままでなかった。私たちはまるで玄関マットのようだ。彼らはここにやって来て私たちで泥を落とし、より大きな都市を求めて北上する。彼らがいったん大都市に溶け込むと、再び見つけ出すのは非常に難しくなる」。
テキサス州のグレッグ・アボット知事は今年3月、メキシコとの国境地域にさらに多くの州兵を配備した。ノラスコ氏は知事の仕事ぶりを評価しつつも、逮捕者の増加により刑務所がパンク寸前であるとこぼす。
「(密入国者で)刑務所がいっぱいになりつつある。これは問題だ」。
保安官の苦悩
ノラスコ保安官は、彼の部下が6週間のうちに同じ密入国仲介業者を3回逮捕したと嘆いた。
部下は50マイル(80キロメートル)に渡る高速カーチェイスの末、やっと密入国仲介業者を逮捕することができた。その者は米国の合法的なビザを持っていなかった。
「彼は逃走する際に同乗していた密入国者を下ろし、逃亡させた。私たちはついに彼に追いつき、国境警備隊に引き渡した。国境警備隊は彼の名前を確認すると、『ああ、彼は先週も逮捕されたが、釈放された』と言った」。
保安官によると、同じ仲介業者がその一週間後にまた、同じ場所で逮捕された。そして同じことが、その約1か月後に再び起きた。
ノラスコ保安官は部下たちと共に約4,000平方キロメートルの地域を担当している。保安官は、部下たちはほとんどの時間を、密入国仲介業者を逮捕する国境警備隊との協働に宛てていると述べた。
「貴重な時間と資金が連邦レベルの問題に費やされている。これらの資金と時間は、本来であれば町の地元の住民たちのために使われるべきだ」。
保安官は5か月間奮闘した末に、連邦政府に対する期待をなくしてしまった。
「世間一般では、南部国境はまったく問題が起きていないと認識しているようだ。もうこれ以上連邦政府にはなにも期待しない」。
いっぽう、ホワイトハウスは、ホンジュラスやグアテマラ、エルサルバドルといった中米諸国における不法移民の「根本的原因」に焦点を当てていると公表している。
(大紀元日本ウェブ編集部)
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