アフガニスタンとパキスタンの間には、「デュランド・ライン(Durand Line)」と呼ばれる細長い紛争地帯がある。8月、政府軍の抵抗もむなしくカブールが陥落すると、新しく政権を樹立したタリバンは隣国パキスタンとの領土問題を持ち出した。そして、アフガニスタン人は現在の国境を認めていないと発言した。
実は、タリバンの指導者の多くはパキスタンに拠点を構えていた。隣国を制圧してすぐ、「本国」ともめるのは一体どのような考えに基づく行動なのか。アフガニスタンとパキスタン両国の間に存在する一本の境界線について、専門家の見解を交えつつ、その歴史を紐解く。
2017年、国境検問所で発生した激しい衝突により13人が死亡、80人が負傷する事態となった。この出来事により、現在は追放されたアフガニスタン政府とパキスタン政府との間で深刻な対立が起きた。
パキスタンは、過激派がパキスタンの駐屯地に越境攻撃を繰り返した2017年に、ドゥランド・ラインに沿ってフェンスを設置し始めた。現在では、高さ約13フィートの二重のフェンスの設置は90%が完了しており、来年の夏には完成する見込みだが、これに対してタリバンは懸念を示している。
「アフガン人はフェンスの設置に反対だ。アフガンの新政権はこの問題に対する見解を示すだろう。フェンスは人々を切り離し、家族を分断している。我々は障壁を作らなくても済むように、国境に安全で平和な環境を作りたいのだ」と、タリバンの広報担当であるザビフラ・ムジャヒド氏(Zabihullah Mujahid)は、パキスタンのメディアである「Pashto TV」のインタビューに答えている。
インド外交官のドグラ氏は、タリバンの主体がパシュトゥーン人であることを忘れてはならないとし、「彼らは、出身民族を分断する人工的な境界線を受け入れないことを明らかにしている」と述べた。そして、デュランド・ラインはそもそもアフガニスタンと英領インドの国境などではなく、ただの「勢力範囲」のようなものだという。
「パシュトゥーン人は何世紀にもわたって、『ザン、ザー、ザミーン(女性、金、土地)』という名誉の掟を唯一の行動指針として生きてきたことも忘れてはならないだろう。ゆえに、40,000平方マイルもの土地の喪失は、彼らにとって物質的な痛手であると同時に、プライドの喪失である。タリバンはこの国家的な侮辱を消し去りたいのだ」とドグラ氏は指摘した。(つづく)
(文・Venus Upadhayaya/翻訳編集・田中広輝)
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